第76回 一人暮らしの親が認知症~別居の子供がする事は
- 2020年の内閣府統計によると、65歳以上の一人暮らし高齢者は約668万人と推計されています。現在、65歳以上の約15%が認知症と言われていますので、単純に計算すると約100万人の独居認知症高齢者が存在することになりますが、実数はわかりません。
老いた一人暮らしの親が認知症と分かった時、その子はいったどのように対応すればよいのでしょうか、考えてみました。
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誰がキーパーソンになるのか
一人暮らしの認知症の親に子が複数人いる場合は、その中でキーパーソンになる人を決めてください。その子供は、今後の親を世話する要になる人です。他の子らの中にも親の世話に関していろいろな意見を持っている人がいると思いますが、それらの意見を取りまとめて世話の方針を決めるのがキーパーソンです。
他の子供たちは、自分のできることをキーパーソンに申し出て、世話を分担します。できるだけ多くの人が関わることで、子供たちの負担が軽減されますが、キーパーソンは、兄弟姉妹がチームワーク良く親の世話ができるように上手く指揮することが求められます。
一人暮らしが限界の時
認知症のごく初期は、家族の見守りや適切な指示だけで、日々の生活を営むことが可能ですが、やがて進行すると一人暮らしが難しくなります。それゆえに、認知症と診断された早い時期に介護保険の要介護認定を申請してください。同時に地域の介護サービスの内容を熟知することも重要です。
認知症が進行すると、24時間の見守りが必要になり、在宅介護サービスの活用だけでは一人暮らしに限界が訪れます。その時にどう対処するかを当初から他の家族と相談しながら考えておく必要があります。選択としては、子の誰かと同居か、施設入所のいずれかです。
同居して世話するという選択は、認知症の人にとって、また周囲の人にとっても望まれる環境かもしれません。しかし、安易に同居を決めたことで、将来大きな負担が伸し掛かり、認知症の人や他の家族との間に気まずい関係が生じることあります。施設入所を決断した際には、適切な施設の選択に悩み、また金銭面での問題を抱えます。いずれにしても、この時期は必ず来ますので、キーパーソンを中心に、本人も含めて、兄弟姉妹で話し合っておくことは必須です。
ケアをシェアする
別居していた親が認知症と分かった時、その子供は世話することを考えます。「子が親の世話をするのは当然」と世間で言われていても、正直なところ、それを実際に行うには抵抗がありますし、現実は大変です。そこで、そのような問題が子に降りかかってきた時に、是非以下のことを念頭に、認知症の親の世話を考えみてください。
1.何もかも一人でしようとしない
2.自分ができること、できないことを整理する
3.世話・介護をシェアする
4.世話の限界を決めておく
5.自分の生活も大切にする
大変な認知症の世話を、何もかも一人でしようとしても無理です。「自分がしなければ」と思うだけでも負担を感じ、また現実の大変さにつぶされそうになります。まずは、今の認知症の親の状況から、自分ができることとできないことを見定め、できないことは周囲の家族と協働するか、介護保険サービスを利用してプロの介護者に依頼することです。すなわち、介護をシェアするいう考え方を推し進めてください(第64回コラム参照)。
自宅で介護する限界を予め決めておくことは、今後も良好な親子関係を保つのに必要です。介護に限界を感じているのに義務感だけで続けても、やがてお互いに陰性感情が生じ、気まずくなり、最終的には世話することも放棄したくなります。こうなることは、両者にとって大変不幸なことです。
介護の限界の理由は、個々により異なります。また、その限界は介護の途中にも変わりますので、時々限界のことを考えながら介護を続けてください。ここでは、「介護」と「世話」の意味を分けて使っています(第62回コラム参照)。介護は、トイレ、着替え、入浴といった具体的な身の回りの生活行為の援助であり、世話は介護行為も含まれますが、さまざまな生活の営みを支援することを意味します。
一人暮らしの親の在宅生活に限界を感じた時に、施設入所を考えます。しかし、入所のイメージが悪く、その判断に躊躇することも多いようです。そこで、介護をシェアすることを考えてください。家族ができないこと、やらなくてよい日常の介護は、施設のプロに任せ、子供たちは、介護以外の世話に今まで以上に尽力し、親との良好な関係を保ち続ける努力をしてください。これも大切な親の世話です。
理解して欲しいことは、愛情が深いから介護する、という事ではありません。愛情が深くても、介護ができない人は沢山います。そして、親の世話と同時に自身や家族の世話も忘れないでください。親の世話のために、自身の生活が壊れてしまうようでは、それも大変不幸なことです。親の世話も大切ですが、自身の生活も大切にしてください(第45回コラム参照)。
ユッキー先生のアドバイス
最近は、子供たちとの同居よりも、夫婦二人で、あるいは一人で生活することを好む高齢者が多いようです。でも「認知症になったら子が世話すべき」と考えいる人もいますが、それは子にとって大変負担な事です。
今回のコラムでは、子供の立場から認知症の親の世話について考えてみました。独居の高齢者も自身が認知症になったら、その先どう生きて行くのか、今のうちに考えてください。中には、「認知症になったら死ぬからいい」と自棄っぱちに言う人もいますが、残された子供たちにとっては大変無責任な言葉で、「迷惑」とも感じているかもしれません。
自分が認知症になったら、何処で誰に介護をお願いし生活していくのか、今のうちに考えてください。そして、その思いを子供たちに伝え、自分の人生の終末についてじっくり話し合ってみてください。
(お詫び)
この度は、私事でコラムの配信が大変遅れましたことを深くお詫び申し上げます。今後もできるだけ多くの配信に心がけます。また、これまでのコラムは、長文が多く、気楽に読めない、とのご意見もいただきました。できるだけ簡潔に内容をまとめたいと思っております。
ご意見やご希望がございましたら、是非ともサイトへお問い合わせ 頂けると幸いです。
(2019年10月23日)
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