認知症介護の注意点:③排泄のときの注意

1. トイレにはどんな配慮が必要か?

トイレの位置は高齢者の居室の近くがわかりやすく、排泄回数の多い高齢者には負担が軽減されます。

また、今まで暮らしてきた位置が感覚として残っていますので、環境を変えない場合には、手すりをつけたり、腰かけ式の便器にする等の工夫をしましょう。中から閉めると外からでは開かない鍵は使わないようにしましょう。

2. おむつはどんなものがよいか?

テープ止めタイプのオムツ・リハビリパンツ・尿とりパット・平オムツなど用途に応じていろいろな種類があります。

夜間の睡眠を妨げないように最近では長時間用のオムツも改良されており、利用の際は介護用品を取り扱っている業者に直接相談するか、市町村や病院、担当のケアマネージャーさんに相談してみてください。

3. おむつの上手な取り替え方は?

高齢者の排泄パターンを観察しましょう。

自尊心を傷つけることのないように、できるだけ手順よく素早く取り換えると同時に、優しく語りかけながら行う事も大切です。また、室温や環境整備にも注意し、介護する側の手も温かくしておくと良いでしょう。おむつ交換をはじめてされる方は、市町村や病院、担当のケアマネージャーさんに相談してみてください。

4. 下痢や便秘が続くが?

下痢や便秘の原因が分からない場合は病院に受診することをお勧めします。

下痢が続くことにより脱水になることも考えられますし、加齢による腸管の運動障害で排泄がない、便秘が続くことで便が腸の中で硬くなって出にくくなる事も考えられます。また、便秘の時は、腸のがんも考えられ、大事に至らない内に病院に受診しましょう。

5. トイレの水を流さない

排泄後、トイレの水を流さない理由はいろいろ考えられます。

昔は水洗トイレが無かったので、水を流す事を忘れる、流し方がわからない、水洗レバーを見つけられないなどが起こります。そういう場合は、高齢者をトイレに誘導した際に介護者が水を流したり、声かけをして一緒に流しましょう。できない場合は、あまり無理に教え込もうとしないで、毎回声をかけるなどして習慣にして頂くようにすることも方法のひとつです。

6. トイレのドアを閉めずに用を足す

高齢者の中には認知症でなくてもトイレのドアを閉めずに用を足す人がいます。

ドアを閉めるという行為を忘れている場合や、閉めたつもりでも閉まっていない場合、あるいは介護者の姿が見えないと不安になる場合等があります。その高齢者のケースに応じて対処しましょう。また、中から鍵をかけると外からでは開かない鍵は使用しないようにしましょう。

7. 排便後拭く事ができない

排便後に自分のおしりがふけなくなるまで認知症のレベルが進むと、介護者が拭く以外ありません。

人のおしりを拭くのは自分のおしりと違って、なかなかきれいにふけません。使い捨てにできる布を濡らすかウエットティッシュのようなものを利用するときれいに拭けるでしょう。但しその場合には、皮膚や粘膜に使用できるものかどうか確かめましょう。

8. 排便後拭いた紙を部屋に持ち帰る

排便後、使用した紙をポケットや懐に入れて部屋に持ち帰る人がいます。

捨てる所がわからずに持ち帰る人には、高齢者が見てすぐにわかるようなくずかごを、トイレの中の目立つ場所に置いてみましょう。

9. おむつやパットをトイレに流す

トイレに行った際にオムツやパットを便器に流してしまう高齢者がいます。

介護者が常に同行できればよいのですが、傍についてあげられない場合もあります。そんな時の対処法として、トイレに濡れたパットを置くかごやバケツを用意し、何度も説明してそこに捨ててもらうように声かけをしましょう。また、バケツにパットを置く事を 見てわかるようにバケツに印をつけましょう。日中独居の場合は、その間は水洗トイレの水量を調節して流れないようにする方法もあります。またオムツのタイプをパンツ型にするのもよいでしょう。

