早期発見で認知症を予防!広川慶裕先生インタビュー

2015年6月12日

現在の医療技術では、認知症は一度発症してしまうと、根本的な治療は難しいといわれています。しかし認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)の段階で早期発見をし、適切な改善療法を行うことで、認知症を予防・改善の可能性が高まるということがわかってきました。

そこで、認知症ねっとでは、2014年に京都・宇治と東京・品川に認知症予防(MCI)専門クリニック/相談室を開院され、認知症・MCIの早期発見・早期治療に精力的に取り組まれている広川慶裕先生にインタビューをお願いしました。

話し手
広川慶裕先生
ひろかわクリニック院長
広川慶裕先生
この記事の目次
  1. MCIとは何?
  2. MCIはどのくらい数がいる?
  3. MCIの早期発見はなぜ大切なのか?
  4. MCIに自覚症状はある?
  5. MCI検診どの病院に行けば良い?
  6. .MCI検診はどのようなことをする?
  7. MCIは治療できる?
  8. MCIはどんな治療をする?
  9. 食事(栄養療法)
  10. 認トレ(運動トレーニングと脳活トレーニング)
  11. サプリメントの服用
  12. 家族療法
  13. MCIから回復した事例
  14. MCIと診断されたら職場に伝えるべき?
  15. MCIに関する医療体制の今後について

MCIとは何?

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―――まずMCIとはどういったものなのか、先生の定義を教えてください。

広川先生)定義が非常に難しいのですが、現在のところ3つの要素があると考えています。
1.自覚的なもの忘れがある 
2.認知症ではない(日常生活に支障がない) 
3.もの忘れが年齢の平均的なものよりもひどい状態にある。
この3つが揃ったときにMCIだと考えています。

MCIはどのくらい数がいる?

―――MCIは現在厚労省で420万人と推計がいわれていますが、先生はこの数字は正しいと思いますか?

広川先生)厚労省発表の人数については、まったく正しくないと思っています。もっとずっと多いと考えています。
一昨年、宇治市で40歳以上80歳未満のもの忘れが気になっている方200人を対象に、データを取らせてもらいましたところ、結果、所見無しは10%しかいませんでした。90%はなんらかの所見があり、その内訳は、20%が既にアルツハイマー型認知症で、残り70%の人はMCIとプレMCIでした。
私自身は、MCIとプレMCIは国内だけで認知症とは別に、1,000万人いると考えています。

―――プレMCIについても教えてください。プレMCIとはどんな状態のことですか?

広川先生)MCIの予備軍のことです。私の定義では、MMSEが28点以上、脳のMRIで海馬の萎縮または特定部位の脳血流の低下がある人を指します。

MCIの早期発見はなぜ大切なのか?

―――MCI、プレMCIの段階で早期発見することの大切さを教えてください。

広川先生)MCIやプレMCIはこれから認知症になっていくかどうかの分かれ道です。
ずっとMCI段階でとどまる人もいますし、認知症に進行する人(コンバーター:MCIと診断された方は5年後には約半数の人が認知症に進行すると言われている)もいます。逆に健常者に戻る人(リバーター)もいます。
MCIやプレMCIはこの3つの分岐点の通過点になります。ここをきっちりと抑えることで、認知症に進行することを抑えられるため、重要になります。

―――もしMCI、プレMCIの段階で早期発見をでき、適切な改善策を打てれば認知症は予防できるのでしょうか?

広川先生)はい、そう思っています。現に、私のクリニックでは、MCI段階で早期発見して、適切な対策をすれば、ほとんど認知症に移行しません。

―――早期発見して早期に対策をすれば、ほとんどコンバーターがないというのは、非常に希望に溢れる話だと思います

広川先生)その通りです。さらにコンバーターになる人は元々MMSEで点数が低く、すでにそれなりの萎縮や血流低下のある人です。そこまで進行していなければ、ほとんどコンバーターになりません。

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MCIに自覚症状はある?

―――なかなかMCI段階で病院に来ることが難しいと思っているのですが、どのような症状(もしくは自覚症状)が出たら病院にいけばよいのでしょうか?

広川先生)これが非常に難しいです。僕自身は「不如意感」、つまり「あれ、いつもと違う」と思ったら、まずは受診をしてほしいと考えています。
症状としては、1不如意感→2物忘れに気づく→3物忘れを自覚しなくなる の3段階があります。段階が進むと、物忘れがあるという感覚から、物忘れしていないという感覚になっています。

―――3段階目になったらもう遅いのでしょうか?

広川先生)その段階でも適切に対処すれば、物忘れの自覚を取り戻すことができます。つまり「物忘れがひどくなった」という感覚に戻るといった事例もあります。

MCI検診どの病院に行けば良い?

