認知症列車事故、3月1日の最高裁で家族側逆転勝訴
2016年3月3日
「家族に責任は問わない」
最高裁判所は3月1日、平成19年に愛知県で認知症の男性(91)が徘徊中に列車にはねられ死亡した事故について、家族に監督義務や賠償責任はないとする判決を下した。家族に賠償を命じた2審判決を破棄し、JR東海側の請求を棄却、家族側の逆転勝訴となった。
1審、2審とも家族に賠償を命じる判決
当時同居する高齢の妻が自宅で男性の介護をしていたが、目を離した隙に男性は1人で外に出て、事故にあった。長男はいっしょに住んでいなかった。
JR東海は、認知症男性の家族に対して振り替え輸送の費用など約720万円の賠償を求め、1審の裁判では妻と長男に監督義務があったとして全額の支払いが命じられた。2審では別居する長男の責任は問わず、同居する妻に約360万円の賠償が命じられた。
1日の最高裁判決を前に、日本社会福祉士会をはじめとする福祉団体や教育関係など7団体が、家族に監督責任を求めるのは不当だとする声明を発表するなど、全国的に注目を集める裁判となった。
「総合的に考慮して判断すべき」との見解をしめす
最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は、
「監督が容易な場合は賠償責任を負うケースがあるが、今回は困難だった」(東京新聞より引用)
とし、認知症の家族だから当然監督する義務があるとするのではなく、生活の状況などを総合的に考慮して判断すべきだという見解をしめした。
認知症の人が事故を起こした際の「家族の責任」に関して、最高裁が明確に言及したのは初めてのこと。家族側の弁護団は、全面的に主張が認められたことに対し、「素晴らしい判決だ」と評価した。
高齢化が進む日本において、今後認知症介護の現場に大きな影響を与える判決といえるだろう。
(画像はイメージです)
▼関連記事
認知症男性の列車事故裁判でJR東海が720万円の損害賠償を要求
電車線路を車で走行した男性、「認知症」として不起訴に。ゴールド免許所持。
ユッキー先生の認知症コラム第25回「徘徊」
【この記事を読んだ方へのおすすめ記事】
- 【PR】治験参加者募集中!もの忘れなどのある高齢者でも、安心して使える睡眠治療薬の提供を目指して
- 11/28(木)「オンラインフレイル予防講座」防災編を開催(福岡市)
- 10/30(水)「オンラインフレイル予防講座」口腔編を開催(福岡市)
- 認知症予防医/広川慶裕医師の新刊「脳のスペックを最大化する食事」7/20発売
- 認知症予防医/広川慶裕医師の新刊「潜伏期間は20年。今なら間に合う 認知症は自分で防げる!」
- 広川慶裕医師の、認知症予防のことがよく分かる『認トレ®️ベーシック講座』開講!
- 知ると知らないじゃ大違い!民間介護保険って何?
- 酸化ストレスを減らすと認知症予防に!秘密はサプリメント
- ユッキー先生の認知症コラム第92回:あるべき姿の認知症ケア
- 認知症専門医による認知症疾患啓発イベントを開催
- ポイントは食生活にあった。認知機能維持に必要なのは・・・
- 認知症予防は40代から!摂ると差が出る栄養素とは。
- 山口先生のコラム「やさしい家族信託」第17回:Q&A 外出自粛で、認知機能の低下が心配。家族信託、遺言、後見、今できることが知りたい
- 【広川先生監修】5分で分かる認知機能チェック(無料)はこちら
- 認知症は予防できるの?
- 認知症の種類とその詳細はこちら