「機能性成分DL・POホスファチジルコリンの認知症予防への期待」田平武先生に聞く
認知症の早期発見から予防・治療に向けて薬物療法だけに拘らないエビデンスに基づいた様々な機能性成分やツールなどの研究や臨床に携わっている田平先生(順天堂大学大学院客員教授・くどうちあき脳神経外科クリニック認知症早期発見、予防・治療センター長)に「DL・POホスファチジルコリン」のメカニズムを解説していただくとともに、ご自身の臨床試験と使用経験から有用性についてご紹介いただきます。
DL・POホスファチジルコリンとは
DL・POホスファチジルコリンは、西崎知之博士(現在:先端生体情報研究機構 所長)が大学の研究室で認知症治療薬開発に向けた研究を進める中で生体内にある脂質の「ホスファチジルコリン」というのが、脳内の神経細胞のつなぎめにあるシナプスの伝達機能を高めることがわかりました。
ホスファチジルコリンとは、リン脂質と呼ばれる脂質の一種で、私達の脳や神経組織などに多く含まれ、細胞膜を作っている主要な成分なのです。
ホスファチジルコリンは脂肪酸の組み合わせによって2916通りもの種類が存在します。そこで、西崎博士は、この膨大な数のホスファチジルコリンから、もっとも効果が大きい組み合わせを見つける実験を繰り返して調べた結果、「POホスファチジルコリン」と、「DLホスファチジルコリン」が、シナプスの情報伝達をもっとも活性化することを発見しました。
POホスファチジルコリン:パルチミン酸とオレイン酸+ホスファチジルコリンの組みあわせ
DLホスファチジルコリン:2つのリノール酸+ホスファチジルコリンが組み合わせ
DL・POホスファチジルコリンの使用経験「生活機能の改善に期待ができる」
田平武先生が行ったDL・POホスファチジルコリンの臨床試験は次のとおりです。
※倫理委員会の承認を得て河村病院もの忘れ外来で実施。
使用 | DL・POホスファチジルコリン 100mg×2 (朝1回または朝夕1粒ずつを毎日) |
対象 | アルツハイマー病、アルツハイマー病を伴う血管性認知症、アルツハイマー病を伴うレビー小体型認知症 |
対象人数 | 20人 |
摂取 期間 |
24週間 |
判定 方法* |
ミニメンタルステート検査(MMSE)・アルツハイマー病評価尺度 (ADAS-Jcog ) 認知症のため の障害評価表(DAD) |
この試験では、20人の認知症患者さん(内訳:アルツハイマー病18名、アルツハイマー病を伴う血管性認知症1名、アルツハイマー病を伴うレビー小体型認知症1名)で、DL・POホスファチジルコリン2粒を朝1回または朝夕1粒ずつを毎日6か月間とってもらいました。
実施中に2名の継続中止がありましたが副作用ではなく、骨折による入院と家族の入院での通院困難が理由で、最終的には18名の患者さんの結果で評価することになりました。
評価は、認知機能と生活機能について実施する前と実施後にどのように変化するのかを調べました。具体的には認知機能についてはミニメンタルステート検査(MMSE)とアルツハイマー病評価尺度(ADAS-J)を、生活機能については、認知症のための障害評価表(DAD)と実施後の患者さん、ご家族の方へのインタビューを行いました。
18名の平均値を実施前と6か月後の変化を認知機能の2項目で見ると、あまり変化はありませんでした。
<MMSE (19.9→20.3)、ADAS-Jcog(16.12→17.5)>
軽度(軽症)の14名を取り出して見てみると、8割近くの方が維持・改善するという結果でした。
<MMSE:改善42.9%(6例)、維持35.7%(5例)、ADA-Jcog:改善35.7%(5例)、維持42.9%(6例)>
また、私が患者さんあるいは家族の方に生活機能の変化についてインタビュー(下図の家族のインタビュー参照)をした結果、多くの方から日常生活の変化をお聞きすることができました。ぼーっとして何もしなかった人が何かするようになる、活発になるというアパシー(無気力な状態)や抑うつ状態からの改善が見られたことが印象的でした。抑うつについては開発者の西崎先生が研究発表していたことを裏付けるものです。
認知機能の評価で悪化した方の中で、「元気になった」、「お勝手をやるようになった」「洗濯を干すようになった」と日常生活の改善が見られるケースもありました。
評価の点数ではそれほど大きな変動がありませんでしたが、かなりの患者さんで生活の変化に関するコメントがあるように日常生活機能の改善がうかがえます。
全体的には、DL・POホスファチジルコリンは軽症の認知機能の改善や、抑うつ、生活機能の改善効果が期待できる、軽度認知障害から軽度認知症に適したサプリメントではないかと思われます。
<田平医師が行った患者さん又はご家族の方への生活機能の変化に関するインタビュー結果>
・イライラが減った
・対応がよくなった
・横になっていることが減った
・やや活発になった、表情がよくなった
・気分が明るくなった
・本を読むようになった
・言葉が少し出るようになった
・閉じこもりがなくなった
・なんとなく調子が良い
・風呂に入るようになった
・トイレに自分で行くようになった
・歩行がしっかりした
・テレビを見るようになった
・料理をするようになった
認知症予防でのサプリメントの役割「症状がない時期から使用が可能」
残念ながらMCIに使用できる薬はありませんので、予防には運動や食事(栄養)がとても重要です。 症状がない無症候期から脳に必要な機能性成分としてDL・POホスファチジルコリンのようなエビデンス(科学的根拠)のあるサプリメントをとることも対策のひとつとなります。
*判定方法
<ミニメンタルステート検査(MMSE)>
認知症の診断用に開発されたもので、30点満点の11の質問からなり、21点以下の場合は、認知症などの認知障害がある可能性が高いと判断される。
<アルツハイマー病評価尺度(ADAS-Jcog)>
アルツハイマー型認知症の記憶を中心とする認知機能検査であり,認知機能の経時的変化を評価。
<認知症のため の障害評価表(DAD)>
在宅におけるアルツハイマー型認知症を対象とし、介護者に対してインタビューを行い、過去2週間以内に「衛生,着衣,排泄,摂食,食事の用意,電話の使用,外出,金銭管理,服薬,余暇と家事」を「したか・しなかった」かをアセスメントする。
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