名古屋市立大学、アルツハイマー病の早期血液診断マーカーを発見

2019年11月29日

認知症診断に新たな可能性開く

名古屋市立大学大学院医学研究科・道川誠教授(神経生化学)らの研究グループは、大分大学の松原悦朗教授(脳神経内科)、福祉村病院の橋詰良夫愛知医科大学名誉教授らのグループと共同で、ヒトの血清を用いた研究により、血清1マイクロリッター(血液1滴以下)を使用した生化学的解析によって、アルツハイマー病、あるいはその前段階である軽度認知症の診断が可能であることを発見しました。

道川教授らの研究グループは、細胞膜のリピドラフト・神経由来エクソソームに局在するタンパク質であるフロチリンが、剖検時に採取した脳室液に存在し、その挙動がAD(アルツハイマー病)で著しく低下することを、PET検査で診断したADと健常者の血清で確認しました。

また、PET検査でAβ(アミロイドベータ)沈着が陽性の軽度認知症の方と陰性のMCI(軽度認知症)の方の血清でも検討したところ、PET陽性者では、陰性者に比べて有意に低下。血清フロチリンの値は、PETによるAβ沈着の程度(SUVR値)と逆相関し、血清フロチリンの値は、認知機能障害(MMSE値)と正の相関を示しました。
以上の結果から、血清フロチリンレベルは、脳内Aβ沈着と逆相関し、MCI-due to ADならびにADの早期診断に使用できることが示されました。研究結果のポイントと今後の発展性は次の通りです。

研究結果のポイント

・アルツハイマー病(AD)の簡便で安価な早期診断法の確立が望まれている。
・血清フロチリンレベルは、AD では非 AD に比べて有意に低下することを明らかにした。
・血清フロチリンレベルは、MCI-due to AD では非 AD や MCI-due to non-ADに比べて有意 に低下することを明らかにした。
・PETで検出評価された脳内AB沈着レベルと血清フロチリンレベルは有意に逆相関することが明らかになった。すなわち、血清フロチリン測定は、PET 検査の代替検査法になる可能性がある。

今後の発展性

・単一分子マーカー(フロチリン)によって、血液診断を可能にする本発明は、簡便、安全、安価な診断法になる可能性がある。
・AD に対する疾患特異性が高いことが確実になれば、他の認知症やうつ病との鑑別診断が可能になり、患者にとっては、適切な治療がすぐに受けられるメリットがある。
・AD 治療薬の開発において、被験者コホート構築に利用できる可能性がある。また治療薬の効果の判定に客観的なマーカーとして利用できる可能性がある。
・発症前診断(少なくても MCI 段階)が可能となれば、健康診断などでのスクリーニングに使用できる可能性がある。

(画像はイメージです)

外部リンク

名古屋市立大学、アルツハイマー病の早期血液診断マーカーを発見(―血液1滴で診断できる可能性がある―)


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