脳のしくみと認知症の予防方法とは?

この記事の目次
  1. 脳のしくみとは?
  2. 脳はどんな役割があるの?
  3. 加齢に伴う記憶力の低下と認知症の違いは?
  4. 認知症の予防方法とは?
  5. 認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)とは?
  6. 進行を遅らせるためにはどのような対策をすればいいのか?

脳のしくみとは?

脳はどんな役割があるの?

脳には、大脳・小脳・脳幹という3つの部分に分かれています。特に、大脳は物事を考えたり、決めたりする役割を担っています。大きく分けて4つの部分に分かれます。その部分によって役割が異なります。

①前頭葉
物事を考える、計画する、判断する、創造する、注意する、行動を抑制する、感情をコントロールする、コミュニケーションを図る、など

②側頭葉
聞く(聴覚)、言葉を理解する、視覚から得た情報を認識する、など

③頭頂葉
知覚を感じる、運動する、読む、書く、話す、計算する、後頭葉や側頭葉からの情報を統合する、など

④後頭葉
見る(視覚)、視覚から得た情報を認識する、など
例えば、道を歩いていて、曲がり角が見えます。トラックが走っている音がします。実際にはトラックは見えなくても、曲がり角の先にはトラックが近づいてきていることを認識します。そして、曲がり角の手前で止まります。

このように、様々な知覚を統合し、判断し、身体を動かすことを瞬時に行います。

脳は、右脳と左脳に分かれています。右脳は左半身につながっており、左脳は右半身とつながっています。例えば、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が起こると、脳の障害の部位と反対側の手足に麻痺がみられる場合があります。

また、右脳は感覚的な能力、音楽、芸術、図形などを認識する能力、創造性に関係します。一方、左脳は言葉の理解、時間の管理、計算など論理的な能力に関係します。

左右の脳をつないでいるのは、脳梁(のうりょう)という部分で情報を共有しています。

加齢に伴う記憶力の低下と認知症の違いは?

記憶を司るのは、大脳辺縁系の海馬(かいば)です。生理的な加齢に伴い、記憶力、判断力は低下していきます。これは、加齢に伴うもの忘れであり、認知症とは異なります。

加齢によるもの忘れの特徴は、忘れた自覚があることです。例えば、物の置き場を忘れても、行動をたどることによって思い出します。人の名前が出てこなくても、会った時の記憶をたどることで思い出せます。

認知症の場合、ヒントがあっても思い出せない、忘れたという自覚がありません。また、新しいことが覚えられないため、例えば、病院の受診の日を忘れてしまう、外出したもののどこに行こうとしていたのか忘れてしまうなどが起こります。その一方で、古い記憶は影響がありません。

また、徐々に進行して、季節や年月日が分からない、家電製品の使い方が分からないなど日常生活に支障が生じます。

認知症の予防方法とは?

認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)とは?

軽度認知障害とは、認知症の前段階のことを言います。日々の生活の中で、もの忘れやヒヤッとする場面がある場合、軽度認知障害の検査を受けてみることをお勧めします。

軽度認知障害や認知症は早期発見をすることで、進行を遅らせる対策を取ることができます。

「認知症と診断されるのが嫌だから…」と受診をしないままでいるよりも、きちんと受診をして現状を受け止め、適切な治療を受けましょう。

進行を遅らせるためにはどのような対策をすればいいのか?

軽度認知障害や認知症の進行を遅らせるためには、どのような対策をとれば良いのでしょうか?

肥満、高血圧、糖尿病などは生活習慣病と言われています。生活習慣病は、日々の生活を見直すことで改善できることがたくさんあります。

認知症と生活習慣病の関係についてはこちら

食事を見直してみましょう

①塩分を摂り過ぎないようにしましょう
塩分の控えるために出汁を使ったり、食材そのものの味を楽しむ、減塩の食品を使用するなど少し工夫をしてみましょう。

②糖質を摂り過ぎないようにしましょう
糖質を摂ることで血糖値が上昇します。適切な量であれば問題ないのですが、糖質を摂り過ぎると血糖値が上昇し、高血糖の状態が続きます。

そのためには、よく噛んで食べる、腹八分目にする、食物繊維を摂ることで血糖値の上昇を緩やかにします。そのため、先に野菜を食べて、その後から主食を食べるようにしてみましょう。

③蛋白質を十分に摂りましょう
蛋白質は身体をつくるために重要な栄養素です。魚、肉、卵、大豆製品など十分に摂ることで筋肉や脳の機能を維持します。

運動する習慣を身につけましょう

①有酸素運動を行いましょう
有酸素運動とは、ある程度の時間を無理なく続けられるような運動のことを言います。有酸素運動は1回20~30分の有酸素運動を週3回のペースで行いましょう。「こんなにまとまった時間は取れない」という方でも、運動するタイミングを探してみましょう。代表的な運動は、水泳、ウォーキング、ジョギングなどです。

例えば、駅の階段に消費カロリーが書かれているのを見たことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか。また、職場のフロア移動をする際に、上下2階は階段を使う、トイレに行く際に遠い場所に行く、などちょっとした運動の機会を利用して続けてみましょう。

②無酸素運動も取り入れてみましょう
無酸素運動とは、筋肉トレーニングのことを言います。筋肉トレーニングと言っても、ハードな運動ではなく、筋肉を増やす運動です。筋肉を増やすことで基礎代謝量(身体を動かしていない時に消費されるエネルギー量)が増えるため、太りにくい身体になります。

例えば、椅子に座り、片足をまっすぐ伸ばしてつま先を上に向ける運動を左右10回行う、テレビを観ている時や調理をしている間にかかとの上げ下げを行う、などちょっとした時間を使いましょう。

③運動する際の注意点
運動を行う際に、注意する点が2つあります。

まず、運動の前後には、必ずストレッチをしましょう。ストレッチを行うことで、身体が温まり、動かしやすくなります。また、ストレッチ自体、血行を良くします。息をゆっくり吐きながら気持ちよいと感じる程度にしましょう。

次に、安全に留意しましょう。運動することに必死になり、転倒や脱水に注意しましょう。運動の強度はウォーキングをしながら会話ができる程度にしましょう。息が上がって話しにくくなるのは、ペースが速すぎます。

一人で運動しようとしても、なかなか続きません。一緒に運動を続けてくれる仲間をつくることも大切です。

参考文献:1)広川慶裕 認知症は予防できる!河出書房新社,2018,p26,32~33
2)今井幸充 認知症を進ませない生活と介護 法研,平成27年,p96~97


このページの
上へ戻る