楽しみながら症状緩和!認知症における音楽療法の効果とは【第35回日本認知症学会学術集会】

2017年3月27日

認知症の非薬物療法のひとつに「音楽療法」があります。音楽療法とは具体的にどのようなものなのでしょう。第35回日本認知症学会での三重大学認知症医療学講座・佐藤正之先生の講演をもとに、音楽療法の効果やメリットを解説します。

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この記事の目次
  1. 認知症における音楽療法
  2. 音楽療法のメリットとは
  3. 研究結果から見る音楽療法の効果
  4. 音楽療法は認知症の進行予防・周辺症状緩和に効果が期待される

認知症における音楽療法

患者数が年々増加している認知症ですが、現在のところ認知症を確実に治す治療法は確立されていません。しかし、現在行われている治療で症状の緩和や進行を遅らせることは可能です。第一選択となるのは「薬物療法」ですが、「非薬物療法」も認知症の治療において重要とされています

非薬物療法とは、薬を使わずに脳を活性化させたり情緒の安定を図ったりして症状緩和や進行の遅延を目指す治療法。現時点で、認知症の予防効果が確立しているのは、運動療法なかでも有酸素運動だけです。音楽療法も非薬物療法のひとつです。曲を聴く、歌を歌うなど音楽に触れることで脳が刺激され、認知症によい効果が期待できると考えられています。

音楽療法のメリットとは

佐藤正之先生は、音楽療法のメリットとしてまず気軽に始められることを挙げています。

薬を使わない非薬物療法には、ウォーキングなどの有酸素運動を行う「運動療法」や絵画や工作を行う「芸術療法」、患者の思い出話や懐かしい映画などで刺激を与える「回想法」などさまざまなものがあります。しかし、運動や絵画、工作などは、始める前に身構えてしまう方や、単純に「やりたくない」と言う方もいるでしょう。

音楽を聴いたり歌ったりといったごく身近な内容の音楽療法は、当事者に訓練と意識させずに行うことも可能です。家庭内でも手軽に取り組め、経済的な負担もほとんどありません。

さらに、音楽療法では患者が懐かしいと感じる時代の曲を取り入れることが多いです。また、歌を歌う際には自然と有酸素運動を行っています。つまり、音楽療法は運動療法や回想法も兼ね備えており、多方面からの効果が期待できると考えられるのです。

有酸素運動で認知症予防

研究結果から見る音楽療法の効果

また、佐藤先生は、御浜町・紀宝町・ヤマハ音楽振興会の四者共同で、音楽療法が認知機能に与える効果を研究し、医学国際誌に発表しています。

「研究は、健常な高齢者を三つのグループに分け、一つ目のグループには音楽の伴奏をつけた運動(音楽体操)、二つ目には音楽伴奏なしの運動を週1回1時間のペースで1年間行ってもらい、三つ目のグループは特別な介入は行いませんでした (コントロール)。介入期間の前後での脳の検査結果を比較しました。その結果、音楽体操を行ったグループに、視空間認知(空間を見てそれがどのような状態かを知ったり判断したりする機能)と知能の検査で明らかな改善が見られたといいます。

また、当事者と専門職の間の障壁を打破するためにも適切な情報共有が必要と訴えます。 「当事者視点を重視することは大事ですが、専門職主体の介入も必要です。でも専門職主体の介入にしてしまうと、当事者視点が消されてしまいます。そのあたりも考慮し、最終的に考えたのは、当事者と専門職との情報相互俯瞰、同じ情報を持つということです」

もともと運動は認知症によいとされていましたが、この研究により音楽をプラスした運動にはさらに高い効果が期待できることがわかりました。

さらに、軽度から中等度の認知症患者に対する音楽体操の効果も調査しています。こちらでも同じく視空間認知機能の改善が見られるとともに、ADL(日常的に生活の中で行う行動、食事、入浴、排せつなど)もよい状態を維持できていることがわかっています。

音楽療法は認知症の進行予防・周辺症状緩和に効果が期待される

認知機能改善に役立ち、進行予防に効果が期待できる音楽療法ですが、認知症の周辺症状(BPSD)の緩和の効果は、エビデンスとしてほぼ確立しています。周辺症状とは、認知機能の低下に伴って起こる暴言せん妄不眠といった症状で、認知症の方の心理状態にも影響を受けます。音楽は感情を安定させ心理的にもよい影響をもたらすため、周辺症状の緩和につながると期待されています。

周辺症状は介護する側にとっても大きな悩みであることが多いもの。それだけでなく、当事者本人も不安を感じています。

楽しみながらでき、取り入れやすい音楽療法に、進行予防と症状緩和の両面から期待が高まります。

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