認知症高齢者への接し方:④日常生活を安全に安心して過ごすためには

家電製品は必要なもの・必要な機能に限定する

多機能な家電製品や、シンプルで説明がない家電製品など、認知症の人でなくても最初は使い方が分からず戸惑う人もいらっしゃるのではないでしょうか。 認知症かな?と感じた時の具体例として、「今まで使用していた家電製品の使い方が分からなくなった」という場合があります。家電製品によっては、危険が伴うので、介護者や家族の見守りが必要となります。例えば、ストーブ、コンロ、アイロンなどは注意が必要です。また、電源コードやプラグの劣化による火災も考えられます。一人暮らしの場合は、家族が訪れた際に家電製品の劣化がないかどうか確認をしましょう。

調理は、訪問介護ヘルパーと一緒に調理を行う、配食サービスを利用するなどの方法があります。

また、家電製品で必要のないボタンは触らないように目隠しをしておく、洗濯機や電子レンジのように、順番にボタンを押す家電製品は、ボタンの上に番号を書いたテープを貼っておくと分かりやすいです。

掃除機は重くて持ち歩くことが難しい場合は、ハンディ型の掃除機、ほうきや拭き掃除を行うシートを利用する方法もあります。家電製品を選定して、必要なものだけに絞りましょう。

壊れた場合は次も同じ製品を選ぶ、近所の家電製品販売店で修理をしてもらう、新しい家電製品を購入する場合は操作が簡単なものを選ぶ、など工夫をしましょう。

買い物はなじみの店や店員の協力を得る

認知症に気づく具体例として、「買い物でおつりの計算ができなくなるため、高額紙幣で支払いを行う」場合があります。

買い物は、訪問介護ヘルパーに同行してもらうことで、おつりのもらい忘れや、小銭が溜まることは解消できるかと思います。ひとりで買い物に行く時は、近隣のなじみの店に通う場合が多いと思われます。そのため、店員に認知症の症状を説明して、理解、協力してもらいましょう。例えば、パンパンの小銭入れを見た店員が一緒に数えて支払いを手伝ってくれる場合もあります。「お店に迷惑をかけるのではないか」と考えるのではなく、認知症であることを説明することで、地域社会からの協力を得ることができます。その結果、住み慣れた家で生活を続けることができます。

訪問販売や詐欺に遭わないために

日中ひとりで過ごす場合、家に来た訪問販売から必要のないものや高額なものを買ったり、契約してしまう場合があります。その理由として、ひとりで居る寂しさや、話し相手になってくれたお礼のつもりで買ってしまうのです。

このような訪問販売には、クーリングオフの制度を利用する、消費者庁の消費者生活ホットラインに相談するなど速やかに対応しましょう。 また、言葉巧みに高齢者や認知症の人を狙う詐欺も多発しています。「自分は詐欺に遭わない」と思っていても、家族になりすまして緊急性が高い状況や、慌てた様子を見せて不安をあおる状況を作り出します。

訪問販売や詐欺に遭わないためにも、本人だけで財産の管理をするのではなく、家族や成年後見制度を利用しましょう。

車の免許を返納するタイミング

高齢者ドライバーの交通事故が増えています。警察庁では、運転免許の更新時に75歳以上を対象に認知症チェック、必要があれば医師の診断書の提出、そして認知症と認められれば免許停止・取り消しとなります。

年々、自主返納する人も増えています。運転免許の返納を行うと、「運転経歴証明書」を申請することができます。運転経歴証明書は、本人確認書類として使用できます。

また、運転経歴証明書を提示すると、バス・タクシー・電車などの運賃が割引されたり、高齢者運転免許自主返納サポート協議会の参加施設・団体から特典を受けることができます。

家族が自主返納を勧めても、公共の交通手段がなかったり、本数が少なかったりと他の交通手段が見つからないため返納に応じない人や、「まだ大丈夫」「私は大丈夫」と思っている人が危険です。しかし、家族が協力する、介護タクシーを利用する、行政のサービスを活用するといった代用の方法を準備すること、事故が起きてからでは遅いことを根気よく説明することが重要です。



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