東大、日本人の認知症に血清カルシウム低値が関連することを同定
軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への移行に新たな要素
東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻の佐藤謙一郎大学院生および岩田淳講師は、軽度認知障害(MCI)からアルツハイマー型認知症への移行に、血液中のカルシウム値が低いことが関連することを新たに見出しました。
本研究は、J-ADNI研究(※)の血液データを中心に詳細な追加解析を、北米ADNI研究のデータと比較しつつ行なわれました。J-ADNI研究では、ものわすれを主症状とする軽度認知障害の被験者234名の認知機能を最長3年間観察したところ、約半数の被験者が3年のうちにアルツハイマー型認知症へ移行・進行していることが確認されました。
このアルツハイマー型認知症への移行に関与する因子をさまざまに検討した結果、観察開始時点での血液中のカルシウム値が正常範囲ながらも低め(血清カルシウム値が補正後9.2 mg/dL未満)であることが関連因子として見出されました。一方で北米ADNI研究データでの解析ではそのような結果は見出されませんでした。
血清カルシウム低値がアミロイドβの蓄積を促進
血清カルシウム低値がアルツハイマー型認知症への移行に関連する理由は現時点では不明ですが、例えば、脳内の神経細胞の活動に影響を与える、またそれに伴い脳内のアミロイドβという物質の蓄積が促進される、などの機序が想定されています。
今後の認知症の観察・介入研究においては、これまで十分には検討されてはこなかった、血清カルシウム値およびビタミンD値、またそれらにかかわる活動量や食生活などの情報も検討していく必要があると言えます。
※J-ADNI研究:2004 年より北米で始まった Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)研究に倣い、ほぼ同じプロトコルを用いて本邦でも2008年から2014年にかけてJ-ADNI研究が実施され、全国38施設で計537名の方が参加しました。J-ADNI 研究では、認知機能正常高齢者、軽度認知障害、アルツハイマー型認知症の方を脳画像検査、脳脊髄液検査、認知機能検査、臨床評価尺度を用いて 2~3年間にわたって経時的に追跡し、各臨床病期によってどのような評価方法が最も効率的に変化を検出しうるかを探索することを目標としました。
(画像はイメージです)
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東大、日本人の軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への移行に血清カルシウム低値が関連することを同定
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