アルツハイマー型認知症と診断された人に病名が開示されるのはわずか45%【米国】
アルツハイマー病の調査レポート
米国アルツハイマー病協会は、3月24日、「2015 Alzheimer’s Disease Facts and Figures report(アルツハイマー病の調査レポート)」を発表し、アルツハイマー病であるとの診断をうけた患者あるいはその介護者らの、45%にしかその事実を知らされていないという調査報告をおこなった。
これは、現在乳がんや直腸がん、肺がんなどの90%以上が病名を告知される事実と対照的であり、1950年代に「がん」患者への告知がタブー視されていたことを連想させるものだ。
協会のBeth Kallmyer氏は述べている。
「これは、アルツハイマー病患者の自主性と意思決定の権利をそこなう重要な問題だ。病気の診断が開示されれば、患者は自分の変化に積極的に対応し、よりよい生活を送るための方法を考えることができるだろう。」(米国アルツハイマー病協会ニュースリリースより)
病気が進行してから開示される
報告によると、アルツハイマー病患者とその介護者らは、病気が進行し、より重症になってから医師の診断を告げられることが多いという。これでは、介護プランの決定や法的な問題、経済的な問題について患者自らが決定する能力がなくなっている可能性があり、患者本人の意志を尊重するものではない。
ヘルスケア関係者らがアルツハイマー病の診断を開示しない最も一般的な理由にあげるのは、患者に精神的苦痛を与えないためという点だ。しかし最近では、早い時期に診断結果を患者らと共有することにより、治療方法の選択やケアの方法について、患者の意志を尊重しながらよりよい選択ができることを利点ととらえるようになった。
67秒に1人の割合で発症する時代
米国は、2015年にアルツハイマー病となっている人は530万人であると推計している。若年性認知症が20万人、残りの510万人が65歳以上の人。さらに決定的な治療薬が発見されないかぎり、2050年には1380万人になると予想。
また計算では、67秒に1人の割合でアルツハイマー病が発症しており、65歳以上のアルツハイマー病患者の3分の2が女性とのこと。
アルツハイマー病は、もはや米国の死亡原因の6大疾病に数えられている。しかも他の主要な病気の死亡率は減少傾向にあるのに、アルツハイマー病に関しては、2000年~2013年の間に死亡者数が71%も増加している。
米国では、アルツハイマー病など認知症の人を看護するためにかかる費用と時間は莫大なものとなり、深刻な財政問題ともなっている。その負担に対処するためにも、早期に患者やその家族らと診断を共有することが必要だ。
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