認知症介護の注意点:②下着や衣服への配慮
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いつも「寒い」と言って、下着を着込んでいる。
高齢になると、体温の調節がうまくいかなくなります。
寒い場所の場合、本来は身体から熱が奪われないようにします。しかし、高齢者の場合、身体から熱が奪われやすいだけでなく、熱を作り出すことも難しくなります。そのため、身体が冷えやすく、下着を着込む場合があります。
一方で、暑くても汗をかきにくくなり、汗をかく量も減ります。その結果、熱中症やうつ熱を起こしやすくなります。常に部屋の気温や高齢者の皮膚の状態を観察しましょう。
また、シャツや上着を重ねるよりも、下着を重ねるほうが安心する方もいらっしゃいますので、相談しながら選びましょう。
今まで服やアクセサリーを買うことが生きがいだったのに、衣服に無頓着になった。
認知症の場合、今までの趣味や興味関心が高かったことに生きがいを感じていたにも関わらず、急に意欲がなくなったり、興味・関心を持たなくなる場合があります。
また、着替えがひとりでできなくなってしまったという喪失感や人前で着替えることへの羞恥心などによる場合もあります。
例えば、外出の際にお気に入りの服を着たり、アクセサリーをつけることで、気分が晴れやかになります。ちょっとした工夫で気分転換につながります。また、お化粧をしたり、ネイルケアを行うことも良いでしょう。
着替えようとしなくなった。
認知症により判断力の低下がみられ、毎日同じ服を着ていても不潔である、汚れているから洗濯しよう、という認識が薄れてしまいます。
また、麻痺などによって、腕や足の上げ下げや手先の巧緻性が低下することにより、かぶりものの服が着にくい、前開きの服が着にくい、ズボンを履くために立ち上がるのが不安定になる、ふらつく、ボタン・スナップやファスナーなどの手先の細かい動きがしにくくなる、など様々な理由によって着替えが億劫になります。
このような場合は、その人が着やすい服装を選びましょう。例えば、手が動かしやすい大きさのボタンやスナップの服を選んだり、ファスナーのついていないズボンや面ファスナーのズボンにしてみましょう。
服の着方が分からなくなった。
衣服をを着替えるのが億劫になる、上着の裏表や前後を間違えたり、反対側の袖に手を通そうとしたり、セーターに足を通そうとする場合があります。このような場合を着衣失行と言います。
普段何気なく着替えを行っていますが、非常に複雑な判断をしながら行っています。例えば、下着を着てからセーターを着るという順番や、セーターの前後、上下、裏表を確認してから着ます。
しかし、認知症がみられると、セーターの袖に足を通したり、ズボンに手を通します。このような場合、あせらせず、一枚ずつ順番に渡しながら「セーターを着ます」「ズボンを履きます」など具体的に声をかけて説明しましょう。
季節に合った服装が選べなくなった。
夏なのにセーターを着ている、冬なのに薄着のまま外出している、など判断力の低下によって季節に合った服装を選ぶことができなくなる場合があります。
このような場合は、「ちょっと暑いかしら?涼しい服に着替えましょう。」、「外に行くときは寒いですね。コートを着ましょう。」などの声をかけながら調節をしましょう。
どんな衣服が良いのか。
今までお気に入りの服や思い出の服があると思います。本人に「今日は何を着ますか?」と選んでもらうのも良いでしょう。ただし、何種類の中から選んでもらうのは混乱を招くので、2種類から選んでもらいましょう。
シンプルで着脱しやすい、ゆったりとしている、洗濯がしやすい、ウエストがゴムで排泄する際に手間取らない、なども重要なポイントです。
しかし、窮屈な服や丈の長い服は注意が必要です。すそに足がからんで転んだりしないように注意しましょう。
毎日同じ服を着たがる。
認知症の人の場合、こだわりが強くなるため、毎日同じ服を着たがる場合があります。そのような場合は、同じ服を複数用意したり、色や形が似ている服を複数用意しておきましょう。
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