ユッキー先生の認知症コラム

認知症専門医として、大学院教授として、認知症とどう向き合うか、ユッキー先生が語ります。
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第10回 『もの忘れ外来』の専門医はどのような先生?

もの忘れ外来では、アルツハイマー型認知症などの認知症を主な症状とする疾患の診断とその治療を行っています。このコラムでも認知症を来す病気の診断方法と治療についてご紹介しましょう。まずはもの忘れ外来でどのような医師が診療に当たっているのかこの回で紹介し、次回から数回にわたりもの忘れ外来の診療内容についてご紹介しましょう。

もの忘れ外来について

もの忘れ外来は、認知症の症状が明かな人だけを診察する外来ではありません。もの忘れを主な訴え(主訴と言います)とする人なら誰もが対象となり、また、もの忘れに関連するさまざまな病気や症状についても診察します。ここでは、もの忘れ外来を開設・診療している医師についてご紹介しましょう。

もの忘れ外来で診療している医師の多くは、老年精神医学を専門としている精神科医です。それゆえ、精神科を標榜している診療所や病院であればどの医師も認知症を専門としているとは限りません。一般精神疾患や小児精神医学、ノイローゼと言われる神経症を専門とする精神科医の場合には、認知症に対して積極的な診療を行わないこともあります。

一方で、神経内科、心療内科、脳神経(外)科を専門としている医師の中に認知症を専門とする医師もいます。また一般内科を標榜している診療所や病院の中には、もの忘れ外来を開設していなくても認知症の診療を行っている施設もあります。特に最近では、かかりつけ医と言われている地域の診療所医師の中に、認知症の診療に積極的な医師も多くなりました。

診療方法は概ね共通していますが、専門とする領域や外来の環境によってその手技は多少異なりますので、ここでは私なりの考えを述べてみます。

地域の健康を見守る – かかりつけ医 –

かかりつけ医として以前から健康を見守っている地域の診療所医師の多くは、内科を標榜していますが、このかかりつけ医のアドバイスや相談が認知症の診療のきっかけになった家族も多いようです。多くの医師は、その専門診療科が消化器や循環器などですが、最近では、地域医師会が認知症診療の専門医である「認知症サポーター医」の養成に力を入れ、これらサポーター医が地域の診療所医師を対象に「かかりつけ医認知症対応力向上研修」を実施し、地域の認知症診療の質向上に務めています。

かかりつけ医は、介護保険の主治医意見書を提出する関係上、認知症医療に関心を持っています。たとえその医師が認知症医療を専門としてない場合でも、また最新の医療機器を整備していなくても、近くの認知症医療疾患センターと連携して、正しい診断と専門治療を提供することができるようになりました。この疾患センターは、かかりつけ医と地域の包括支援センターや在宅介護サービスと連携しながら、認知症になっても住み慣れた地域で、在宅で、末永く暮し続けることができるように支援しています。

かかりつけ医受診のメリットは、本人の健康状態や生活環境を以前からよく知っていることから、本人の生活上の変化にいち早く気づき、認知症の発見に貢献できます。また高血圧や糖尿病などの生活習慣病を合併症していても、その対応を同時にお願いできるのもかかりつけ医です。「もの忘れがひどくなった」「認知症が心配」「認知症かも」と認知症が気になったら地域のかかりつけ医にできるだけ早いうちに相談しましょう。

本来の病気をきちんと区別する – 精神科医 –

精神科医で認知症を専門としている医師の多くは、老年精神医学を専門とする医師です。これらの精神科医は、もの忘れ外来で、もの忘れの訴えが認知症のもの忘れなのか、それとも認知症の症状を持つ他の老年期の心の病気なのかを鑑別(区別)するために注意深く診察します。例えばうつ病や老年期特有の神経症あるいは若い頃から精神障害を患っていた人、大量飲酒、睡眠導入剤、抗不安薬、鎮痛剤などの脳に影響を与える薬物の服用が習慣となっている薬物依存の高齢者などは、認知症の症状を伴います。それゆえ、その原因となる本来の病気をきちんと鑑別し、その元になっている病気の専門治療を施すのが精神科医です。ですから、これまでの本人とことなる異常の精神状態が観察されたら、もの忘れ外来の精神科医を訪ねるのもその解決に役立ちます。

