第5回 専門外来「メモリークリニック」での取り組み

2015年12月30日

今回は東京大学医学部附属病院 神経内科 特別外来 メモリークリニックでアルツハイマー病(AD)やレビー小体病、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診断、治療に当たっていらっしゃる岩田淳先生にインタビューさせていただきました。

岩田先生は認知症の診断・治療だけではなく、臨床研究も行っておりますので、認知症の研究も含めた幅広い内容をお伺いさせていただきました。全9回でお送りいたします。

岩田先生のインタビューを第1回から読む
話し手
東京大学大学院 特任准教授
東京大学大学院 特任准教授
岩田淳先生

第5回 専門外来「メモリークリニック」での取り組み

東京大学医学部附属病院の専門外来「メモリークリニック」でアルツハイマーを始めとする認知症などの診療に当たっている岩田ドクター。東大「メモリークリニック」の大きな特徴となるのが、診療時間の長さです。

診療時間を長くとることに、どのような意味があるのでしょうか。また、岩田ドクターが考える東大「メモリークリニック」のあり方についてもお聞きしました。

薬の処方で終わりにしない、初診にも再診にも時間をかける

―― 岩田先生がいらっしゃる、東大の専門外来「メモリークリニック」では、認知症と診断された方に、どういった治療をされているのでしょうか? ポイントとしては、「メモリークリニック」と他の外来との違いについて、是非お聞かせ下さい。

東大の「メモリークリニック」は初診、再診の時間が長いです。私は初診で45分間くらいはとれるようにしています。再診も長ければ30分くらいとれるよう努力しています。要は「量より質」というのを目指していて、患者さんが増えてきても、結局、病診連携でお返しすることが多いので、なるべくお互いの負担が増えないように努力をして、その代り、例えば半年に一回受診するのだが、30分は話ができたとか、そういう形を目指しています。

薬を出して終わりにしないで、現在の問題点が何かということを聞いて、特に家族の方にアドバイスをするというのが目的です。初診を45分と長くとっているのは、もちろん診察時間を長くするという意味合いがありますが、それプラス、治験であるとかコホート研究であるとかというものの御説明にも充てています。大学病院なので診療以外の部分も多くする必要があるのです。

―― そもそも患者さんが来られるきっかけというのは何なのでしょうか? いきなり東大病院に来るということは、あまりないですよね。

いえ、たくさんおられますよ。メモリー外来では、私を指名して、紹介でいらっしゃるケースと、自分で調べて来院される場合があります。院内からの紹介もありますが、メモリー外来全体としては8割以上が全く紹介のないケースだと思います。

―― 何処からも認知症という診断をなされていない方がいらっしゃるのですか?

そうです。もしくは、診断されているけれども、治験をして下さいという場合もあります。月に2-3人くらいは、そういうケースがあると思います。「東大でしかやっていない治験があると聞いたので、是非お願いします」とおっしゃっていました。

―― 東大の「メモリークリニック」に受診したいと思った場合、どうすればいいのですか?

ホームページをご覧になった上で予約センターから予約を取っていただければ、どなたでも診させていただきます。メモリー外来を大きくするというのが私の使命なので、時間が許す限り、沢山の患者さんを拝見するつもりです。

―― 再診を受ける場合はどれくらいの間隔を見ておけばよいでしょうか。

病状によります。当然一か月後に来ていただくこともあります。私の場合は、安定するまでは結構頻繁に来てもらっていますね。生活が安定して、治療薬の量が安定すれば、三か月後に来て頂いたり、次回の来院は何かあった時でいいから、近くの先生のところに送るからといって、病診連携ですね、次回のお約束をしないこともあります。その場合は御開業の先生が困られた場合に再診されることになります。

大学病院として、治験での貢献も目指す

―― メモリークリニックには、そのほかにどのような特徴がありますか。

「メモリークリニック」の一つの目的は治験を成立させるための関係づくりです。臨床試験、もくしは研究に結び付けるご協力をいただくというのが一つの目的ですね。やはり大学病院ですから、社会への貢献をしていかなければなりません。

これは余談ですが、日本はコホート研究が非常に苦手です。アメリカに行けば、すぐにわかりますが、アメリカはコホート研究が非常に盛んです。それには二つの理由があります。一つは日本では医師に時間がないことです。

コホート研究は非常に時間のかかる研究方法であり、患者さん一人当たりに、例えば一時間以上かけなればならないこともありますから、5分外来では絶対に無理なのです。そこを何とかしたいという思いがあって、少し長い時間をかけた外来がやりたいという思うようになりました。それを実現するためのプラットフォームに私たちはしているつもりです。

もう一つはそういったものに入りたいと思ってくれるような患者さんをリクルートできるシステム、つまり信頼関係がある程度できていて、「先生がそういっているなら、やりますよ」といってくれる人を見つける仕組みが必要で、そのためには時間をとらなければならないのです。

3ヶ月に1回に5分しか会わない医師に、「脳脊髄液を採取させてくれる?」と頼まれても、普通は嫌ですよね。そのためには、やはりこの医者は毎回結構長い時間をとって話を聞いてくれるし、この医者がいうのだったら、いいかなという気持ちになっていただくためには、ある程度コミュニケーションをとって、冗談の一つや二つはいえる仲にならないと、難しいと思います。

そういう観点からだと開業の先生だったら、患者さんと頻繁にお会いになるのでできると思います。ですが、開業の先生が認知症のコホート研究に御参加頂くことは全く現実的ではありません。とても、お忙しいですから。そのためには、大学病院で時間をとった外来が最低限必要だと思っているわけです。 第6回 「MCIの誤解と予防・治療」に続く 岩田淳先生の他のインタビューを見る


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