【広川先生のMCIコラム(第1回)】MCI(軽度認知障害)期で気づくことが大切

2015年9月10日
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この半年、テレビや新聞などのメディアでは連日のように「認知症予防」についての情報発信があり、多くの方が「認知症は予防できる」ということを知るきっかけになりました。
一方、その影響もあり、今まで気にならなかった“物忘れ”を気にするようになり、「私は認知症ではないだろうか?」と不安になって来院される方が大変増えました。来院された方の多くは、日々の忙しさや疲れによる注意力の低下を要因とした“物忘れ”なのですが、中には“認知症過程にある物忘れ”と診断せざるを得ない方もいます。
さらにそのように診断した方の中には、改善が可能なレベルの初期段階である方から、もうすでに認知症が進行しており、治療が届きにくくなっている方までいます。同じ物忘れという訴えで来院された方でも、気づく時期によって状態が大きく違っているのです。
物忘れが気になり始める時期は人それぞれで、“気づく時期”によってその後の人生が大きく変わってしまうのです。

この記事の執筆
広川慶裕先生
ひろかわクリニック院長
広川慶裕先生

1.認知症には「前段階(予備軍)」といわれる時期がある

すでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、認知症過程には認知症前段階(予備軍)である「MCI(軽度認知障害)」と呼ばれる時期があります。

MCIは病気ではなく、認知機能が軽度に障害された状態を意味し、多くは認知症を発症する15年ほど前からMCI状態にあると言われています。この状態は、多少の物忘れはあるものの、日常生活には全く支障がないレベルの機能低下であるため、年齢相応のものであろうと放置されるケースがほとんどです。

認知機能と時間の経過

2.MCIの診断基準

MCIには下記のような診断基準(Mayo ClinicのPetersenらが提唱)があります。

1)自覚的あるいは、他覚的に認知機能低下の訴えがある
2)認知機能は正常とは言えないが、認知症の診断基準を満たさない
3)複雑な日常生活動作に最低限の障害はあっても、基本的な日常生活機能は正常

この診断基準からも分かるように、MCIはやはり認知症ではありません。

ただ、何をもって「認知機能は正常とは言えない」と判断するかが非常に難しく、一般的に物忘れ外来などの医療機関では、神経心理検査(MMSEや長谷川式簡易知能評価スケールなど)を用いて評価します。これらの評価スケールは30点満点で、MMSEであれば23点以下なら認知症、24点から27点はMCI、28点以上は正常と評価します。

しかし、当院に来院される方の中には、MMSEが30点満点でも画像検査をすると海馬萎縮や脳血流低下が認められ、MCIと診断するケースが実に多くあります。つまり、MCIの診断基準や神経心理検査だけでは認知機能が正常であるかどうかという評価(診断)はできない、というのが毎日多くの患者さんを診療していて感じる私の印象です。

このようなことから当院では、“物忘れ”や“認知機能の低下”を主訴として来院された方は、たとえMMSEや長谷川式が30点満点であっても、問診においてMCIの疑いありと判断すれば、画像検査(MRI、脳血流シンチグラフィ)を行い、MCIを見逃さないよう細心の注意をはらっています。

3.なぜMCI期に気づけば認知症にならないのか?

認知症(アルツハイマー型認知症)は脳内にアミロイドベータ(Aβ)が蓄積することで神経細胞が障害され、認知機能が低下するといわれていますが、このAβを排除する方法は現在まだ実用化されていません。ただ、MCI期はこのAβがまだ完全に蓄積された状態ではなく、神経細胞の障害が少ないと考えられます。

この時期に認知症予防トレーニングやサプリメントの活用等により脳血流を改善することで脳内環境が良くなり、認知症予防の効果が高まりまると考えています。実際、当院ではMCIと診断された方のほとんどが約半年から1年で正常範囲にまで脳血流が改善し、認知機能が戻っています。

しかしながら、MCI期を過ぎてしまってから認知症予防や治療を開始した方は、認知機能の現状を維持するのが精いっぱいで、回復するのはなかなか難しいという印象です。

4.MCIに気づくポイント

では、どうしたら「認知症過程にあるのではないか?」「MCIではないか?」と気づくことができるのでしょうか。ポイントは、「不如意感」です。

「不如意感」とは、「あれ?いつもと何か違う」という感覚です。今まで問題なく出来ていたことが少し考えないと出来なくなったとか、いつもと違う物忘れの仕方をした、というときは要注意です。念のために検査を受けることをお勧めします。

おわりに

物忘れを主訴として来院される方は皆さん、「このまま認知症になるのですか?」と尋ねてこられます。私は早期に発見し、早期に予防策を講じれば認知症になる可能性は極めて低いし、発症するとしても通常よりかなり緩やかなスピードで発症するでしょうとお答えしています。

ただ、これは何度も言いますが「早期に発見」した場合です。それほど、認知症は早期発見が大切なのです。

次回からは、MCIを早期発見し、さまざまな予防・治療策で認知機能が改善した事例をいくつか紹介していきたいと思います。

広川先生のクリニック情報

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●ひろかわクリニック(宇治駅前MCIクリニック)

京都府宇治市宇治妙薬24-1 ミツダビル4F
TEL:0774-22-3341(月-金:9:30-17:00)
http://www.j-mci.com/

●品川駅前脳とこころの相談室

東京都港区高輪3-25-27 アベニュー高輪603
(「品川駅前郵便局」が入っているビルの6階)
TEL:03-6459-3201(月-金:9:30-17:00)
※相談時間以外は転送され、担当者が対応いたします。
http://www.j-mci.com/tokyo/shinagawa.html

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