認知症のリハビリに回想法
認知症のリハビリの一つに「回想法」があります。ここでは回想法の効果や方法についてご紹介します。
回想法とは?
回想法とは、昔の写真や使っていた馴染みの物を見たり、音楽を聴いたりすることで、昔の体験や思い出を語り合う心理療法の一つです。
回想法は、グループで行う場合と、個人で行う場合があります。ここでは、グループで行う場合を例に挙げて説明します。
例えば、高齢者でなくとも、懐かしい歌を聴くことで、その頃自分がどのような人生を過ごしていたのか思い出すことがあると思います。それが、回想法の大きな効果のひとつです。
例えば、懐かしい写真を見て、その頃自分が何をしていたのか、家族、学校・同僚・友人などと、どのように過ごしていたのか、楽しかった体験、苦い体験などを思い出します。
その体験をグループメンバーに話すことで、その話を聞いた人も同じような体験をしたり、その頃の話を聞いたことによって自分の人生を振り返ってみる機会につながります。
このように、誰かに話すことによって、話した方も聞いた方もお互いが心地よい時間を過ごすことにつながります。ただし、参加者の中には、辛い体験や思い出したくない体験をされている方もいらっしゃいます。回想法を行う際のスタッフは、十分にメンバーへの配慮も必要です。
現在、日本でも介護施設などで取り入れられています。
回想法の効果
認知症の人は、短期記憶といって少し前にあったことを記憶することは得意ではありません。しかし、昔のことについての記憶は保たれている場合が多いです。このような体験を「話す」「聞く」ことにより、脳の活性化を図ると共に、メンバーとの関わりを通してコミュニケーションの向上につながると言われています。
また、認知症の進行予防に期待できるほか、蘇った思い出が楽しかったという安心から心理的に安定する効果もあります。また、「自分はこんな人生を歩んできたんだ」という自己肯定感につながります。
記憶を引き出す物としては、子どもの頃に遊んでいたおもちゃ(例えばお手玉、ベーゴマ、カルタ、メンコなど)、本、昔の写真や地図、着物、生活用品、若い頃に流行した映画のポスター、懐メロの音楽などを準備しましょう。また、季節の花や植物、節分、雛人形、こいのぼり、七夕の笹など日本の行事を取り入れるのも効果的です。
最近では高齢者が青春時代を過ごした頃のポスターを掲示している施設もあるそうです。
回想法の注意点
回想法を行う際に注意することとして、
①答えやすいような具体的なテーマにする。
例えば、「子どもの頃の遊び」「お正月の出来事」「旅行の思い出」「学校での出来事」など
②個人情報に関する内容である場合もあるため、秘密を遵守する。
③傾聴する、無理に聞き出そうとしない。
過去の記憶は楽しいものばかりではありません。苦い体験でも進んで話すようであれば傾聴し、話したがらない場合は、話題を替えるなど配慮しましょう。
④間違いを訂正しない
事実ではなくても、間違っていても、訂正せずに聞きましょう。
個人で行う場合
訪問看護や訪問介護、施設でのケアを通して行う場合があると思います。好きな歌を聴きながらケアをしたり、写真を見せてもらう、遊び方を教えてもらうなど、好みや背景を知る機会になります。そして、得た情報を今後のケアにつなげていくと、より効果的になると思います。
出典:1)黒川由紀子.認知症高齢者に対する回想法.老年精神医学雑誌.2017,28,12,1348-1355.
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