認知症カフェのススメ~土橋カフェレポート

2017年10月17日

外出や社会交流のきっかけとして、認知症を地域で支える取り組みとして、そして情報蒐集の場としてなど、様々な役割を持つ認知症カフェが各地で増えています。参加者にとってはメリットの多い認知症カフェですが、きっかけが掴めず、未体験の方も多いのではないでしょうか。

今回は、川崎市宮前区で行われている話題の認知症カフェ「土橋カフェ」の様子を、認知症ねっとがレポート。現場の様子を知ることで、少しでも多くの方の、参加のきっかけとなれば幸いです。

この記事の執筆
認知症ねっと
認知症ねっと編集部
認知症ねっと
この記事の目次
  1. アットホームな地域の「居場所」
  2. 初めてでも、一人の参加でも安心
  3. エンターテイメントも人気
  4. 認知症に関する悩みをカフェで解決
  5. 誰もが対等の立場
  6. 敷居の低い「相談窓口」として
  7. 認知症カフェのススメ

アットホームな地域の「居場所」

童謡を皆で合唱

初めてでも、一人の参加でも安心

住宅街の中にある土橋会館には、スタートよりも早めの時間から、続々と参加者が集まってきます。「こっち空いてるわよ!」「ホラ、座布団!」「どこから来たの?」と、皆さん初めての参加者にもとてもフレンドリー。すぐにあちこちでおしゃべりが始まります。1人での参加もこれなら安心です。

テーブルには、地域の園芸クラブの花壇で育てられた千日草とローズゼラニウムが飾られ、和やかな雰囲気の中、いつの間にか120名を超える参加者が集まり、賑やかな空気に包まれました。

エンターテイメントも人気

この日のイベントには、声楽家の荒木ユミさんが登場。ソロでオペラ曲を披露したほか、地元のコーラス部が駆けつけた童謡タイムでは、会場が一丸となって歌いました。

土橋カフェでは、このようなエンターテイメントの他、認知症予防教室や講師を招いての講演など、毎月違った趣向が凝らされています。「前は三味線が素晴らしかった」「映画や音楽の時は欠かさず来ています」など、参加者には特にエンターテイメントが人気のようでした。

認知症に関する悩みをカフェで解決

ボランティアが抹茶も立ててくれます

誰もが対等の立場

「認知症カフェ」ですから、もちろん当事者の方や介護家族も沢山いらっしゃいます。専門職や、地域の職員も参加しているのですが、一見したところでは誰がどのような立場なのかわかりません。お喋りの輪に入ってしまえば、話している相手が認知症かどうかなど、もはや問題ではないのです。

「高齢者」「認知症患者」といったレッテルは存在せず、誰もが同じ立場の人間として自然に触れ合い、皆笑顔で過ごしています。ノーマライゼーション※が自然と実現している空間が、土橋カフェにはありました。「介護する側」「介護される側」の区別はもちろん、「医者」と「患者」の垣根さえありません。当事者が気おくれするような雰囲気は一切ないのです。

※人を違いで分けるのではなく、誰もがノーマルに、同じように生活できるようにしようという、福祉における考え方

敷居の低い「相談窓口」として

「認知症に関する問題は、ここへくれば大抵解決の糸口が見つかる」と話すのは、認知症ねっとでもインタビューを行った高橋正彦先生。土橋カフェにも毎月参加していらっしゃいます。

認知症を疑った時や介護で困った時、地域包括センターやかかりつけ医、家族会や認知症疾患医療センターなど、いくつか相談できる窓口はあります。しかし、問い合わせるのに勇気がいるという方も多いのではないでしょうか。

土橋カフェには、ドクターや看護師、弁護士やケアマネージャー、地域包括センターの職員など、多くの頼もしい専門職が、皆に混じって参加しています。何か問題があった時には、気軽なお喋りの中で相談に乗ってくれるのです。堅苦しさは一切なく、必要な人材にスムーズに繋いでくれます。

カフェが医療や介護への「敷居の低い入口」と、先生は語ります。運営を行う地域の社会福祉協議会会長 老門泰三氏も、カフェで先生と話したことで、医療とつながった方の話をしてくださいました。その他にも、嫌がっていたデイケアに楽しく通うきっかけとなるなど、多くの事例が生まれています。また、当事者同士、介護家族同士の交流も活発です。情報共有やストレス発散の場としても機能しています。

認知症カフェのススメ

大盛況の中スタッフは大忙し

誰にでも、人との交流を求める欲求はあるでしょう。しかし認知症になると、「何か失敗したらどうしよう」「恥ずかしい思いはしたくない」といった心のブレーキが働き、引きこもってしまうことも珍しくありません。そんなとき、勇気を出してお近くの認知症カフェに出かけてみてはいかがでしょうか。当事者にとっても、介護する家族にとっても、きっと得るものがあるはずです。

予約も必要なく、誰もがふらりと立ち寄れる土橋カフェは、川崎市宮前区で毎月第一水曜日午後13時半から開催されています。皆さんがお住まいの地域にも、認知症カフェが開催されているはずです。是非探してみてください。

▼土橋カフェの開催日時や連絡先は以下からご確認ください。

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