認知症と誤診された患者が3,500人以上に。その本当の問題は?
専門医の再診察では「うつ病」、「せん妄」などと診断
NHKが認知症の診断や治療について専門医1,634人を対象に行ったアンケート調査によると、実際は認知症でないのに認知症と診断されていた人が去年1年間に全国で少なくとも3,500人以上いることが判明した。
専門医が改めて診察を行ったところ、正しい病名として最も多かったのは「うつ病」で全体の26%を占めた。次いで手術のあとなどに意識が混乱する「せん妄」が23%、持病の薬の副作用でもの忘れなど認知症と似た症状が出ていたケースが14%となり、中には正常と判断されたケースもあった。
厚生労働省はこのことについて、調査のような実態があるとすれば問題だとしたうえで、「診断が適切に行われるよう医師の対応力を高めるなど対策を急ぎたい」などとコメントしている。
知識不足のかかりつけ医の安易な抗認知症薬の処方が問題
現在、認知症の高齢者は全国で452万人と推計されているが、10年後には最大で高齢者の5人に1人に当たる730万人に増加すると考えられている。
今回のアンケート調査では、回答者の80%に当たる426人の専門医が「ほかの施設で認知症とされた患者を診断した結果認知症ではなかったケースがある」と答えている。
認知症ねっと編集部としては、ここまでは仕方のないことだと考えている。やはり一番最初に何かおかしいなと思ったときにかかりつけ医に相談に行くことは当然で、専門医でも難しいうつ病・せん妄と認知症を誤診してしまうケースは多々あることだし、何よりこの3,500人には軽度認知障害も含まれるであろう。これを誤診というのはさすがにかかりつけ医もかわいそうだろう。
しかし、35%が「認知症でない人が治療薬を服用し副作用が出ていたケースがある」と回答した。問題はここにある。
知識のない診断で、アリセプトを始めとする治療薬をやたらと処方してしまうことで、うつ症状をやたらと加速してしまうことがあるためだ。
学会が定めたガイドラインによると認知症の診断の際には、症状や生活の状況などを聞き取る「問診」をはじめ、血液や認知機能を確認する検査を行うとともに、脳の画像検査を実施することが望ましいとされている。
しかし、NHKがこれまで行った取材によると、1回の短時間の問診だけで薬を処方されたケースがあったほか、診断そのものが難しいという声も上がっていた。
日本医師会はかかりつけ医の対応力を向上させ、適切な診断や治療が行えるように、今年3月に認知症を診断するためのマニュアルを初めて作成するなどの対応を行っている。
(画像はプレスリリースより)
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