九大ら、久山町研究から認知症発症のバイオマーカーを発見

2019年1月11日

血清 sTREM2値の上昇が認知症発症と密接に関連

九州大学大学院(二宮利治 教授・小原知之 助教授)と京都医療センター(浅原哲子 部長)らの共同研究グループは、久山町研究の追跡調査の成績を用いて血清値(sTREM2)の上昇が認知症発症と密接に関連することを明らかにしました。

sTREM2は脳内炎症におけるミクログリア(中枢神経細胞)活性化の指標であり、これまでにTREM2遺伝子の変異が認知症の発症に寄与することや認知症初期から脳脊髄液中のsTREM2が上昇することが知られていましたが、血清sTREM2値と認知症発症の関係については解明されていませんでした。

研究グループは、認知症ではない久山町高齢住民約1,300名を10年間追跡し、血清sTREM2レベルと認知症発症の関係、および血清sTREM2が認知症発症の予測能に与える影響を検討しました。

その結果、血清sTREM2値の上昇に伴い、全認知症、アルツハイマー型認知症、および血管性認知症の発症リスクはいずれも有意に上昇することが判明しました。さらに、既知の危険因子と血清sTREM2値を組み合わせることにより、将来の認知症発症の予測精度が有意に改善することを明らかにしました。

早期発見の有効な新規バイオマーカーであることを示唆

研究成果は、ミクログリアを主体とした脳内炎症が認知症の発症に寄与することを証明するとともに、血清sTREM2値が認知症の早期発見の有効な新規バイオマーカーであることを示唆する重要な知見です。

久山町(人口約8,400人)は、50年間以上にわたり生活習慣病(脳卒中・虚血性心疾患、悪性腫瘍・認知症など)の疫学調査「久山町研究」を行っています。亡くなられた方の多くを剖検するなど(通算剖検率75%)、精度の高い調査を実施しており、検診受診率・剖検率・追跡率は世界トップレベルとなっています。

(文頭画像はイメージ。文中画像はプレスリリースより)

▼外部リンク
血清 sTREM2 値が認知症発症のバイオマーカーとなることを発見:久山町研究


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