乳由来βラクトペプチドにアルツハイマー病予防・改善機能

2022年9月9日

牛乳や乳製品の摂取が認知症リスクを低減

キリンホールディングス株式会社(東京都中野区)R&D本部のキリン中央研究所は、乳由来βラクトペプチドの一つGTWYペプチド(βラクトペプチド)(※1)が、アルツハイマー病の主要な病態のひとつであるミトコンドリア(※2)機能の低下を改善するという新しい機能を、ヒトiPS細胞由来の神経細胞を用いて、世界で初めて明らかにしました。
研究成果は2022年7月31日(日)から8月4日(木)に開催された「国際アルツハイマー病学会2022年度大会」で発表されました。
※1 複数のアミノ酸が連結した化合物をペプチド、アミノ酸が4つ結合したものをテトラペプチドと呼ぶ。
※2 細胞内小器官の一つで、生命維持に必須なエネルギー物質「アデノシン三リン酸(ATP)」を生成する。

超高齢社会を迎えた日本は、アルツハイマー病をはじめとした認知症患者が増加しており、大きな社会問題となっています。近年、細胞のエネルギー産生工場として知られる「ミトコンドリア」の機能が低下することがアルツハイマー病の主要な病態の一つであることが明らかになっています。また、認知症予防には食事などの日常生活の改善が重要で、最近の疫学研究で牛乳や乳製品の摂取が認知症リスクを低減する事が報告され、注目を集めています。

同社は東京大学や協和キリン株式会社と連携した長年の脳科学研究の成果として、カマンベールチーズなどの発酵乳製品に多く含まれる乳由来のペプチドとしてβラクトペプチドを発見し、ヒトの認知機能維持に役立つことを報告し、βラクトペプチドが非臨床試験においてアルツハイマー病様の病態を予防することも報告しています。

ミトコンドリア機能の低下を改善

本研究は、アルツハイマー病におけるミトコンドリア機能の低下に着目して行われました。ヒトの病態に近い評価方法として、ヒトiPS細胞由来のアルツハイマー病モデル神経細胞を用いてβラクトペプチドの効果を検証しました。

アルツハイマー病モデル神経細胞では、脳の老廃物でアルツハイマー病の原因物質の一つとして考えられるアミロイドβの蓄積により、ミトコンドリアの形態異常などの病態が誘導されています。

このアルツハイマー病様の病態に対してβラクトペプチドは、ミトコンドリアの形態やエネルギー生産量などの機能を改善することが明らかになりました。これらの結果から、βラクトペプチドはアルツハイマー病におけるミトコンドリア機能低下を改善することで、アルツハイマー病の病態を予防・改善する可能性が明らかになりました。今後本成果は、脳の健康維持・認知機能改善の取り組みへの応用が期待されます。

(文頭画像はイメージ、文中画像はプレスリリースより)

▼外部リンク
世界初!乳由来βラクトペプチドのアルツハイマー病予防・改善に繋がる新たな機能を解明


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