第88回 家族の疑問4:新型コロナ禍での家族の認知症介護。

2020年は、新型コロナで始まり、コロナで終わりそうです。

この感染症の流行により、私たちの生活は大きく変わりました。認知症の人をケアする家族や介護職にとっても、これまでと異なる対応を強いられている現状に、戸惑いを感じていると思います。

そこで、今回のコラムでは、コロナ禍での認知症の人の家族介護(ケア)について考えてみたいと思います。
この記事の執筆
今井幸充先生
医療法人社団翠会 和光病院院長 / 日本認知症ケア学会 元理事長
今井幸充先生
この記事の目次
  1. 感染予防
  2. コロナ禍での過ごし方
  3. ユッキー先生のアドバイス

感染予防

コロナ禍で、認知症の人のケアで重要なのは、言うまでもなく感染予防です。政府や感染症専門医は、流行の兆しが見えてから、新型コロナウイルスの感染予防対策として「3密を避ける」「マスク着用」「こまめな手洗い」などを推奨しています。これについては、ほとんどの人が周知している事ですが、今回のコラムでは、家族が認知症の人に講じる感染予防対策について考えてみました。

認知症の人は、以前から外出する機会は限られています。人が大勢集まるイベントの参加や居酒屋で大騒ぎするような状況は、認知症の人に考えにくいのが現実です。認知症の人がコロナに感染するきっかけの多くは、同居の家族や他者との濃厚接触です。家族自身が感染に注意を払うことは、認知症の人の最良の感染予防です。

認知症の人の密閉、密集、密接(3つの密)の機会は、主にデイサービスや通院中の医療機関です。今年の夏ごろまでデイサービスを中止していた施設が目立ちましたが、最近は感染に注意しながら再開しているところも多いようです。デイサービスに参加させたいがコロナが怖いと思う家族も少なくないと思いますが、認知症の人をStay homeさせることは、認知症進行のリスクを大きくするようです。

デイサービスで実施している感染予防は、参加前の体温測定と体調チェックです。参加者にはマスク着用をお願いし、スタッフ全員がマスクを着用して業務に当たります。家族が注意すべきことは、参加日の体温と体調チェックです。風邪症状や発熱がある場合は参加を見送り、マスクは必ず着用をさせ、参加させるようにしてください。これらの対策を各家庭で徹底すれば、デイサービスは安心なところです。帰宅時の手洗いも忘れないでください。

医療機関を受診する場合は、細心の注意が必要です。医療機関は、体調不良の方が受診しますので、コロナ感染者も当然診察することがあります。それゆえすべての医療機関では、受診者に発熱やコロナ感染の疑いがあると別室の待合室で診察を待つ処置を施し、室内の消毒、換気など、感染予防に徹しています。

受診が必要な状態なのに感染を恐れて受診を拒むことは、別の身体的リスクを抱えることになります。受診時には、マスクを必ず着用してください。待合室では他患と十分な距離を保ち、飲食は避けてください。入室、退室時には手を消毒することを忘れないでください。最近は、リモート受診をウエーブで実施している診療所もありますので、そのサービスを利用することも良いでしょう。

認知症の人の中には、マスク着用を嫌がり外してしまうことや、着用を拒否する人が多いことです。認知症の人にマスクを着用する理由を説明しても、すぐに外してしまいます。それは、マスクで息苦しさを感じること、喋りづらいこと、診察室でのマスク着用は失礼な行為と考える高齢者が多いからです。感染予防にマスクは必需品ですので、根気よくその着用をお願いしてください。

お願いの方法として、マスク着用が必要な場所で「ここでは、マスクをつけないといけないのですよ。周りは、皆さんマスクをしていますよ」と周囲の状況から着用が必要であることが分かるように説明してください。そして、マスクを外そうとした時には、間を置かずに「マスクを外さないでください」とお願いしてください。この声掛けを根気よく、何度も行ってください。

さらに、手洗いを頻回するようにしてください。今は、どこの公共施設でも、出入り口にアルコール消毒等の薬品が置かれています。施設の出入り時には、必ず手の消毒、手洗いをするように家族が気にかけてください。これも大切な感染予防です。

コロナ禍での過ごし方

新型コロナウイルス感染症が日本でも話題になってから約1年になります。特に高齢者や生活習慣病合併者の死亡率が高く、未だ予防ワクチンや治療薬が開発されていない現状では、日常での感染予防を主眼とした生活様式が求められます。

コロナ禍では、デイサービスの閉鎖、高齢者が参加する地域のイベントの開催中止、入院・入所施設の家族面会の禁止や自粛等により、認知症の人が社会と接する機会をことごとく制限してきました。それゆえ、多くの人に運動機能や認知機能の低下が見られ、また認知症の悪化等も話題になりました。

これらの状況を鑑みて、2020年10月14日に厚生労働省は、面会制限の緩和と屋外での運動や散歩などを不必要に制限すべきでないことを全国の高齢者施設に通達しました。このことは、3蜜の回避、マスク着用、手洗いを確実に実行していれば、高齢者が普段の生活を維持することも必要と厚労省が判断したからです。

そこで、これからのコロナ禍での認知症の人の過ごし方を考えてみます。いかなる状況でも、3蜜回避、マスク、手洗いを家族が十分に注意して実行しなければなりません。そのうえで、デイサービスの参加や散歩など、できるだけ以前の日常に戻すことも考えてください。無論、以前と同じ生活が戻るとは思いませんが、過度に行動を制限することによるリスクも大きいことを承知すべきです。

注意すべき点は、発熱者や体調不良者との接触です。これらの人を確認することはできないので、濃厚に接する人にマスク着用をお願いできれば安心です。人の少ない場所での散歩は、マスクを外しても問題ありませんが、スーパーへの買い物や人が集まる場所では、必ずマスクを着用するように認知症の人に声掛けしてください。

デイサービスで行われる認知症の人へのさまざまなプログラムの中には、高齢者同士が2m以上の間隔をとり、スタッフの指示でマスクを外すこともあります。その点は主催者側の判断に任せても良いと思います。他の参加者と顔を合わせる楽しみ、そして口元で感情を表現する時などは、マスクが邪魔と感じることもあります。

コロナ禍では、認知症の人も自粛生活に大きなストレスを感じています。今まで大声を出すことが無かった人が怒鳴り散らし、また一人で外出し警察に保護される騒ぎになった人もいます。このような行動心理症状BPSDの出現は、認知症の人のストレスの表現です。それを回避するためには、予防対策を十分に行った上で、社会との接触機会をできるだけ持つことです。これもコロナ禍での生活のありかたと思います。

ユッキー先生のアドバイス

インフルエンザ予防接種は、新型コロナウイルスの感染率を低下させ、その重症化や死亡率も低下させる、と報告した論文が2020年6月に発表されました。明確な根拠は定かではありませんが、新型コロナウイルス感染予防に多少とも効果があるようですので、是非ともインフルエンザ予防接種を受けてください。

認知症の人は、一般の人と違い、社会との接触がごく限られています。それゆえ感染機会も少ないのですが、一般の人と同じ感覚で感染予防に取り組むと、認知症の人はますます社会から孤立してしまう恐れがあります。身体機能や認知機能を維持するために、コロナ禍でも楽しめる日常が送れるように支援することは、家族の役目です。



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