認知症高齢者への接し方:②もの忘れへの対応
電話に出ても忘れてしまう
認知症の症状である記憶障害のため、電話の受け答えはできますが、電話の相手や話した内容は忘れてしまいます。そのため、家族はスピーカーにして会話の内容を確認する、録音するのも効果的です。
特殊詐欺で自宅に電話をかけてくるケースが多発しています。警察庁¹⁾では、特殊詐欺への対応として、家にいる時でも留守番電話を設定しておき、知っている人の場合のみ電話に出る、ナンバーディスプレイを活用し、知らない番号や非通知番号の電話には出ない、防犯機能付き電話機を使用するなどの利用を推奨しています。
日時・場所・人物が分からなくなる
日時・場所・人物が分からなくなるのは、認知症の中核症状のひとつである見当識障害によるものです。 見当識障害とは、「今日はいつなのか」という年月日、曜日や時間、「ここはどこなのか」という場所、「この人は誰なのか」という人物の判断がつかなくなることです。
治療のため入院したり、施設などに入所した、子どもとの同居のため引越しをしたなどの環境の変化により起こる場合があります。
対策として、今まで自宅で使用していた時計やカレンダー、眼鏡、スリッパ、湯飲みや箸などを持参する、ベッドサイドに家族の写真を置く、日付や時間をさりげなく伝える・確認する、昼夜逆転を起こさないように生活リズムをつける、などが効果的と言われています。
見当識障害とは?預金通帳や現金をしまいこみ、忘れてしまう
認知症の人は、預金通帳や現金、印鑑などをどこかにしまいこんで忘れてしまう場合があります。それは、「失くしたら大変なので、大事にしまっておこう」という気持ちがあるからです。しかし、しまいこんだこと自体を忘れてしまうため、いつも何かを探している、場合によっては「誰かに盗られた」と思い込む『もの盗られ妄想』がみられます。
普段の生活の中で、いつも同じ場所に置いてあるものはずなのにない場合、ヒヤッとする体験をしたことは誰にでもあることでしょう。認知症の人も同じです。貴重品がいつもの場所にないことへの驚き、不安やあせりから、つじつまを合わせるために「誰かに盗られた」という妄想が起こります。 誰しも犯人呼ばわりされるのは嫌なことです。しかし、「私は盗んでいない」「犯人扱いするなんて!」と怒っても悪循環になるだけです。深呼吸をしながら、対応しましょう。
このような場合、認知症の人の不安やあせりを落ち着せる声かけをします。「一緒に探しましょう」という姿勢で対応しましょう。そして、「この辺りにあるかしら?」と本人が見つけられるように促します。その際、本人よりも先に探してしまうと、「やっぱりあなたが盗ったんだ」と認識してしまいます。本人が見つけられるように対応することが重要です。
また、書類などはクリアケースを利用して、入っているものがひと目で分かるようにしたり、毎日使う眼鏡、補聴器、携帯ラジオなどは100円ショップなどで販売している透明のかごに入れておくと、寝室とリビングなどの部屋の移動に持ち歩きしやすいです。
もの盗られ妄想の原因と対応 発症から診断まで:②認知症の中核症状と周辺症状 (行動・心理症状:BPSD)毎日同じものを買ってくる
認知症症状の記憶障害により、冷蔵庫に何があって、何を買わなければならないのか、覚えていられません。そのため、常備しておかなければ気が済まない食品や生活用品が増えてしまいます。日持ちのするものや腐らないものであれば、消費できますが、生鮮食品の場合、腐ったり、腐っているのに食べてしまう場合もあります。
家族と同居している場合、買い物に一緒に行く、買ったふりをしてレジを通さずに返すなどの対応ができます。しかし、一人暮らしの人の場合、訪問介護ヘルパーに買い物を同行してもらいましょう。
また、いつも同じ店に行くのであれば、店員に認知症についての理解をしてもらうよう依頼し、協力を得るのも効果的です。
認知症があっても、住み慣れた地域で生活することは、本人にとって安心できる社会です。そのためにも、近隣住民や馴染みの店の店員などが、認知症を理解して関わることが求められます。
参考文献:1)警察庁 特殊詐欺 留守番電話作戦(2020年3月10日アクセス)
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