10. トイレに誘導しても排泄しない

トイレに誘導しても排泄しようとしない高齢者は、トイレで排泄をするという事がわからない場合が多く、言葉だけでわからせるのは大変です。

失禁した時の時間帯等を常に観察して、食後何時間くらいで行きたくなるか、その高齢者のパターンをつかむ事です。

また、トイレという言葉や文字が排泄する所と理解していない場合は、その高齢者がよく使っていた表現、例えば「便所」、「お手洗い」、「はばかり」といった言葉を使うとうまくいくケースもあります。

11. 便器の水で手を洗う

トイレの便器に溜まった水で手を洗う高齢者がまれにいますが、これは昔の習慣とも考えられます。

昔、水道がない頃は 山からの清水を瓶にためて、顔を洗ったり、歯を磨いていました。このような症状が現れ始めるのは認知症も中期以上に進んだ頃からです。ですので、そこが便器であり、水が汚い事を説明しても通じないでしょう。その様な場合にあわてて怒ったり、止めさせたりしない事です。「こっちの水の方が気持ちよいですよ」等と落ち着いて、洗面台の方へ誘導しましょう。

12. 頻繁にトイレに行く

頻繁にトイレに行く高齢者の場合、その様な症状が急に起こったのなら膀胱炎等の病気の可能性があります。

しかし、病気でもないのに頻繁にトイレに行く場合は、本人に特に危険がなく、周りも不愉快でないなら、そのままでも差し支えないでしょう。原因としては粗相をしてはいけないという脅迫観念か 暇でする事がないからという場合もあります。そのような高齢者はゲームをしていたり、何かに熱中しているとトイレに行く間隔が長くなりやすいですので、精神面の安定も図るとよいでしょう。

13. トイレ以外で放尿、排便する

認知症の高齢者がトイレ以外の場所で排泄をするのにはいくつかのケースが考えられます。

(1)トイレの場所がわからない、(2)トイレに行くまで我慢できない、(3)違う場所をトイレと思い込んでいる、(4)その高齢者にとってトイレが不快な場所である等です。

(1)はトイレのドアに「便所」と表示したり、途中に矢印をつけたりします。(2)はトイレに行くタイミングを把握する事です。(3)はその場所がトイレではない事をわからせる工夫をします。(4)はトイレが高齢者にとって暗い場合は明るく、寒い場合は暖かくすることです。このように、その高齢者がどのようなケースに当てはまるのか、普段の行動から見極める事でしょう。

14. 尿や便の失禁がある

高齢者を介護する家族にとって、失禁は介護のランクを変える出来事といっても差し支えないでしょう。

また、高齢者にとっても、はじめての失禁はご本人にとって大変なショックで、その後にとる行動は様々です。汚れたものを隠したり、他のものの仕業にしたり、濡れた床を拭こうと焦ったり、どうしてよいかわからずに呆然としている人もいます。いずれにしても本人のプライドは大きく傷つきますので、介護者や家族はやさしく丁寧に対応する必要があります。

15. おむつを外してしまう

おむつを使用していても、尿意・便意の残っている高齢者はたくさんいますし、トイレに行こうと思ってオムツを外すこともあります。

また、おむつ内の排泄により、不快感や掻痒感があるなどオムツを外す何らかの原因があるはずです。排泄があればすぐにオムツを交換することが望ましいですが、トイレに行くことが可能であれば、付き添ってトイレ誘導することにより、排泄の場所の認識とともに尿意・便意が維持されるでしょう。

16. 失禁した衣類をタンスにしまいこむ

排泄を失敗することは、誰でも恥ずかしいものです。

認知症が進んでも羞恥心はずっと残るものです。失禁した事に気付いても、後始末をどうしたら良いのか分からず「とにかく、隠そう」と思い、タンスにしまいこむ事があります。その場に居合わせたら、優しく声をかけてあげましょう。すでにタンスにしまいこんであれば、「洗たくしておきましょうね。」等、声をかけましょう。

