第83回 知っていると便利、介護保険サービス:定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 介護保険サービスがスタートして20年経過しました。今や医療福祉分野では、このサービスなしに充分な支援が受けられません。特に認知症の人が自宅で安心して暮らし続けるために、また同居家族の負担軽減のために、このサービスが有効に利用されることが必須です。
介護保険サービスはさまざまありますが、ここでは、地域密着型サービスの定期巡回・随時対応型訪問介護看護についてご紹介します。
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定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、2012年4月から介護保険サービスとして新たに開始されました。このサービスは、要介護が1以上の利用者が利用でき、自宅滞在時間は短時間の訪問の場合が多いです。また早朝、夜間を問わず24時間365日、1日何度もサービスを受けることができます。
サービス内容は、文字どおりの定期巡回サービスと必要に応じて随時訪問してサービスを提供する随時対応サービスがあります。また、このサービスの特徴は1日のうちに数回訪問サービスを受けられることと、利用者の体調管理のための医療にかかわる訪問看護も必要に応じて同時に利用できることです。
定期巡回サービスでは、利用者宅を訪問して、排泄、食事、着替えや安否確認などのサービスが受けられます。例えば、一人暮らしの高齢者で、ゴミ出しやポータブルトイレの清掃、洗濯、掃除、食事の世話、後片づけなど、短時間で行える日常の生活支援を利用者の生活時間に合わせて訪問して行うサービスです。また、夜間や早朝なども利用者の必要に応じて訪問してくれますので、例えば、食後や就寝前の服薬には、服薬時間に合わせて訪問を依頼し、服薬介助をお願いできます。
随時対応サービスは、利用者やその家族から24時間通報を受け、状況に応じて、訪問介護員や看護師が訪問しケアを行います。例えば、夜間に利用者の別居している家族から「本人の状態がおかしいので確認してほしい」との連絡があると、オペレーターの指示で、訪問介護員や看護師が訪問し、状況を確認します。もちろん本人からの通報であってもすぐに対応します。
訪問介護との違い
居宅サービスでよく利用されているのは、訪問介護です。このサービスは介護保険制度が始まる以前から実施され、その費用は国費から補助されていました。2000年からは介護保険サービス事業として提供されるようになり、費用も介護保険料から支払われています。
訪問介護には、身体介護と生活援助があります。身体介護は、食事、着替え、入浴、排泄介助など、直接利用者の身体に触れて援助します。生活援助は、調理、掃除、洗濯、買い物や衣服の整理など、本人の日常生活を援助します。
訪問介護も要介護1以上の認定を受けた人に提供されますが、定期巡回・随時対応型訪問介護看護との違いは、前者が決められたケアプランの中から、予めサービスの内容と時間を決めて依頼します。後者は、定期巡回等計画書に基づき、1日の内で短時間の訪問が何度も可能で、利用者の生活時間に合わせたサービスを提供します。
例えば、訪問介護では、入浴介助や着替えなど「身体介助40分」と依頼するのに対して、定期巡回サービスでは、起床時の着替え、トイレ誘導、洗顔、歯磨き等の援助、その後再訪問し朝食の援助、また昼食時に訪問する、といったように、利用者の生活時間に合わせたサービスが受けられます。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、緊急事態に応じて早朝、夜間を問わず訪問介護員や看護師が対応してくれます。訪問介護でも一応対応しますが、実態としては、それができる事業所はごく少なく、利用者の救急要件に対応できないと言っても良いでしょう。もし、利用できた場合でも利用料が割高になります。
両者のサービス内容はほぼ同じですが、大きな違いは定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、訪問介護に加えて訪問看護も利用できますが、費用が定額制ですので、1か月のサービス時間が短いと割高感があります。
両者のサービスを同時に利用することはできません。これらのサービス利用には、それぞれメリットとデメリットがありますので、ケアマネジャーと十分相談し、費用負担も考慮し、どちらかに決めることが必要です。
私の苦言
この度のコラムは「知って得する介護保険サービス」というテーマで、定期巡回・随時対応型訪問介護看護をご紹介しました。しかし、その他にも、訪問看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護、介護予防小規模多機能型居宅介護といった多岐にわたるサービスがあり、利用者にとっては、混乱を招きやすく、使いづらいサービスともいえます。
一人暮らしの高齢者が住み慣れた地域で安心して生活を続けるには、訪問サービスの利用をお勧めします。しかし、どのサービスが自分に有効で、どのように利用したらよいのか、利用者自身で決めるのは難しいと言わざるを得ません。
その理由は、利用方法が複雑なことです。例えば、訪問介護では、同居する家族がいると生活援助サービスの利用が制限されてしまいます。また同じサービス受けるにしても、事業所が請け負っている事業内容により利用方法が異なり、利用者の希望の時間に訪問できるとも限りません。事業者主体で、訪問時間やサービス時間が決められてしまう事が間々あるようです。
さらに早朝や夜間に対応するサービスでは、訪問介護員の確保の問題や、夜間対応型訪問介護事業所がごく少ないことなどから、自由に利用できない現実があります。通い、訪問、お泊りのサービスが利用できる小規模多機能型居宅介護は、一箇所で大方のサービスが利用でき、便利なのですが、地域によりその事業所が少ないのも現状です。
また、訪問介護と定期巡回・随時対応型訪問介護看護は同時利用ができませんので、サービスを変更する場合は、他の事業所に依頼する必要があります。その為、慣れている訪問介護員も変わりますので、継続的なケアが期待できないことがあります。
毎日の診療の中で感じることは、ケアマネジャーが利用者やその家族にサービス内容を十分説明し、理解した上でケアプランを作成しているのか、疑問に思うことがあります。特に、居宅サービスの利用を勧めた際に、ケアマネジャーが所属する事業所が提供できるサービスのみを紹介している話を聞くと、ケアマネジャーの役割とはなにか、疑問に思ってしまいます。
私が今回のコラムを執筆する際に、さまざまな訪問サービスについて、厚生労働省のホームページや関連団体、事業所のホームページを調べました。サービス内容は多岐にわたり、細かく規定され、複雑で、ケアマネジャーが利用者やその家族にその内容を説明しても、利用者が納得の上でサービスを使うのは難しいのではないか、と思いました。もう少し、利用者にとって使い勝手の良いように、介護保険サービスを構築すべきではないでしょうか。
ユッキー先生のアドバイス
高齢者の中には、介護保険サービスが国費で賄われ、近寄り難いもの、と思い込んでいる方がいます。それゆえに「国に迷惑をかけたくない」とサービスの利用を控える方や「サービス内容には文句を言ってはいけない」と思っている方も存在し、その方々は、誰のための、何のサービスかを当然理解していないようです。
居宅サービスは、もっと利用されてもよい介護保険サービスです。それには、サービス内容や使い勝手をもう少し簡便にし、利用者の日々の生活の中でもっと身近なサービスとして展開して欲しいと切実に感じました。
(2020年5月29日)
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