認知症高齢者への接し方:③徘徊への対応

認知症の人における徘徊とは?

認知症になると、記憶障害(新しいことが覚えていられない)、見当識障害(時間、場所、人物を正しく認識することができない)、判断力の低下などの症状がみられます。そのため、自分がどこに行こうとしていたのか分からなくなってしまう、自分のいる場所が分からなくなってしまう、今いる場所がどこなのか、道順を人に聞くといった判断ができなくなります。その結果、より一層パニックになり、どんどん遠くまで行ってしまう場合があります。

例えば、家の中で徘徊している場合は、トイレの場所が分からなくなり、間に合わずトイレ以外の場所で排せつしてしまったり、自分の部屋が分からなくなる、もしくは眼鏡を置いた場所が分からなくなったために家の中を歩き回る、などがみられます。

また、長年の習慣から、「仕事に行ってくる」「畑に収穫に行かなきゃ」といって出かける人もいます。

そして、今までできていたことができなくなる、もの忘れが多くなることへの不安や恐怖により、徘徊が起こる場合があります。

このように、認知症の人の徘徊は、何かしらの理由があります。徘徊時の対応として、その理由を理解することが大切です。

徘徊は止められるのか?

徘徊を無理に止めようとして、玄関に鍵をかける、家から出られなくするのは、ストレスが溜まり、逆効果になる場合があります。

徘徊の原因を見極めて、不安やストレスを和らげることから始めましょう。

徘徊した場合、どう対応したらいいのか?

本人が行きそうな場所、馴染みの場所など見当をつけて探しましょう。時間が経てば経つほど、行動範囲が広がり、家族だけで探すのが難しくなります。お住まいの市区町村で行われている探索システムや、GPSの貸し出しなどを利用しましょう。 また、今日の服装を覚えておき、徘徊時に警察や近隣への協力をお願いする時に伝えましょう。

以下のような自治体で行われているサービスもあります。

①位置情報確認の端末機を貸し出し、認知症の人に携帯してもらいます。所在が分からなくなった時に、位置情報検索を行い、確認を行うシステムがあります。

②QRコードを衣服などにつけておき、発見した人がQRコードを読み込み、居場所や状態を入力できるようになっています。家族は、発見した人がQRコードを読み込んだ時点で連絡を受ける仕組みになっており、掲示板で情報を読み取ることができます。そのため、発見した人も家族も個人情報を開示することなく、情報を共有することができます。

③徘徊した人の家族が、市区町村窓口や最寄りの警察に連絡すると、SOSネットワークの利用ができます。警察は、捜査協力関係機関への発見の協力を依頼します。関係機関が発見した場合は、警察に連絡をします。

近隣住民やよく行く店や顔なじみの店などにあらかじめ協力を得ることも大切です。「どちらにお出かけですか?」などさりげなく声をかけてもらいましょう。「近所や地域の方々に迷惑をかけてはいけない」と思うのではなく、協力してもらいましょう。

徘徊を予防する工夫とは?

なんとなく外に出たいような動きや、家の中を動き回るような行動がみられた場合は、一緒に散歩に行く、買い物に行くのも効果的です。外に出ることで気分転換になります。

また、お茶やお菓子を食べるように誘ったり、好きなテレビ番組を録画しておいて一緒に観るなど、気をそらすことも大切です。

その他、介護保険を利用して、週何日かデイサービスに通うのも効果的です。デイサービスでは、レクリエーションや体操など様々なプログラムがあります。身体を動かすことで、心地よい疲労が感じられ、夜眠れる場合もあります。

徘徊した後に気をつけることは?

徘徊は想像以上に動き回るため、体力の消耗が著しい場合があります。特に、夏や日中は脱水を起こす恐れがあります。

そのため、家族が探しに行く・お迎えの際は、水分や栄養が摂れるように準備しておきましょう。また、お迎えの際のタクシー代などのお金も準備しておくことが大切です。

注意したいこと

認知症の人の衣類や持ち物に家族の連絡先を記載することは、発見してもらったときにすぐに連絡をしてもらえるというメリットがあります。しかし、個人情報を開示することにもつながるため、記載方法や記載場所には十分配慮しましょう。



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