認知症薬の概論

この記事の監修
高橋秀行先生
鶴川サナトリウム病院 精神科・もの忘れ外来
高橋秀行先生
この記事の目次
  1. 薬の種類と特長について
  2. 認知症の薬物療法について
  3. 適応について
  4. 副作用について
  5. 服薬管理について

薬の種類と特長について

2016年現在、日本国内では認知症の薬としては下記の4種類が認可されています。これらの薬は2つのグループに分けられます。アリセプトレミニールリバスタッチパッチ/イクセロンパッチはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬というグループに分類され、効果などある程度共通した特徴を持ちます。

メマリーはNMDA受容体拮抗薬と呼ばれ、上記の3剤とは異なる働きを持ちます。そのため、複数のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬を同時に使用することはできませんが、メマリーはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬のうち1剤と併用して治療することも可能です。

※主治医の判断で上記以外の処方が行われる場合もあります。

認知症の薬物療法について

アルツハイマー型認知症はいつの間にか発症し、年単位の経過で徐々に記憶力、判断力などが低下し日常生活に支障をきたすようになる病気です。症状の進行には個人差があり、初期の段階から高度の認知症に至るまでの期間は3,4年~10年程度と様々です。

現在、アルツハイマー型認知症により失われた記憶能力や精神機能を回復する治療法はありませんが、適切な治療によって症状の進行を遅らせることができます。治療していても病気は徐々に進行していきますが、症状の進行を遅らせることで認知症の方がご本人らしく生きることのできる時間を長くし、ご家族・介護者の負担を軽減することにもつながります。

アルツハイマー型認知症の場合、より早期の時点から認知症の方ご本人にあった薬を使用することで、認知機能の障害の進行を遅らせることができ、良い状態を保てる可能性があります。ただしごく初期の段階の認知症と加齢による物忘れは区別しづらい場合もあり、経過を見ていく中で治療開始のタイミングを見極めるといった対応が必要になることもあります。

【ユッキー先生の認知症コラム】第2回 正常(生理的)の物忘れ、認知症の物忘れ 加齢による物忘れと認知症の違いは?

薬物療法を開始しても症状の変化がみられず効果が実感できない場合でも、何も治療しない場合より症状の進行を遅らせている可能性があります。また、服用を急に中止してしまうと、治療をしていなかった場合と同等の状態まで症状が急に悪化してしまう場合があります。自己判断で中止せず、主治医の先生と相談しながら治療を受けましょう。

また、どの薬にも言えることですが、人によっては副作用が出ることがあります。薬を使用することによって得られるメリットとデメリットを比較しながら薬を使うか検討する必要があります。他に持病をお持ちの方や、認知症の薬が合わず副作用の出やすい方などの場合は、あえて薬を使わない場合もあります。

その他、以下のようなことにも注意しましょう。

適応について

認知症には様々な種類がありますが、上に紹介されている認知症の薬が適応となるのは現在のところアルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症(アリセプトのみ)に限られています。治療に当たっては正しい診断が大切ですので、気になる症状など診断の手掛かりになる情報は主治医の先生に伝えましょう。

副作用について

問題なく使用できる方が多数ですが、中には副作用が出る方がいます。その場合、認知症の方自身では症状を認識し訴えることが難しい場合もあるので、周囲の方が気を付けてあげましょう。

代表的な副作用としてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(アリセプトレミニールリバスタッチパッチ/イクセロンパッチ)では下痢や嘔気などの消化器症状や興奮などの精神症状があります。

貼付剤であるリバスタッチパッチ/イクセロンパッチでは貼付部位のかゆみや発赤などの皮膚症状がみられることがあります。またメマリーではめまいやそれに伴うふらつきが出現することがあります。詳細についてはそれぞれの薬についての記事を参照してください。

服薬管理について

薬物療法では決められた量の薬をきちんと飲み続けることが大切ですが、認知症の方は記憶能力の低下が生じているため飲み忘れてしまったり、飲んだことを忘れて飲みすぎてしまう恐れがあります。

お薬をきちんと飲むために、周囲の方のサポートが大切です。周囲に薬の管理ができる方がいない時は、サポートできる環境が整うまで処方を控える場合もあります。

持病をお持ちの方の場合は認知症の薬の使用に際し注意が必要な場合があります。現在治療中の病気や過去の病気も含め、主治医の先生に相談しましょう。

薬物療法だけでなく、ご家族や周囲の方とのコミュニケーションや、デイサービスなどを活用した「非薬物療法」を併用していきましょう。

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