アミロイドβは病原菌と戦った証(あか)し!?

2016年6月14日

アルツハイマー型認知症の原因研究に新たな可能性か

平成28年5月25日にアルツハイマー型認知症を引き起こす、原因の1つであるアミロイドβの蓄積について、真菌や古細菌等による感染症が原因である可能性があると報じられた。

関連リンク:「アミロイドβとは〜アルツハイマー型認知症の原因を探る」はこちら

脳が感染症に対して防衛反応をしている可能性を示す3つの研究

現在、アミロイドβはアルツハイマー型認知症原因の1つとして知られているが、その蓄積理由は未(いま)だ断定されていない。

しかし今回、その理由として有力となり得る「感染症原因説」を示す3つの研究結果が発表されたのだ。

まず1つは、ハーバード大学研究グループによるものである。この研究は、遺伝子操作によりアミロイドβを脳内で過剰生産するよう施されたマウスと、そうでない通常のマウスが用いられこれらに致死量の細菌を脳内へ注入することで行われた。

結果、アミロイド過剰生産マウスではアルツハイマーに特有のプラークがつくられ、そのプラーク内には細菌が封じ込められていた。一方、遺伝子操作されていないマウスの脳内では、アルツハイマー特有のプラークはつくられず、マウスはそのまま息絶えてしまったのである。

また、同研究チームは線虫によっても同じような実験を行っており、こちらの研究でもアミロイドβを過剰生産する個体の方が、そうでない個体に比べ長く存命した。

次に2つ目の研究はスペインのグループによるものだ。同研究グループは生前アルツハイマー型認知症を患っていた、11人の遺体の脳血管及び組織を顕微鏡により調べた。

するとアルツハイマー患者の遺体から、数種類もの真菌細胞や関連物質が検出されたにも関わらず、アルツハイマーでなかった遺体からこれらは検出されなかったのだ。

この結果から研究グループは、アルツハイマー型認知症自体進行が緩やかである事実を加味し考慮すると、アルツハイマー病の特徴と合致する上にアルツハイマーが真菌性のものである可能性を、示すとしている。

そして3つ目としてあげるのは、鹿児島大学の研究グループによるものだ。

彼らは2005年から2012年までを対象に、南九州在住の40代から70代の男女4人の脳組織を顕微鏡によって調査、彼らの脳組織血管周辺から高度好塩菌と類似する新種の古細菌を発見した。

なお、この結果を踏まえ調査対象であった患者らに抗菌薬を投与したところ、アルツハイマー症状が好転している。

今後の治療研究にも新たな可能性をもたらすか

ここまで紹介した3つの研究では、マウスや線虫また遺体・生体というように研究対象が異なり、用いられた病原菌即(すなわ)ちアミロイドβ蓄積の原因とされる菌の種類も異なる。

だが、いずれの研究も「感染症がアルツハイマー病の原因となり得る」という事実を、指し示すことに変わりはなく仮設の段階であるものの、多くの研究者から注目されているのだ。

こうしたことから、もしこれら研究結果の示す「感染症原因説」が有力とされれば、これからの治療研究に光をもたらすといえる。

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▼外部リンク
Amyloid-β peptide protects against microbial infection in mouse and worm models of Alzheimer’s disease


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