認知症は治療できる?治療法から家族のケアまで
このページでは認知症の治療について説明しています。中心となる薬物療法と非薬物療法のほか、重要な役割を果たすのが家族のケアです。具体的にどのような治療が行われているのか、その3つについて説明します。
治療で進行を抑制
認知症の治療は、薬物療法と、リハビリテーションなどの非薬物療法が主体です。
いくつかの稀な場合※を除き、認知症を完全に治す治療法はまだありません。しかし、病状の進行を遅らせることはできるのです。そのため治療は、残された機能を維持しながら、不安、妄想、不眠など、日常生活の支障となる症状を軽減・改善することが目的となります。
症状を抑え、進行を遅らせることで、本人が穏やかに生活できるとともに、介護者の負担軽減にもつながります。
※脳腫瘍・慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症・脳血管障害等の外科的治療の対象となる疾患。他にも脳症や、薬の副作用によるせん妄状態など治療可能な状態もあります。
「治療で改善できる認知症・iNPH」張 家正先生インタビュー
薬物療法
認知症治療で中心的な役割を果たすのが薬物療法です。認知症の進行を抑えたり、脳の機能低下を遅らせる効果が期待できます。
薬物療法は、大きく分けて以下ふたつとなります。
①認知症の原因疾患に対する治療
②認知症によるさまざまな症状に対する治療
原因疾患に対する治療
認知症の中核症状に対しては、抗認知症薬による治療を行います。
現在日本で使用されている認知症の薬は4種あり、大きくふたつに分類されます。 神経伝達物質の減少を抑え、スムーズな情報伝達を助ける「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」と、カルシウムイオンが脳神経細胞に過剰に流入するのを防ぎ、情報伝達を整える「NMDA受容体拮抗薬」です。
アリセプト(ドネペジル塩酸塩)、レミニール(ガランタミン臭化水素塩酸)、リバスタッチパッチ/イクセロンパッチ(バスチグミン)は「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」に分類されます。
「NMDA受容体拮抗薬」のメマリー(メマンチン塩酸塩)は、上記の3剤とは異なる働きを持ち、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬と併用して治療を行うこともあります。
この4種は主にアルツハイマー型認知症に処方されますが、アリセプトに代表されるドネペジル塩酸塩については、レビー小体型認知症の治療にも使用されています。
認知症薬アリセプト(ドネペジル)の詳細はこちら 認知症薬メマリー(メマンチン)の詳細はこちら レミニール(ガランタミン)の詳細はこちら リバスタッチパッチ・イクセロンパッチの詳細はこちら認知症によるさまざまな症状に対する治療
行動・心理症状(BPSD)を改善するために、薬による治療を行います。
抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、睡眠薬などの向精神薬のほか、漢方製剤が使われることもあります。
不安や幻覚・妄想、せん妄、徘徊については、抗精神病薬や、双極性障害治療薬。興奮には抗精神病薬のほか、抑肝酸という漢方製剤が処方されることがあります。また、うつ状態や性的逸脱行為などにはSSRI、SNRIなどの抗うつ薬、睡眠障害には睡眠薬などが使用されます。
いずれも副作用の症状に気をつけながら、医師・薬剤師のアドバイスに従って正しく服用することが大切です。
非薬物療法
非薬物的療法とは、薬物を用いない治療的なアプローチのこと。脳を活性化し、できるだけ長く残存機能を維持したり、生活能力を高める目的で行います。本人の症状や気持ちに合わせて、無理のない範囲で行います。
非薬物療法はさまざまあり、以下のようなものが挙げられます。
・運動や作業を通して「本人らしい生活」が送れるよう支援する理学療法・作業療法などのリハビリテーション
・簡単な計算や音読、字を書き写すなどを行う認知リハビリテーション
・見当識への刺激を与えることで、認知機能の低下を防ぐリアリティ・オリエンテーション
・過去の思い出を語ることで、記憶を刺激して感情の安定を図る回想法
・脳に刺激を与えたり、自発性の改善を図る音楽療法、芸術療法、園芸療法など
・動物とのふれあいを通じて感情の安定をめざすアニマルセラピー
家族の適切な対応
治療と並ぶほど重要な役割を果たしているのが、毎日の生活における家族の対応です。 適切なケアによって、周辺症状などが回避できる場合もあります。
認知症の家族と日々過ごしていると、思うようにいかず、つい声を荒げてしまうこともあるでしょう。しかし、「つい」とってしまった行動によって、本人の気持ちも不安定になり、症状が悪化したり新たな症状を引き起こすこともあるのです。そうならないためにも、家族の心のゆとりが大切です。
重要なのは、完璧な介護よりも穏やかな人間関係。家族の方が、まず認知症という病気をしっかりと理解し、本人との信頼関係を築くこと第一に考えましょう。
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