―――MCI検診をしたいときにどういった病院に行けばよいのでしょうか?選び方を教えてください。

広川先生)行く病院はどこでもよいのですが、MCIと診断された後が重要です。
MCIの診断があっても多くの病院では、放置されてしまうことがあります。これは、その状態ではまだ治療する必要がないと考えられているからです。

先月も当クリニックに、2人の方がMCI検診に来られました。その方々は、大阪の名のある病院でMCIと診断されましたが、そのとき医師に「あなたは1年後には認知症になっているので、そのときにまた来てください」と言われたとのことです。

―――なぜ、そのようなひどいことが起こっているのでしょうか?

広川先生)MCIを知らなかったり、どうしたらよいかわからない医者がまだ多いためです。だから、私自身はそこを啓蒙する意味でも、書籍を書いています。
MCIと診断されたら、当クリニックに来てくれてもよいですし、本を読んで、認トレをしたり、サプリメントを飲んだりするだけでも改善します。

―――MCI段階で飲める薬もあるのですか?

広川先生)あります。

―――それはアリセプトですか?

広川先生)アリセプトは強すぎるので、もっと症状が進んでからの方がよいと思います。メマリー、レミニール、リバスタッチが良いと思います。
ただ通常の初回投与量でもその量は多すぎるので、半分以下の処方が良いと思います。

―――一番の問題は、MCIの診断をできる医者が少なすぎることでしょうか?

広川先生)そうです。徐々に変わりつつありますが、まだまだ時間がかかります。

―――病院は何科に行くのが良いのでしょうか?

広川先生)精神科は避けたほうが良いと思います。私自身も精神科医ですが、精神科は認知症の中でも重症例を扱います。神経内科か心療内科がよいでしょう。

.MCI検診はどのようなことをする?

―――実際に病院、クリニックではどのような検診をするのでしょうか?

広川先生) 基本的なメニューとしては、問診と神経心理検査です。最初に問診をして、医師の判断で神経心理検査(MMSE、MoCA-J、長谷川式)を行います。
総合的に判断して、MCI認知症の可能性があると判断すれば、画像検査として、MRI,CT,SPECT(脳血流シンチグラフィー)等を行います。

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MCIは治療できる?

―――実際にMCIと診断されるのが怖いという方も多いと思うのですが、もしMCIと診断されても治るのでしょうか?

広川先生)私自身は治ると信じて治療をしていますし、経験的には相当良くなっています。
私のクリニックでは、この約1年間で、物忘れが気になるという主訴の方が約350人が来院し、うち約200人がMCI(Pre-MCI含む)でしたが、認知症に移行した人は、ほぼ0です。
MCI検査の点数で、23点くらいの人でもさらに悪くなる人はいませんでしたし、20点程度から28点以上に改善した人は、多くいました。

―――希望に溢れるお話です。MCIと診断されても、勇気を持って改善に取り組むことが大切だということですね。

広川先生)その通りです。だからこそ、MCI段階での早期発見が非常に重要だと思っています。

MCIはどんな治療をする?

―――先生のクリニックではMCIと診断された方に、どのような治療をされているのでしょうか?

広川先生)認知症もMCIも、原因は生活習慣からくると考えています。そのため、生活習慣を改善するための、5つの方法を指導しています。

1.食事(栄養療法)、2.認トレ(認知症予防トレーニング)、3.サプリメントの服用、4.薬物療法、5.家族療法の5つです。

食事(栄養療法)

よく言われることですが、和食を中心にします。高たんぱく、低脂質、低カロリーが重要です。
低脂質といってもとらなくてはいけないものもあります。油は何が何でもだめということではなく、オメガ3系や、9系は重要。DHAやEPA、特にDHAは重要です。

―――最近よくえごま油やココナッツオイルがテレビで紹介されていますが効果はありますか?

広川先生) 効果はあるのですが、効果を出すためには、長期的に摂取しなければダメです。最近はブームになっているため、取り入れる人が増えましたが、続けないと意味はありません。生活習慣化することが重要です。実際に私は毎朝えごま油をスプーン1杯飲むことを習慣化しています。

これは、栄養に限らず、例えば車移動が多い人は、歩くことを増やしたり、エレベーターではなく、なるべく階段を使うようにしたりするなどが重要です。運動トレーニングする際でも、あえてジムに行くのではなく、普段の生活でできる生活習慣を作ってほしいと思います。

認トレ(運動トレーニングと脳活トレーニング)

脳活は実はなんでも良いのです。
一番良いのは音読だと思っています。どんな本でも良いのですが、新聞のコラムや、NHKのラジオ講座の語学でも良いと思います。音読は見る、判断する、声に出す、耳に入って正確さを確認する、という4段階があります。

さらにレベルを上げるならば、書きながら音読すると良いと思います。書くときは、さらさらっと字をごまかして書かず、楷書できれいに書きます。点の位置やはねる部分、止める部分をきちんと意識して書くことで脳が活性化されます。また、ごまかして書くと、正確に書かなくてはいけないときに、あれ?となってしまいます。

―――最近楷書で書いていないので気を付けます(笑)

サプリメントの服用

サプリメントで栄養を補い、脳細胞のエネルギー産生(ATP)を高めることも大切です。エネルギー産生を助けるための必要な栄養素を効率的に摂取するために、当クリニックではATPサポートというサプリメントを使用しています。

