発症から診断まで:④認知症が疑われるとき

この記事の目次
  1. 家族が「認知症かな?」という気がするけれど、病院に受診させたほうが良いのだろうか?
  2. 認知症かもしれない。誰に相談したらいいのか?
  3. 認知症かもしれない…家族はどう対応すればいいのか?
  4. どんな症状が現れたら認知症の疑いがあるのか?
  5. 長谷川式簡易知能評価スケールとは?
  6. 認知症と間違われやすい病気は?
  7. 認知症と意識障害の違いは?

家族が「認知症かな?」という気がするけれど、病院に受診させたほうが良いのだろうか?

正月やお盆に帰省した時や電話で話した時に、「なんとなく変だな?」「同じ話を何度もしているな…。」「元気がないような気がする…。」「認知症かな?」と感じる場合があるかもしれません。

尊敬してきた両親や配偶者が認知症であるかもしれないということを受け入れるのは時間がかかるでしょう。 しかし、認知症は、早期発見・早期治療がとても大切です。早いうちから、治療や介護を行うことにより、認知症症状の進行を遅らせたり、変化に応じて生活しやすい環境を整えていくことができます。

まずは、かかりつけ医に相談する、かかりつけ医がいない場合は、お住まいの地域の地域包括支援センターに電話にて相談することから始めましょう。地域包括支援センターは、地域の医師と連携を図っていますので、様々なアドバイスや支援を行います。

認知症かもしれない。誰に相談したらいいのか?

認知症は早期発見、早期治療が重要です。そのため、もの忘れがひどくなった、場所が分からなくなったなど、普段と明らかに違う言動があった場合は、かかりつけ医に相談をすることをお勧めします。

かかりつけ医の判断により、認知症専門の医療機関や専門医への紹介が行われ、精密検査を行い、総合的な情報から診断されます。必要な治療に関しては、かかりつけ医に情報が提供され、地域での継続的な医療を受けることができます。

「認知症と診断されるのが嫌だから…」と受診をためらうのではなく、早く診察を受けて、治療を開始すれば、進行を遅らせることができる場合があります。

認知症かなと思ったら、まずはセルフチェックをしましょう

認知症かもしれない…家族はどう対応すればいいのか?

認知症と診断されることは、本人はもちろん、家族もショックを受けます。「あんなに元気だったのに…」「今までの親じゃない」「こんなはずではなかった…」という戸惑いや否定的な感情が沸いてくるのは当然のことです。その結果、認知症の人を叱責してしまう場合があります。しかし、認知症になったからと言って、全く別人になってしまったり、何もできなくなってしまう訳ではありません。認知症の人自身も自分の変化に対して、焦りや屈辱感や嫌悪感などを抱きます。その結果、家族との関係性が悪循環になる場合もあります。

認知症の人への関わりは、人それぞれ異なります。そのため、マニュアルや体験談をそのまま当てはめてもうまくいくとは限りません。色々試しながらその人に合った方法を見つけ出しましょう。そして、時には見守ることも大切です。危険が及ばない範囲で、距離をもって接しましょう。

また、認知症であっても、できることや得意なことはたくさんあります。何でも家族が手を出してしまうのではなく、一人でできることはやってもらいましょう。例えば、「洗濯物を畳んでもらえますか?」、「ちょっと味見してもらえますか?」、「庭の花に水あげてもらえますか?」など、今までの人生や生活背景から自尊心が保てるように関わりましょう。

大切なことは、「家族だから」と頑張らないことです。介護は家族だけで行うことではありません。地域包括支援センターやかかりつけ医に相談し、要介護認定を受けましょう。介護度が判定されたら、担当のケアマネジャーとケアプランを相談して、必要な介護を受けましょう。例えば、ホームヘルパーやデイサービス・デイケアなどがあります。

どんな症状が現れたら認知症の疑いがあるのか?

認知症の家族が気づいた症状の一例は、「同じことを何度も言ったり聞いたりする」「趣味や興味があったことをしなくなった」「薬の管理ができなくなり、飲みすぎたり飲み忘れたりする」「もの忘れが目立つ」「病院の受診日を忘れてしまい、すっぽかす」「電話や来客の伝言を忘れる」「道に迷いやすくなった」「使い慣れた家電製品の使い方が分からなくなる」「怒りっぽくなる」「家族旅行での出来事などを忘れる」「うつっぽい」などです。

加齢に伴って誰にでも現れるもの忘れと認知症の区別がつきにくい場合もあります。認知症と疑われる症状がいくつもあり、次第に頻繁に現れるようになった場合は、一度かかりつけ医に受診をしましょう。

認知症かなと思ったら、まずはセルフチェックをしましょう

長谷川式簡易知能評価スケールとは?

長谷川式簡易知能評価スケールは、医師が効率的かつ公平に認知機能の低下を診断するために開発されました。

認知症の診断は、長谷川式認知症スケールだけではなく、脳のCT検査、MRI検査、血液検査、診察・問診や、日頃の生活の様子などを総合的に判断します。

長谷川式認知症スケールはこちらで受けられます

認知症と間違われやすい病気は?

もの忘れの著しい人がすべて認知症とは限らず、病気によって認知機能が低下する場合もあります。

1)せん妄
原因)頭部の病気や外傷(けが)、感染症、栄養障害、脱水、睡眠不足、薬の副作用、環境の変化など
主な症状)軽い意識障害、錯覚、幻覚、妄想、興奮、イライラ、記銘力の障害、見当識障害、昼夜逆転、多動など
1日の変化)変化が大きく、夕方や夜間に悪化する
経過)突然発生し、一過性の場合が多い

2)うつ病
原因)過度のストレス、慢性疲労、ホルモンバランスの変化、薬の副作用など
主な症状)記憶力、判断力、意欲の低下、抑うつ、不安、虚無感、自殺願望など
1日の変化)朝方に悪化する
経過)何らかの発症の原因が明らかであり、急激に進行する

認知症と意識障害の違いは?

私たちの身体は、外界からの刺激を受けて、自分の状態を外に表現します。例えば、画鋲を踏んだら、痛み刺激を受けます。そして、画鋲を足から振り払う、取り除きます。しかし、刺激をすると覚醒するものの刺激をやめると眠ってしまう状態や、刺激をしても覚醒しない状態のことを意識障害と言います。意識障害には、意識の覚醒度が低下している状態と意識する内容の異常がみられている状態のことを言います。

意識の覚醒度には、以下の段階があります。
意識清明(いしきせいめい):意識がはっきりしている状態、刺激しなくても起きている状態
傾眠(けいみん):軽い刺激には覚醒するものの、刺激がなくなると眠ってしまう状態
昏迷(こんめい):強い刺激にだけ覚醒するが、刺激がなくなると眠ってしまう状態
半昏睡(はんこんすい):強い痛み刺激にだけ、顔をしかめたり手足を動かしたり反応する状態
昏睡(こんすい):自ら動くことが全くみられない状態

一方で、意識内容の異常(意識変容)とは、意識レベルは正常、もしくは軽度低下しているものの、せん妄、錯乱、もうろう状態などがみられることを言います。

意識障害の原因は、脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)、心臓血管障害、不整脈、てんかんによる発作、腎不全、肝不全、感染症などがあります。


参考文献:1)日本神経学会 意識障害とは(2019年12月12日アクセス)
2) 今井幸充 認知症を進ませない生活と介護 法研,平成27年,p22~23



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