アルツハイマー病の一部に感染病の可能性あり、との論文発表
30年前中止された成長ホルモン製剤
英国ロンドン大学の研究チームは、アルツハイマー病の原因とされているタンパク質「アミロイドベータ」が、かつて使われていた成長ホルモン製剤の投与によって感染していた可能性があることを、9月9日、英科学誌「Nature」電子版に発表した。
使用されていた製剤は、人間の遺体の脳下垂体から作られたもので、成長ホルモンとして投与されていたが、異常プリオンが含まれていたことから、難病のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を発症することが分かり、30年前に使用が中止されていた。
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)との関連性
研究チームは、CJDで死亡した36~51歳の患者8名の脳について病理検査をおこない、そのうち6名にアミロイドベータが蓄積していることが分かった。6名に、アルツハイマー病となる遺伝的要素はなく、同じ年代の他の解剖例ではそのような蓄積がほとんど見られないことから、ホルモン製剤の投与がアミロイドベータの蓄積に関与している可能性が考えられた。
ホルモン製剤は、1958年から1985年まで、全世界で約3万人に使用された。異常プリオンを含んだ製剤によるCJDは、主にフランス、英国、米国で発症し、2012年までに226の致命的な感染症につながっている。CJDは潜伏期間が長いため、今後さらに増える可能性があるということだ。
アルツハイマー病発症のメカニズム解明に
今回の研究により、CJDを発症させる成長ホルモン製剤に、アミロイドベータが蓄積する何らかの原因があるという可能性が示唆されたが、製剤を介して人から人へ感染することが実証されたというわけではない。
研究チームは、製剤を投与され、後にCJDを発症して死亡した別の患者についても、さらに研究を重ねていく方針だ。これらの研究が、アルツハイマー病発症のメカニズム解明の糸口となることを期待したい。
(画像は Jaunmuktane et al. Nature 525, 247?250 2015 より)
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「Autopsies reveal signs of Alzheimer’s in growth-hormone patients」Nature
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