“小児の認知症” ニーマン・ピック病C型の研究で成果
治療薬候補の有効性に関わる分子構造学的な特性を発見
宮崎大学医学部附属病院薬剤部の山田侑世薬剤師、池田龍二教授、ならびに熊本大学大学院生命科学研究部の石塚洋一教授らを中心とする研究チームは、“小児の認知症”と表現されるニーマン・ピック病C型(NPC)という先天性の難病に対し、治療薬候補として有望視されているシクロデキストリン(CD)の有効性発現や毒性発現に関わる分子構造学的な特性を見出しました。
これまで、CDの誘導体である2-hydroxypropyl-β-CD(HP-β-CD)の臨床開発を目的とした世界規模の治験が行われてきました。しかし、その限定的な治療効果や回避できない有害事象が原因で、未だ承認に至っていないため、画期的な治療薬の開発が望まれています。本研究チームは、今回得られた知見を基盤にして、より有効で安全な治療薬の創出を目指します。
“小児の認知症” ニーマン・ピック病C型
ニーマン・ピック病C型(NPC)は、小児・新生児期に進行性の中枢神経障害が発症し、患者さんの多くが10歳前後で亡くなる遺伝性の希少疾患です。細胞内のリソソームにおいてコレステロールを輸送するタンパク質NPC1やNPC2が遺伝的に機能不全になることで、細胞内のコレステロールバランスが破綻します。
これにより、精神発達の遅れや運動失調といった神経症状、肝脾腫や呼吸不全といった全身症状が認められます。現在、複数のグルコースが環状に連なってできるシクロデキストリン(CD)の誘導体で、生体のコレステロールを強力に可溶化する2-hydroxypropyl-β-CD(HP-β-CD)を静脈内または髄腔内投与する世界規模の治験が行われています。
しかし、劇的な治療効果は得られず、また、多くの症例で聴覚障害が引き起こされたことから、患者さんとその家族は“deaf or death(失聴か死か)”という苦渋の選択を迫られているため、より有効で安全な治療薬が望まれています。
本研究チームは、様々な分子構造をもつ複数のCD誘導体とコレステロールとの結びつき方(複合体形成様式)を、溶解度解析や分子間結合解析によって予測しました。その結果、コレステロールは、α-CD 誘導体(グルコース6 分子)と複合体を形成せず、β-CD誘導体(グルコース7 分子)と1:1および2:1複合体を形成し、γ-CD 誘導体(グルコース8 分子)と1:1複合体のみを形成することを明らかにしました。さらに、モデル細胞やモデルマウスを用いた実験から、CD 誘導体の有効性には1:1複合体の安定性が、毒性には2:1複合体の安定性がそれぞれ寄与している可能性を突きとめました。
今後、本研究成果を基盤にしたCD の分子構造最適化によって、臨床開発が進められているHP-β-CD を上回る有効性と安全性をもった次世代のCD 誘導体が創出されることが期待されます。
本研究結果は本研究結果は、、2023年年8月月24日に日に科学誌科学誌「Clinical and Translational Medicine」に掲載されました。
詳しくは下記外部リンクよりご覧ください。
(画像はプレスリリースより)
▼外部リンク
“小児の認知症” ニーマン・ピック病C 型に対する治療薬候補の有効性・毒性発現に関わる分子構造学的な特性を発見~より有効で安全な治療薬開発につながる可能性~
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