アリセプト(ドネペジル)とは

この記事の監修
高橋秀行先生
鶴川サナトリウム病院 精神科・もの忘れ外来
高橋秀行先生
この記事の目次
  1. アリセプト(ドネペジル)とは
  2. アリセプトの種類・剤型
  3. 用法・用量
  4. アリセプトの効果・作用機序
  5. 認知症に対してどのように効くのか
  6. アリセプトの薬価
  7. アリセプトの注意・副作用について
  8. 副作用、消化器症状
  9. 精神症状
  10. 徐脈・不整脈
  11. パーキンソニズム
  12. アリセプトの特長
  13. ジェネリックについて

アリセプト(ドネペジル)とは

アリセプト(ドネペジル)はアルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症の症状進行を抑制する薬であり、エーザイ株式会社より開発され「アリセプト」の製品名で販売されています。認知症治療薬の中でも古くから使用されており、国内外とも大きなシェアを占めています。

アリセプトの種類・剤型

(1)口腔内崩壊錠(OD錠):少量の水分で溶けるように設計された薬です。口の中に入れると唾液で瞬時に溶けるため、水なしで飲むことができます。飲み込む力の弱い方に便利です。通常の錠剤と同様に水と一緒に飲むこともできます。最もよく処方されています。

(2)ゼリー剤:カップに入った一口サイズのゼリー状の製剤です。水でもムセてしまうためトロミを付けているなど、飲み込む力が弱い人に適しています。3mg、5mg、10mgの3種類がありますが、用量が変わってもゼリーのサイズは同一です。服用しやすいようにはちみつレモンの風味が付けられています。

(3)ドライシロップ:粉末を水に溶かして液体として飲むことができます。粉末のまま飲むこともできます。
上記のような、錠剤の薬を沢山飲んでいる方や、拒薬の方に負担が少ないと言われています。他に錠剤や顆粒もありますが、使われる機会は少なくなってきています。

用法・用量

アルツハイマー型認知症

1日1回3mgから開始し、副作用の有無を観察した上で、通常は1~2週間後に1日1回5mgに増量し継続します。高度のアルツハイマー型認知症では5mgを4週間以上継続した後に、1日10mgに増量することができます。

開始用量の3mgから開始するのは副作用の出現の有無を見極めるためと、薬を内服することで起きる神経伝達物質の変化に身体を慣れさせるためです。

いずれも1日1回内服します。食後であるか空腹であるかは吸収に影響しないため食事のタイミングに縛られず飲むことができますが、他の薬とタイミングを合わせて朝食後に処方されることが多いです。

また後述するように脳の活性化を促す薬であるため、昼夜のリズムを作っていく目的で朝に処方されることも多いですが、薬が体に留まる時間(半減期)が長いため飲む時間による血中濃度への影響は少ないです。主治医と相談の上、ご本人や介助者のライフスタイルを考慮し飲む時間を決めましょう。

アルツハイマー型認知症についてはこちら

レビー小体型認知症

1999年に発売された当初はアルツハイマー型認知症のみが適応でしたが、臨床試験の結果レビー小体型認知症に有効であることが確認され、2014年よりレビー小体型認知症への適応が拡大されました。

1日1回3mgから開始し、副作用の有無を観察した上で、1~2週間後に1日1回5mgに増量し継続します。5mgを4週間以上継続した後に、1日10mgに増量します。ただし症状によって1日5mgに減量することができます。

レビー小体型認知症についてはこちら

アリセプトの効果・作用機序

認知症に対してどのように効くのか

私たちの脳は神経伝達物質を介して記憶・学習を行なっているのですが、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では神経伝達物質の1つであるアセチルコリンが脳内において減少していることが知られています。

脳内にはアセチルコリンを分解する役割を持つ酵素であるアセチルコリンエステラーゼがあり、アリセプトはこのアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、脳内でのアセチルコリンの濃度を高め神経伝達を助けます。


アリセプトの薬価

それぞれの剤型・用量ごとの薬価について

※2016年4月薬価改定

                       
錠剤 細粒 ゼリー剤 ドライシロップ OD錠
10mg ¥537.4 ¥573.2¥552.0¥562.1¥537.4
5mg ¥300.6 ¥286.6 ¥306.7 ¥281.05 ¥300.6
3mg ¥203.5 ¥172.0 ¥200.2 ¥168.63 ¥203.5