認知症を専門とする精神科医は、無論、認知症を来す疾患の診断や治療を積極的に行いますが、中でも認知症の人によく見られる、興奮、イライラ、攻撃、動き回り、大声で怒鳴るなどの激しい怒りの反応、夜間の不眠、日中の理解に苦しむ行動、徘徊、その他の困った行動、あるいはもの盗られ妄想、幻視症状、不安、うつ状態、強迫症状などの精神症状の薬物療法も専門としています。それ故、在宅でこのような症状がみられた場合は、もの忘れ外来の精神科医の受診を奨めます。

さらに、介護者が精神負担を感じ、時に倦怠感、食欲不振、胃痛や下痢などの胃腸症状などの身体症状出現時に、介護者が気楽に相談できるのが担当の精神科医です。

認知症治療に係るその他の専門科医

認知症診療に係わるその他の専門医は、神経内科医と脳神経外科医です。神経の病気で最も頻度が高いのは、脳梗塞、脳出血などの脳卒中で、これらは脳血管性認知症の発症に関連します。これらの原因として、高血圧、糖尿病、高脂血症、心臓疾患などが挙げられますので、生活習慣病の管理も神経内科医にとっても重要な仕事です。一般に神経内科では、脳の血液の流れの異常(脳循環障害)による脳出血や脳梗塞の再発予防、パーキンソン病、小脳疾患、脊髄疾患など神経の病気を得意とします。

脳神経外科では、脳梗塞、脳出血、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍などの脳の病気の中には、外科的な対応が必要な場合があります。その時に脳神経外科医がこの治療に係わりますが、これらの医師の中には、特に手術が必要でないアルツハイマー型認知症や、その他の脳の神経細胞が変性して起こる、レビュー小体型認知症や前頭側頭型認知症の診断や治療に係わります。

病院、医師の選び方

多くの家族は、認知症の初期にみられる物忘れを「歳だから」とあまり深刻に受け止めないことが多いようです。日常生活で物忘れによる失敗が重なり、異常な行動や心理症状がみられると、はじめて本人の異常に気づき専門家の受診を決意する家族も多いようです。

物忘れに気づき、専門医を受診する際に、どこの病院あるいは診療所の、どの診療科を受診したらよいのか迷うことがあります。そのような時には、まず日頃かかりつけている医師(かかりつけ医)に相談してみてください。多くの開業医は、近辺の専門医に関する情報を持っています。また大学病院や全国約150カ所の病院に設置されている認知症医療疾患センターを受診する場合は、かかりつけ医の紹介状を必要とします。かかりつけ医がいない場合は、地域包括支援センターや介護保険課等を訪ねると病院や専門医の情報を得ることができます。最近では地元医師会が、サポーター医の紹介や、認知症を診療してくれる診療所のリストを公開しているところも多くなりました。

また、「認知症介護マップ」と称して、地域の診療所や病院、包括支援センター、在宅介護事業所の所在地を地図上にまとめたポスターを発行している自治体もありますので、保健所等を訪問した際に確認しておくのもよいでしょう。

認知症の診断にはCTやMRI(共磁気共鳴画像法)の検査が必要ですので、これらの設備を有する施設の専門医を受診することを奨めます。しかし、多くの診療所ではこのような画像診断ができませんが、必ずしもこれらの検査が可能な病院に拘る必要はありません。それぞれの診療所は、施設の整った病院と連携(病院・診療所連携)し、複雑な検査を患者さんに負担をかけない方法で実施しています。その制度を利用すると、かかりつけ医を変えずに、診療を続けることができます。

【ユッキー先生のアドバイス】

最近のインターネットの普及に伴い様々な情報が得られますが、認知症医療の専門家の検索も難しいことではありません。下記のアドレスにアクセスして、地元の専門医を尋ねてください。

○ 日本老年精神医学会:高齢者の心の病気と認知症に関する専門医
http://184.73.219.23/rounen/a_sennmonni/r-A.htm

○ 日本老年精神医学会:高齢者のこころと認知症を診断できる病院と施設
http://184.73.219.23/rounen/H_sisetsu/r-H.htm

○ アルツハイマー病研究会会員認知症診療施設一覧
http://jaad.net/list_map.html

○ 日本認知症学会専門医施設一覧
http://dementia.umin.jp/kyoiku2012.pdf


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