厚労省、6月1日付で認知症薬の少量投与を容認へ
抗認知症薬の使用規定に対して、厚生労働省は、5月31日までに添付文書で定めた規定量未満での少量投与を容認し、周知することを決めた。
抗認知症薬の使用規定とは?
認知症の進行を遅らせる抗認知症薬には、1日1回3mgから開始し、副作用の有無を観察した上で、一定期間後に1.7~4倍まで増量する使用規定がある。
しかし、規定通りに投与すると、怒りっぽくなるなどの副作用が頻発しているとして、高齢者医療に携わる医師らが指摘。
一方で、医師の判断で減量処方すると診療報酬請求が認められず減点され、実質的に医師が負担するという問題が起きていた。
この問題に対し、適量処方を推進する団体「抗認知症薬の適量処方を実現する会」を設立し、医師の裁量で患者に合った用量で使用できるよう求めていた。
6月1日付けで規定量未満の投与も薬剤費を支払うよう求める
厚労省は6月1日付で各都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)の中央会と、社会保険診療報酬支払基金宛てに、規定用量に未満の投与も、一律に査定するのではなくレセプト(診療報酬明細)に記載された症例に応じて薬剤費を支払うよう求める事務連絡を出す。
医師の見解は?
今回の抗認知症薬少量処方の容認に関して医師からのコメントは下記の通り。
今回の厚労省による、抗認知症薬の規定量未満での少量投与容認は、認知症治療にとって歓迎すべき決定であり、薬物療法を根本から考え直すだけのインパクトがあります。
認知症は発症する前に或いは、発症しても進行しないようにするためには可能な限り早期発見・早期治療が必要になります。
ところが、ごく初期の認知症治療を行う際、定式通りの薬物量を投与すると、多くの患者において、副作用(吐き気、めまい、頭痛、歩行困難など)があります。
このような場合、ごく少量の抗認知症薬、例えばアリセプトなら1mgから投与を開始し、当該患者の至適容量を勘案しながら暫増することができれば副作用を抑え、且つ、治療効果を最大限にあげられるという、メリットが期待できます。
さらに副作用により服用中止を回避できることから、発症を予防することも可能になります。このようなことから、今回の容認は認知症治療にとって画期的な判断だと考えます。
(ひろかわクリニック院長 広川慶裕先生)
(画像はイメージ)
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