認知症介護の注意点:④入浴を介助するとき

この記事の目次
  1. 安全に入浴をするために準備することは?
  2. 入浴を嫌がるのはなぜ?
  3. 家の浴槽で入浴は難しい場合、どうしたらいい?

安全に入浴をするために準備することは?

認知症の人だけでなく、高齢者が入浴する際に注意しなければならないことは、脱衣所や浴室の温度を温めておくこと、脱衣所に椅子を準備しておくこと、湯温の確認をしておくこと、水滴などにより足が滑らないように注意することなどがあります。

特に冬は、室温と脱衣所、浴室の温度が異なることから、寒さにより血圧が変動する恐れがあります。また、服を脱ぐという行為は羞恥心を伴います。せっかく脱衣所まで来たのに、「寒いから入らない」嫌がる場合もあります。十分に脱衣所や浴室を温めて、「これからお風呂に入ろう」という気持ちを盛り上げることも大切です。

また、脱衣所に椅子を準備しましょう。服の着脱時は、片足を上げるなど身体のバランスを崩してしまう危険性があります。入浴後は、非常に体力を消耗していますので、椅子に座って休んでもらいましょう。浴室にもシャワーチェアーを準備すると、安全に入浴ができます。

そして、浴室の水滴や石鹸・シャンプーなどにより足を滑らせる場合があります。介助者は十分に注意して誘導しましょう。

湯温の調節は本人と確認しながら行いましょう。本人の好みに応じることも大切ですが、糖尿病の患者さんの中には、神経障害によって温かさを感じにくい場合があります。必ず介助をする人も湯温を確認しましょう。

入浴を嫌がるのはなぜ?

入浴を嫌がるのは、認知症の症状である判断力の低下や、実行機能障害などによると言われています。例えば、清潔・不潔の認識が低下するため、服を脱ぐというわずらわしさ、人前で裸になるのが嫌・恥ずかしい、身体の洗い方が分からなくなった、などが考えられます。

入浴を嫌がるからと言って、無理やり服を脱がせて入浴をさせたり、逆に長期間入浴しなかったりするのは、よくありません。無理やり服を脱がせれば、嫌な感情が残り、今後の入浴だけでなく、信頼関係にも影響を及ぼします。一方で、入浴しない状態が続けば、皮膚の清潔を保つことはできず、感染しやすい状態になり、他者との人間関係や社会性にも影響を及ぼします。

もともとの清潔を保つための習慣はどうだったのかを思い出してみましょう。例えば、「入浴は毎日だったけど、髪の毛を洗うのは2日に1度だった」「もともとシャワーは寒いといって嫌いだったな」「湯船に浸かるのは3分程度だった」…などその人なりのこだわりがあったかもしれません。その人の習慣を尊重しながら介助することが、本人にも介護者にもストレスが最小限となるはずです。

また、認知症であってもひとりでできることは自分でやってもらいましょう。介護者が「お母さんは手を洗って下さいね、私は背中を洗いますね。」など具体的にどこを洗うのか、次はどうするのかを、簡潔に説明することが大切です。

今までに出かけていた温泉地の入浴剤を買って来て、「今日は箱根の温泉だよ」「草津に行こう」「別府の湯だよ」など自宅で温泉めぐりをしながら、思い出を話してもらうのも楽しいですね。ただし、長湯には注意しましょう。

家の浴槽で入浴は難しい場合、どうしたらいい?

脳血管性認知症の人では、麻痺や関節のこわばり(拘縮)などの身体症状により自宅の浴槽では入浴するのが難しい場合があります。また、家族で介助をすることが難しい場合は、デイサービスや訪問入浴介護を利用してみましょう。

訪問入浴介護とは、自宅を訪問し、浴槽を搬入して、入浴できるサービスです。介護保険を利用できます。詳しくは、担当のケアマネージャーに相談しましょう。



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