【広川先生のMCIコラム(第2回)】早く気づけば認知症にならない!?~実際にあった早期発見の事例①~

2015年10月9日
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この記事の執筆
広川慶裕先生
ひろかわクリニック院長
広川慶裕先生

はじめに

前回のコラムでは認知症にならないためには、認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)期に気づくことが大切だというお話をしました。今まで問題なく出来ていたことが少し考えないと出来なくなったとか、いつもと違う物忘れの仕方をした等、「あれ?何かいつもと違う」という不如意感を感じたら念のために検査を受けることをお勧めしました。

当院にも「物忘れが気になる」「人の名前が思い出せない」「置き忘れが多くなった」などの症状を自覚するようになり、認知症になるのではないかと心配になりMCI検査を希望して来院される方が増えています。ただ最近、当院に来院される患者さんの傾向が少し変わってきています。

「物忘れが気になり、他院で検査を受けてMCIと診断されたが、『MCIは認知症ではないので今は何もできません。またしばらくしたら様子を見せに来てください』と言われた。しばらく放置していたら認知症になってしまうと不安になり、いてもたってもいられずに来院した。」という方が増えているのです。

認知症にならないようにMCIの段階で早期発見し予防したい、と検査を受ける方が増えているのは望ましいことですが、その一方で診断された後の対応によっては、逆に不安がつのる結果になってしまっていることがあるようです。

今回は、当院で実際にあったこのような事例をひとつ紹介してみたいと思います。

事例(1)「MCIと診断されたが現時点では治療方法はないと言われた」という主訴で来院した57歳男性

1.初診時 ~不安な面持ちで来院~

Aさん(57歳の男性)は奥様と一緒に来院され、不安な面持ちで診察室に入って来られました。「どうされましたか?」と聞くと、Aさんは「気になることがあったので、医療機関で頭の検査をしてもらいました。検査の結果、『認知症の前段階でMCIです。1年後には認知症になる可能性があります。ただ、今の時点では認知症ではないので何もできません』と言われました。先生は焦る様子もなく、『また1年後に様子を見せに来てください』と言われました」と言うのです。

Aさんは1年後に認知症になる可能性があると診断されたにも関わらず、今は何も治療(対処)されないことに不安で押しつぶされそうになっていました。Aさんは会社に勤めています。最近、手帳を開いて書こうと思った瞬間に何を書こうとしたのか分からなくなるということが数回続いたそうです。また、半年前に会った人のことが全く記憶になく、思い出すこともできなかったとも言います。

奥様の話によると、Aさんは以前から物忘れがあり、財布や手帳を忘れることは頻繁にあったそうです。ただ、Aさん本人は最近特に「何かおかしい」と不如意感を感じ、勇気を振り絞って検査を受けたのです。

このようなAさんの来院の経緯や物忘れの状態を丁寧に聞き、当院でもしっかりと検査を行いました。検査は2つの画像検査「MRI(脳の状態検査)」「SPECT(脳血流シンチグラフィ:脳の血流状態検査)」と、質問形式の神経心理検査「MMSE」の全部で3種類です。

検査結果をみると、画像検査では年齢比以上の側頭葉内側部及び海馬領域の萎縮、頭頂葉及び?前部領域の血流低下が認められました。MMSEは30点(30点満点)という結果でした。本人と奥様からの問診及び、検査結果を総合的にみた結果、Aさんは認知症の前段階であるMCIであると診断しました。

Aさんご夫婦には検査結果をひとつずつ説明し、今後の治療方針(先制的予防治療)をお伝えしました。MCIは認知症の前段階ではあるが、決して認知症ではないこと、今から予防的な治療や対策を開始すれば、認知症になることを防ぐことが出来る可能性は十分にあることをお伝えました。

Aさんご夫婦の表情はこのとき漸く穏やかになっていました。MCIと診断されたことが不安なのではなく、このまま認知症になるのを何もせずに待っているだけなのかということにとても不安を抱いていたとAさんは話されていたのを印象深く覚えています。

2.早期の対策

Aさんの治療は、まずは極少量の抗認知症薬を服用してもらうことから開始しました。現在、抗認知症薬は4種類あるのですが、認知症の種類や個々人の体質によって薬を使い分ける必要があります。例えば「認知症=アリセプト処方」としてしまうのはとても危険なことだと私は思っています。薬が本人に合っていない場合、認知症の周辺症状に近い焦燥感、易怒性の出現など、却って物忘れ症状を強くしてしまうことがあるからです。

Aさんの場合、私はレミニール4mgを選択したのですが、副作用等がないことを確認したかったので所定の初回量の2錠ではなく、まずは半錠を1日1回処方し、2週間後に再度、診察に来てもらいました。2週間後、診察に来られたAさんは薬の副作用等はないが、会ったことがある人のことをまた覚えていなかったと大変気にしていました。

薬を飲み始めたからといってすぐに記憶が戻ったり、物忘れが減ったりすることはないので、気長にリラックスしてやっていきましょうとお伝えしました。薬の副作用はないとのことだったので、レミニール1錠を処方し経過を見ることにしました。

1か月後、診察に来られたAさんは、最近、少し怒りっぽくなったと言います。レミニール4mgを1錠処方にしたことで薬の副作用が出てきたのです。この日からすぐに薬をメマリー5mgの半錠2.5mg処方に変更し、以降現在まで経過は順調で、表情も明るく余裕すら感じるようになりました。

「さじ加減」という言葉がありますが、まさしく薬を処方する際はその「さじ加減」が大切です。製薬会社からは薬を処方する際の所定量というものが示されているのですが、その所定量では患者さんによっては副作用が出てしまうことがあるのです。MCIの時期では特にどの薬をどのくらい使用するのかということが非常に重要になってきます。

3.その後 ~Aさんの現在~

Aさんご夫婦が不安な面持ちで来院されてから約1年が経過しました。Aさんの最近の様子は、またポッカリ忘れるのではないかという不安はあるが、忘れていても思い出す努力をしたり、メモを取ったり、一つ一つの動作を意識的に行うようにしたりという生活を心掛けているそうです。それでも忘れることはあるが、以前よりは減っている、思い出せることが増えたと感じるので、まぁよしとしよう、と思うようにしていると笑顔で話されていました。

おわりに

物忘れが気になり、脳ドックや認知症検査を受ける方が増加している一方、Aさんのように検査を受けたことで逆に不安が大きくなってしまうという方も増えるのではないかと、最近少し危惧しています。

MCIと診断されたからといって必ず認知症になるとういことではありません。このままだと認知症になる可能性があるよ、とくらいに考え、極端に不安を抱く必要はありません。まずは日常生活の中で、ご自身でできる認トレ(認知症予防トレーニング)を行うこと、食生活を見直すこと、さらにサプリメントを活用する等によって認知機能は現状維持、もしくは改善することができます。思い悩まずに楽しく笑顔で認知症予防に取り組んでいきましょう。喜樂に喜樂に生きましょう。

広川先生のクリニック情報

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●ひろかわクリニック(宇治駅前MCIクリニック)

京都府宇治市宇治妙薬24-1 ミツダビル4F
TEL:0774-22-3341(月-金:9:30-17:00)
http://www.j-mci.com/

●品川駅前脳とこころの相談室

東京都港区高輪3-25-27 アベニュー高輪603
(「品川駅前郵便局」が入っているビルの6階)
TEL:03-6459-3201(月-金:9:30-17:00)
※相談時間以外は転送され、担当者が対応いたします。
http://www.j-mci.com/tokyo/shinagawa.html

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