超音波で血液脳関門の開通に成功 -アルツハイマー病の画期的治療法なるか?
超音波治療器「エクサブレート・ニューロ」
MRガイド下集束超音波治療のパイオニアとして知られるインサイテック社は、カナダの研究チームが、同社の超音波治療器「エクサブレート・ニューロ」によって、悪性脳腫瘍患者の血液脳関門(BBB)を一時的に開通させ、化学療法を効果的に送達することに成功したと発表した。
血液脳関門の役割
このように脳内の一定の領域に対して一時的に血液脳関門を開通し、安全に治療をおこなえることは、脳腫瘍、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかんなどの神経学的疾患においては、年来の目標となっている。
血液脳関門は、細胞の保護層がしっかりと結合して脳血管を覆うことで、毒素や感染因子などの有害物質が脳組織に入らないようにするたいせつな働きをもつ。しかし、脳内の標的に対し必要となる薬剤を、適切な濃度で到達させることをも妨げるというデメリットがある。
今回の治療法では、化学療法薬を、ガスを満たした小さな泡とともに患者の血流に注入し、治療の標的とその周辺に集束超音波を当て、振動を起こすというもの。これによって血液脳関門の結合が緩み、高濃度の化学療法薬が対象組織に入り込むことが可能となる。
血液脳関門の一時的な開通が認知機能を改善!
今回おこなわれた臨床試験は、患者にとって初の成果といえるが、カナダの研究所では、類似の前臨床試験を、約10年間実施している。同研究所の集束超音波とマイクロバブルの組み合わせでは、薬剤送達に加え、疾患と戦うという脳の自然反応が刺激をうける可能性が示された。
そこでは、血液脳関門の一時的な開通が脳を刺激し、アルツハイマー病に関連するといわれる病的タンパク質の除去が促進され、認知機能を改善すると考えられている。
オーストラリアの脳科学研究所では、アルツハイマー病のマウスモデルを使った最近の研究において、血液脳関門が開通したことで脳のプラークが減少し、記憶が改善したことが実証されたという。
これらの前臨床試験をふまえ、今後は、集束超音波を使用したアルツハイマー病の治療に関する臨床試験が、活発におこなわれることが期待されている。
(画像はプレスリリースより)
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