認知症高齢者への接し方:⑤レビー小体型認知症の人の対応
レビー小体型認知症の人に現れやすい症状とは?
レビー小体型認知症とは、レビー小体というたんぱく質が大脳皮質全体に現れ、神経細胞に溜まると脳を萎縮させます。また、レビー小体が脳幹という部分だけに現れるのがパーキンソン病で、大脳皮質全体に現れるのがレビー小体型認知症です。
レビー小体型認知症の人に現れやすい症状は、幻覚(特に幻視)や妄想、表情が乏しい、パーキンソン症状(動作がゆっくりになるなど)、睡眠時の行動異常、認知機能が変動する、などがあります。
また、レビー小体型認知症の特徴として、もの忘れが目立たない場合があります。
幻覚とは?
幻覚とは、実際に存在しないのに、存在している印象を持つ体験のことを言います。見えないものが見える幻視、聞こえないのに聞こえる幻聴、味を感じる幻味や臭いを感じる幻臭などがあります。特に、レビー小体型認知症の人は、幻視がみられます。ただし、全員に幻視が見えると言う訳ではなりません。
例えば、「子どもが庭で遊んでいる」、「さっきまで子どもがいたのに、どこに行っちゃったの?」、「部屋に虫がいるから追っ払ってちょうだい。」など、昼夜を問わず、ありありと子どもや小動物、虫などが見えています。
幻視が見えている時の対応は?
レビー小体型認知症の場合、初期から幻視の訴えが聞かれます。幻視が見えている場合、肯定も否定もしないことが大切です。肯定をした場合、より一層、幻視が進んでしまいます。逆に、「そんなわけ無いでしょ!」と否定すると、「自分の言っていることを否定された」という感情が残り、関係性が悪くなる場合もあります。
例えば、「ねずみが部屋にいる!」と訴えられた場合、落ち着いた声で「そうですか、では一緒に部屋に行きましょう。」とその場所まで向かいます。そして、「ここにいたのですね。今はいませんよ。」と一緒に確認をしましょう。
妄想が現れた時の対応は?
妄想には、もの盗られ妄想、被害妄想、嫉妬妄想などがあります。例えば、テレビに映っている人に話しかけたり、鏡に映っている自分に大声を出したり、つばをかける場合があります。
また、高齢になると視力の低下や、暗い場所に目が慣れるまでに時間がかかります。その上、見当識障害により時間や場所の感覚が分からない、夜間にトイレに何度も起きるなど様々な要因が重なり、夜間に幻視や妄想を訴える場合があります。
家族としては、「また夜中に騒いでいる」「ゆっくり寝かせてほしい」など様々な感情が生じます。しかし、レビー小体型認知症の人にとって、見えていることが事実であり、否定されると混乱します。対応として、本人が話した内容をそのまま繰り返す、一緒に確認をする、「もういないよ」という安心できる声かけを行いましょう。
パーキンソン症状とは?
先にレビー小体が脳幹に現れるとパーキンソン病と説明しました。レビー小体型認知症でも、パーキンソン病に似た症状が現れます。動作がゆっくりである、前かがみの姿勢、身体が動きにくい、身体が固くなる、転びやすい、手が震える、急に止まれない、などの症状が現れます。
このような症状が現れた場合、運動機能の維持と転倒予防に努めることが重要です。例えば、デイケアや在宅リハビリテーションを活用したり、毎日の生活に散歩や家事を取り入れましょう。身体機能を維持するためにも、日々継続することが重要です。
睡眠時の行動異常とは?
レビー小体型認知症の人の場合、眠りの浅い時間帯に夢を見て、大声を出したり、暴れることがあります。
家族は、夜中に起こされてしまった、何とかして落ち着かせたいと思うかもしれません。しかし、本人にとっては、誰かに追いかけられている、戦っているといった悪夢であり、身体が動いていることへの自覚はありません。そのため、思いがけない力の強さに危険なこともあります。
うなされているのを無理して起こそうとせず、危険な目に遭遇しないように行動しましょう。例えば、距離を置いて声をかけて起こす、ベッドから転落しないように見守るなど、本人の安全と共に家族の安全も守りましょう。
認知機能が変動するとは?
レビー小体型認知症の特徴のひとつに「良い時と悪い時の差が激しい」と言われています。1日の中でも午前と午後の状態が変動したり、数日の周期で変動がみられます。
家族はその変化に振り回されてしまう場合があります。認知機能に変動があることを理解して、支援することが大切です。
参考文献:1)今井幸充:認知症を進ませない生活と介護 法研,p.38~39,平成27年
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