認知症の予防と治療:⑤認知症の予防

この記事の目次
  1. 認知症は予防できるのか?
  2. 軽度認知障害(MCI)を診断はどうやって行うのか?
  3. 認知症の予防に役立つ日常の心がけは?
  4. 生活習慣病とは?
  5. どんな食事が効果的なのか?
  6. どんな運動が効果的なのか?
  7. 日常生活を楽しみましょう

認知症は予防できるのか?

アルツハイマー型認知症の前段階の状態を軽度認知障害(MCI)と言います。MCIは、日常生活に支障のない人と認知症の人の中間だと考えられています。もの忘れは本人も家族も訴えており、記憶力も低下していますが、日常の生活への影響はない状態です。

軽度認知障害(MCI)って何?

軽度認知症害(MCI)からアルツハイマー型認知症に移行する割合は年間10~15%程度と言われています。しかし、軽度認知障害(MCI)の全員が認知症になる訳ではありません。軽度認知障害(MCI)の時点で、食事や運動、日常生活の見直しをすることで、認知症の発症を抑えたり、症状の進行を緩やかにすることが出来る場合があります。

アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)って治せるの?

軽度認知障害(MCI)を診断はどうやって行うのか?

軽度認知障害(MCI)の診断は、アルツハイマー型認知症と同様に、医師による問診やテスト、必要時にはMRIやCTによる脳の検査を行います。最近では、軽度認知障害(MCI)の早期発見の方法のひとつとして、血液検査でも行えるようになりました。健康診断をお受けになる際に、かかりつけ医に相談してみても良いでしょう。

もちろん、ひとつの検査だけで判断するのではなく、総合的に医師が判断します。

認知症の予防に役立つ日常の心がけは?

認知症になる前段階である軽度認知障害(MCI)の時点から、積極的な働きかけが重要です。

運動・食事などの日常生活の見直すこと、現在、高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満などの生活習慣病の予防・改善を行いましょう。

生活習慣病とは?

生活習慣病とは、厚生労働省によると、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と言われています。

例えば、塩分の多く含まれた食事を続けると高血圧になりやすい、暴飲暴食や寝る前に食事を摂ったり運動不足により肥満になりやすい、コレステロールや脂質が多く含まれた食事を取り続けることで脂質異常症になりやすい、そして動脈硬化を起こし、血糖値の高い状態が続くと糖尿病になりやすいと言われています。

食事、運動、休息、喫煙、飲酒などの生活習慣を見直すことで生活習慣病の要因を予防・改善します。その結果、認知症の予防にもつながります。

これから、具体的な生活習慣の見直しの方法を説明します。

どんな食事が効果的なのか?

食事を摂る際に、時間に追われて噛むことを意識していない場合もあるかもしれません。認知症の予防には、かむ刺激が良いと言われています。かむことで記憶や学習に関わる部分に刺激が伝わり、記憶力や学習能力が向上します。また、脳を活性化させる働きもあります。そして、かむことによって食事の時間が長くなります。食べ始めてから満腹感を得るまでには20分程度かかると言われています。そのため、ゆっくり食べることは満腹感を得られ、食べ過ぎを予防します。

食物繊維が多く含まれている食材を摂ることや食材を少し大きめに切ることでかむ回数を増やすことにつながります。

人間にとって1日に必要なエネルギー量は決まっています。食べ過ぎると、必要エネルギー以上に摂取してしまい、消費できない分は身体に脂肪として溜まります。それが内臓脂肪となり、肥満につながります。

食べ過ぎを予防するためには、『腹八分目』が大切です。量を減らすだけでなく、野菜やこんにゃく、海藻、きのこ類を上手に使い、かさを増やしましょう。そして、食べる順番を野菜から食べてみましょう。食物繊維は、満腹感を得るだけでなく、血糖値の上昇も緩やかにする働きがあると言われています。

そして、食材はバランスよく食べることが重要です。1日3回、規則正しい時間に食べましょう。特に、就寝3~4時間前には食事を終わらせることが理想です。

油や乳製品に含まれている飽和脂肪酸は、中性脂肪やコレステロールを増やし、摂り過ぎは動脈硬化につながると言われていますので、注意しましょう。また、和食はどうしても塩分の摂り過ぎになりやすいです。突然、薄味に慣れるのは難しいですから、出汁やスパイス、酸味を活用して、調理の工夫をしてみましょう。

どんな運動が効果的なのか?

運動には、有酸素運動と無酸素運動があります。

有酸素運動は、20~30分程度続けられる強度の運動で、身体の脂肪を燃やします。そのため、酸素が必要になります。例えば、ウォーキングや水泳、ランニングなどがあります。

無酸素運動は、瞬発的に強い力を出す運動で、筋肉をつけるのに最適な方法です。例えば、筋肉トレーニングなどです。筋肉をつけることで、基礎代謝量が増えて、太りにくい身体になります。有酸素運動と無酸素運動は、運動することによって得られる効果が違います。その結果、肥満の予防、筋肉を動かしたり、全身の血流が良くなることで、脳細胞を活性化します。

手軽に始められるのは、ウォーキングです。効果的な方法をご紹介します。

①運動する前後には、脱水予防の水分摂取とけがを予防するために準備運動を行いましょう。
②背筋を伸ばし、10メートル先の地面を見るイメージで歩きましょう。
③けがの予防のためにウォーキングシューズを履きましょう。かかとから着地して、つま先で地面を蹴りましょう。
④肘を曲げて軽く腕を振りましょう。腕を振ると、だんだん気持ちよく、楽しくなります。
⑤運動をする時間は、1回20~30分程度として週に3回程度、継続しましょう。
⑥誰かと一緒に会話をしながら歩くペースが適切な速さです。息が上がってしまうのは、速すぎます。
⑦ウォーキングしながらしりとりを行ってみましょう。2つのことを同時に行うと、脳と身体の両方を鍛えることができます。最初は、どちらかに気をとられてしまうかもしれませんが、慣れていくことが大切です。

忙しくて時間が取れない…と思われている方には、ちょっとした時間を使って運動してみましょう。例えば、家事をしながらかかとの上げ下げを行う、テレビを観ながら椅子に座って足踏みをする、駅のエレベーターやエスカレーターを使わずに階段で移動する、職場のフロアの移動は上下2階までは階段を使うなど、様々な方法があります。日々の生活の中からちょっとした運動を見つけて実践してみましょう。

日常生活を楽しみましょう

楽しいこと・好きなこと・熱中していることをしている間は、脳の伝達物質である「ドーパミン」が増えています。ドーパミンが増えると、快感をもたらし、集中力が増します。また、記憶などの認知機能を高めます。その結果、肯定的な感情が高まり、またやりたい、続けたいという意欲がわき、積極的になります。

また、ストレスを溜めないことも重要です。頑張りすぎずにリラックスしましょう。友達とおしゃべりをすることは、話を聞く、話をする、その場に適した対応をする、などかなり脳を活性化させています。そして、外出をすること自体、集合場所を確認する、集合時間に着くように出発時間や家で出かける準備をする時間を逆算する、といった行動は、日頃は何気なく行っていても、認知症になるとできなくなるとても高度な能力です。

そして、日中刺激のある生活をすると、夜ぐっすり眠れます。または、夜寝る前にリラックスできる環境を整えましょう。このように、規則正しい生活習慣に整えることが大切です。

参考文献:1)広川慶裕 認知症は予防できる 河出書房新社,2018,p66~114
2)今井幸充 認知症を進ませない生活と介護 法研,平成27年,p72~137
3)朝田隆 まだ間に合う!今すぐ始める認知症予防 講談社,2014,p32~85



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