大量のビタミンが入っているのですが、これまで点滴として打っていたものをバランスよくサプリメントにしています。

家族療法

MCIと診断されると、大きな不安を抱くご家族が多くいます。ご本人の現状とこのままでいるとどうなる可能性があるかということ、これからどうすれば改善できるかを正しく理解し、協力してもらえる体制を整えます。

認トレには家族の協力がいないとできないこともあります。また、家族療法を行うことで、当事者の安心に繋がります。

training02 training01 ひろかわクリニックでは毎週土曜日に「認トレ教室」を開催している。

MCIから回復した事例

―――MCIと診断されてから回復された方の事例を教えてください。

広川先生)76歳の理髪店のオーナーの事例についてお話しましょう。
物忘れや、手の震えなどの症状が見られたので、問診や検査をしたところ、MCIの所見があり、MMSEは24点、MRI、SPECTの結果も芳しくなく、このままでは、アルツハイマー型認知症に移行する可能性が高く、すぐに5つの療法を行いました。半年後、MMSEは28点に改善し、SPECTでも血流が改善していました。また、日常生活でも現役時代に戻ったと周囲の人に言われるくらいまで回復しました。

この5つ療法のうち、どれか1つが欠けても効果は不十分なので、しっかり改善を求めるのであれば、すべてを丁寧に取り組む必要があります。健常者に戻れるかどうかは、自分がどれだけ真面目に療法に取り組むか次第なのです。

MCIと診断されたら職場に伝えるべき?

―――MCIは比較的若年でも発症するため、まだ現役で仕事をされている方も多いと考えています。もしMCIと診断されたら職場に伝えるべきでしょうか?

広川先生)家族には言うべきですが、職場には言わなくてよいと思います。ただ、もしMCIの段階でミスが目立ってきたら、職場に伝えて欲しいと考えています。仕事の負荷を減らすなど対策が必要なためです。

当クリニックに通われていた、ある方の例をあげましょう。
彼は、大手の会社で海外勤務をしていましたが、日本に帰ってきたときに何かおかしいと気づいて受診されました。40歳でMMSEは24点、かなり症状が進んでいましたので、上司に伝えてもらい、負荷の低い部署に異動をお願いしました。そして、5つの療法を行った結果、1年後、MMSEが29点まで回復しました。さらに、この4月から、また海外勤務に戻ることができたのです。

このように、もし上司の理解が得られるのであれば、負荷を減らすために、上司に言うことも大事です。当然伝えたことでリスクもあると思いますので、適切な対応をしてほしいと思います。

MCIに関する医療体制の今後について

―――少し大きな話になってしまいますが、アメリカでは健康診断におけるMCI検査の導入が進んでいるという話を聞きます。日本でもこの流れは今後出てくるのでしょうか?

広川先生)これは間違いなく出てきます。既に健康診断に、MCIの血液検査を導入しようという動きもあります。5年後には一般化されると思います。

―――なるほど。もしも5年後に健康診断でMCI検査が導入されたとして、次に起こる問題としては、医療側に受け皿があるのかどうかという問題が発生してしまうのではないかと考えています。先ほどのように、MCIと診断しても医療側で適切な対策をとれず、「MCI難民」が増えてしまうのではないかと危惧をしています。
実際にMCIと診断されても患者たちが安心して治療を受けられるようになるにはどういったことが大切でしょうか?

広川先生)結論から言うと、かかりつけ医が対応するしかないと思っています。

今現在1,500万人の認知症とその予備軍がいて、5年後には2,000万人になると言われています。これに対して今現在の医者は20数万人、うち開業医が15万人程度です。これらが全員認知症患者を診られるようにならないといけません。

そのためのシステム構築が急がれます。仮説の案でしかありませんが、専門医療機関で診断してもらって、薬のメニューも決めてもらい、実際の処方はかかりつけ医が行うという形になるしか方法はないと思います。

―――どうすればそういう世界が実現できるのでしょうか?

広川先生)これは啓蒙活動しかないと思います。かかりつけ医が十分な経験を積むことが認知症の発症を予防する強力な味方になると思いますし、かかりつけ医は積極的に協力してくれると信じています。

―――そういった先生がMCIをもっと知ろうとなるためにはどうすべきでしょうか?

広川先生)そこをやるのが「認知症ねっと」だと思いますし、大いに期待しています。

―――(笑)がんばります!本日はありがとうございました。


広川先生のクリニック情報


クリニック2 クリニック3 クリニック1

●ひろかわクリニック(宇治駅前MCIクリニック)

京都府宇治市宇治妙薬24-1 ミツダビル4F
TEL:0774-22-3341(月-金:9:30-17:00)
http://www.j-mci.com/

●品川駅前脳とこころの相談室

東京都港区高輪3-25-27 アベニュー高輪603
(「品川駅前郵便局」が入っているビルの6階)
TEL:03-6459-3201(月-金:9:30-17:00)
※相談時間以外は転送され、担当者が対応いたします。
http://www.j-mci.com/tokyo/shinagawa.html

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