1か月あたりの具体的な薬価例(例:口腔内崩壊錠の場合 )
※1割負担を想定しています

・1日3mgを継続投与されている方の場合
203.5円(5mg錠1錠あたり) X 1日1回 X 30日 X 1割負担 = 610円/月

・1日10mgを継続投与されている方の場合
537.4円(10mg錠1錠あたり) X 1日1回 X 30日 X 1割負担 = 1612円/月

となります。
※それ以外に薬局の調剤料や病院の診察料(初診料または再診料、検査料など)が必要です。

アリセプトの注意・副作用について

他に持病のある方は内服にあたり注意が必要な場合があります。現在治療中の病気、過去の病気も含め必ず主治医に相談してください。

飲み忘れた場合は、基本的には気が付いた時に服用してください。ただしいつも飲む時よりも12時間以上離れていたときは、その日はお休みして次の日から通常通りに飲んでください。薬が体に留まる時間(半減期)が長いため、1日飲まなくても影響は少ないです。飲んだかどうかわからなくなってしまった場合は、誤って重複して飲むことを避けるためにその日はそれ以上飲まずに翌日から内服を再開してください。

副作用、消化器症状

代表的な副作用として、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢などの消化器症状があります。消化管における神経伝達物質の変化により生じると考えられており、多くは内服開始後および増量後に出現します。軽度なものであれば多くは様子をみているうちに体が慣れてきて自然に軽快します。個人差がありますが、軽度の場合はおおむね数日~1週間程度で治まる方が多いです。

症状が比較的強かったり長引いたりする場合は整腸剤や吐き気止めなどを併用することで内服を継続できることもありますが、それらを追加してでも内服を続けるか否かは主治医の判断や副作用の程度、患者さん・介護者の状況により異なります。重度の場合には基本的に中止または減量が必要になります。

精神症状

興奮やイライラ感、落ち着きのなさなどが出現することがあります。これは脳内のアセチルコリンが増加することにより、神経細胞が刺激されて生じるものと考えられています。投与開始や増量に伴い生じた場合は慣れてくるに従い自然に軽快することもありますが、介護者の負担が大きい場合にはアリセプトを減量・中止せざるを得ないこともあります。

またこれらの症状はアリセプトとは関係なく認知症の症状としても出やすいものであるため、これらの原因となるようないつもと変わった出来事がなかったかなど検討しましょう。

徐脈・不整脈

心臓の病気をお持ちの方は内服にあたり注意が必要です。

パーキンソニズム

アリセプトにより脳内のアセチルコリンとドパミンのバランスが崩れ、パーキンソニズムの悪化・出現を招く可能性が指摘されています。症状や介護者の負担など、主治医の先生と相談しながら治療を受けていきましょう。

アリセプトの特長

認知症の周辺症状(BPSD)の中でも、意欲低下、無関心、抑うつといった症状への改善効果が報告されており、これらを伴った患者さんにとってよい適応となります。2015年現在、レビー小体型認知症に適応がある唯一の薬となっています。

コリンエステラーゼ阻害薬の中で、唯一高度のアルツハイマー型認知症に適応のある薬です。軽度から高度まで適応があるため、途切れのない治療を行うことができます。1日1回の内服で済むため、飲み忘れの防止や本人・介護者の負担軽減になります。

ジェネリックについて

2011年にドネペジルの日本での特許が切れたことに伴い、各社からジェネリック品が販売されています。薬価はメーカーにより異なりますが、2015年現在ではおおよそ半額~6割程度のものが多いです。

内服が長期にわたる認知症においては自己負担の軽減に有効です。ただし有効成分については同一であっても添加物については異なるため、味や溶けやすさ(口腔内崩壊錠の場合)などの飲み心地の部分については同一とは限りません。ドネペジル自体には苦味があり各社が軽減のための工夫をしていますが、ジェネリック品では苦くて飲みにくいという方は先発薬であるアリセプトを試してみるのも良いと思われます。

また、アリセプトはレビー小体型認知症への適応がありますが、ジェネリック品にはありません。アリセプトは発売当初は「軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症」に対して承認され、その後「高度のアルツハイマー型認知症」、さらに「レビー小体型認知症」に対して適応が拡大されたという経緯があります。

ジェネリック品については現在のところ「軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症」「高度のアルツハイマー型認知症」のみ認可されています。これは効能・効果の違いではなく、保険制度上の認可の問題によります。

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