17. 手についた便を始末できない

排泄のパターンを知ることからはじめ、排泄の時間帯(たとえば早朝)には自尊心を傷つけないようにトイレに付き添い、後始末のお手伝いをします。

また、オムツを利用している場合は、便が出て気持ち悪くてオムツの中を触ってしまうこともあるので、排泄パターンを知り、早めに対応していくことを心がけましょう。

18. 便をもてあそぶ

便をもてあそぶという行為には、便自体を便と認識していないことがあります。

たとえば、食べ物と思って大切にとっておいたり、手についた便を処理できずに、周囲の壁やカーテンで拭こうとしたりすることがあります。また、排便行為やその後の後始末がうまく行えないことや水洗トイレのため、水を流すといった動作が出来ず、同様の行動をされることもあります。いずれにしても認知症の進行によるものなので、自尊心を傷つけない対応が必要です。排泄パターンを理解し、早めの対応ができるように見守りや工夫をしていくことが大切になってきます。

19. 失禁した時の対応は?

初めて失禁した高齢者はショックで1日中ふさぎこむことがあります。

そのような時は慰めたり叱ったりしないでなるべく自然に振舞いましょう。高齢者にとって自分の能力の低下を指摘されると、心理的負担から汚れた下着を隠す行動をとることもあります。何事もなかったように振る舞い、態度はやさしく接しましょう。例えば、便失禁されていた場合は指摘するのではなく反対に、「便が出て良かったね」と「お腹痛くないですか」と便失禁した事よりも体調を気づかいます。尿失禁の場合は自分たちが気づいて差し上げられなかった事を反省して、「寒くなかったですか」と体調を気遣うように声かけをして、ご本人の気持ちを明るくして差し上げると良いでしょう 。

20. トイレの場所がわからないが?

トイレがわからなくなった高齢者が、玄関や廊下の隅に排泄することがあります。

場所を探しあぐねている場合は、トイレのドアに「便所」と書いた紙を張るのもいいでしょう。言葉の意味がわからない場合はその高齢者の普段使う言葉を書きましょう。

21. トイレに誘うタイミングは?

トイレに行きたがるそぶりや失禁のタイミングをよく観察し、食後どのくらいの時間で排泄するか等をよく見極め、メモを取る等してその高齢者の排泄パターンを把握しておきましょう。

22. トイレの誘い方は?

排泄パターンをよく観察し、トイレに行きたがるそぶりを見せた時や前回の排泄時から一定時間後に「トイレに行きましょう」と誘うようにしますが、基本的には何かのついでにお誘いするのがよいでしょう。

例えば、食事の前にお誘いするとか、散歩の前にお誘いするなどの、日常生活の中で移動する際に一緒にお誘いします。排泄はデリケートな事柄なので、高齢者の気持ちにも十分な配慮をしましょう。トイレに行くのを拒む場合も何かのついでにするとうまくいくでしょう。

23.汚れた下着を隠すのは?

高齢者が失禁して汚れた下着を隠すことがよくあります。

このような行為は、高齢者が自分の失敗を自分で始末しようとする心理の表れです。そのような時に「なんで汚れているものを箪笥に入れるの」等と叱るのは良くありません。見つけた時は騒ぎ立てず、本人に気づかれないように片付けましょう。 ただし、一番大切なのは本人の体調によってゆるくなる場合での失禁があるので、体調管理も大切です。

▼認知症QA270問「認知症介護の注意点」の他のQAを見てみる 認知症介護の注意点:①食事を食べさせるとき 認知症介護の注意点:②下着や衣服への配慮 認知症介護の注意点:④入浴の配慮とコツ 認知症介護の注意点:⑤睡眠時に配慮すること 認知症介護の注意点:⑥運動をさせるとき 認知症介護の注意点:⑦介護への不安や疑問

▼「認知症QA270問」の他のカテゴリを見る 発症から診断まで 認知症高齢者への接し方 認知症の予防と治療


このページの
上へ戻る