今野先生コラム「食事で認知症予防」第6回:日光浴で認知症が予防できる!?
ブレインケアクリニック院長 今野先生コラム「食事で認知症予防」
認知症予防の中でも特に関心が寄せられている「食事」。多くのメディアで様々な食材や栄養素が取り上げられる中、どんなものをどのように摂ったらよいのか、戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
そこで、認知症予防のプログラムを提供するブレインクリニックの院長であり、栄養についても詳しい今野裕之先生が、栄養・食事についてシリーズで解説。皆さんに正しい情報をお伝えします。
- この記事の執筆
ビタミンDとは
12月になり急に冷え込んできましたが、みなさんお元気ですか?冬になると風邪をひく人が多くなりますが、それは単に寒さだけの問題ではなく、ビタミンDという栄養素の不足も関係しているかもしれません。
ビタミンDは、紫外線を浴びると皮膚で合成されるという珍しい栄養素。カルシウムの吸収を促進したり、免疫細胞の働きを調整してアレルギーや炎症を緩和したり、うつや不安を和らげたり、骨粗鬆症を予防したりと、様々な効果があることが知られています。この季節は毎年インフルエンザが流行りますが、ビタミンDはインフルエンザ予防にも役立ちます。小中学生にビタミンDのサプリメントを摂取してもらったところ、インフルエンザにかかる率がなんと半分に減ったという報告もされています(1)。
ビタミンDと認知症の関係
2012年、Neurology(神経学)という医学雑誌に認知機能低下や認知症がビタミンD欠乏と関連していることが報告されました。この研究は「メタアナリシス」という複数の研究のデータをまとめて解析するという手法で、研究の世界では最も信頼性が高い研究手法として知られています。その研究ではビタミンDの血中濃度が高い方が認知機能テストの点数が高く、アルツハイマー病ではそうでない人と比べてビタミンDの濃度が低かったということです(2)。
また、アメリカのエクセター大学のチームが心血管健康調査に参加している65歳以上の高齢者1,658名を観察し、アルツハイマー病や他の種類の認知症の発症について6年間追跡調査したところ、中程度のビタミンD欠乏ではすべての種類の認知症の発症リスクは53%増加し、深刻なビタミンD欠乏では125%も増加しました。アルツハイマー病についても同様で、ビタミンDの中等度欠乏では69%の増加に対し、深刻な欠乏では122%と大幅な増加でした(3)。
ビタミンDは足りているの?
ビタミンDは紫外線を浴びれば合成できます。夏の直射日光の下であれば、日焼けクリームなしで10〜30分程度日光を浴びれば1日あたり必要な量が合成できると言われていますが、冬は日差しが弱く、もっと多くの時間が必要です。加えて、現代人は屋外で働く時間が減っています。また、しみやシワが増えることを嫌って日焼け止めを塗っている人も多いですから、昔に比べれば体内でのビタミンDの量はさらに減って来ているのではないかと予想されます。
ちなみに、冬になると気持ちの落ち込みなどが出現する「季節性うつ病(冬季うつ病)」は、日照時間の減少によるビタミンD合成量低下が一因と考えられています。
ビタミンDをどうやって補充する?
日常的に日光浴ができれば理想的ですが、なかなかそうもいきません。屋内で仕事をしている人にとってはなおさらでしょう。日焼けサロンに行くという方法もありますが・・・。
食品でビタミンDが特に多く含まれているのは、にしん、さけ、いわしなどの魚類やキノコ類です。魚からはDHA, EPAなどの認知症予防・老化予防に役立つオメガ3脂肪酸、キノコからは食物せんいも合わせて摂ることができます。なお、日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要によるとビタミンDの食事摂取基準は成人で5.5μg/日(220 IU/日)とされています。普段からこのような食材を意識して摂ることにより、認知症予防に役立てましょう。
参考文献
1. Urashima M, Segawa T, Okazaki M, et al. Randomized trial of vitamin D supplementation to prevent seasonal influenza A in schoolchildren. American Journal of Clinical Nutrition. 2010;91(5):1255–1260.
2. Balion C, Griffith LE, Strifler L, et al. Vitamin D, cognition, and dementia: a systematic review and meta-analysis. Neurology. 2012;79(13):1397–1405.
3. Littlejohns TJ, Henley WE, Lang IA, et al. Vitamin D and the risk of dementia and Alzheimer disease. Neurology. 2014;83(10):920–928.
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