少量の血液からアミロイドß結合エクソソームを検出する技術

2022年10月4日

北大と凸版印刷が開発

北海道大学大学院先端生命科学研究院の湯山耕平特任准教授らの研究グループと凸版印刷株式会社(東京都文京区)は、アルツハイマー病の発症リスク評価における血液バイオマーカーとなるアミロイドβが結合したエクソソームを1個単位で識別・検出する技術の開発に成功しました。本研究成果は、2022年10月3日(月) Springer Nature社の科学誌Alzheimer’s Research & Therapyにオンライン掲載されました。

本技術は、検出チップ上に集積した100万個のマイクロメートルサイズの微小なウェルに標的となる分子や粒子を確率的に1個ずつ閉じ込めて、分子や粒子から発する信号の有り「1」、無し「0」で標的をデジタル検出・定量する高感度バイオセンシング技術です。

信号検出には凸版印刷の独自技術である「Digital ICA®(デジタル アイシーエー)」を採用し、アルツハイマー病モデルマウスの少量の血液(100マイクロリットル程度)を用いてアミロイドß結合エクソソームが定量的に検出可能となりました。この技術を使ってアルツハイマー病モデルマウスの血液中のアミロイドß結合エクソソームを経時的に計測したところ、加齢で脳内のアミロイドß蓄積が進むに従って、その量が増加することを発見しました。

発症前や初期アルツハイマー病を簡便な方法で迅速に診断

湯山研究グループのこれまでの研究から、アミロイドß結合エクソソームは、アルツハイマー病の初期病理であるアミロイドß蓄積に関与すると考えられています。血液バイオマーカーとしてこの特定のエクソソームを検出することで、発症前や初期アルツハイマー病を簡便な方法で迅速に診断することができ、予防医学の発展に貢献します。

本検出技術は、検出用チップと汎用的な蛍光顕微鏡があれば、特別な技術の習得無しで少量の血液から特定の表面分子を保持するエクソソームを高感度検出できます。現在、脳内アミロイドß蓄積と血中アミロイドß結合エクソソームとの相関について、アルツハイマー病患者、軽度認知障害(MCI)対象者を含むヒトの検体を用いた検証を、北海道大学認知症研究共同プロジェクト拠点において進めています。今後はアルツハイマー病の早期診断のための次世代検出法の開発につなげていきたいと考えています。

また本検出技術は、アミロイドß以外のエクソソーム・バイオマーカーの検出にも利用できることから、複数の神経疾患の層別化診断やがんの早期診断などエクソソーム・バイオマーカーを利用した次世代リキッドバイオプシーの基盤技術としての開発も期待できます。

(文頭画像はイメージ、文中画像はプレスリリースより)

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少量の血液からアミロイドß結合エクソソームを検出する技術を開発


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