今野先生コラム「食事で認知症予防」第5回:ビタミンB群の重要性

2017年11月1日

ブレインケアクリニック院長 今野先生コラム「食事で認知症予防」

今野裕之先生

認知症予防の中でも特に関心が寄せられている「食事」。多くのメディアで様々な食材や栄養素が取り上げられる中、どんなものをどのように摂ったらよいのか、戸惑っている方も多いのではないでしょうか。

そこで、認知症予防のプログラムを提供するブレインクリニックの院長であり、栄養についても詳しい今野裕之先生が、栄養・食事についてシリーズで解説。皆さんに正しい情報をお伝えします。


この記事の執筆
今野裕之先生
ブレインケアクリニック 院長
今野裕之先生
この記事の目次
  1. ビタミンB群はホモシステインの蓄積を防ぐ
  2. ビタミンB群は血糖調節に重要な役割を果たす
  3. ビタミンB群は生きるために必要なエネルギーを作るために必要
  4. ビタミンB群は神経伝達物質を作るのにも必要

ビタミンB群はホモシステインの蓄積を防ぐ

ビタミンB群は、水に溶けるタイプのビタミンです。ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチンの8種があります。

ビタミンB群には様々な働きがありますが、認知症予防においては、特に葉酸やビタミンB6、B12が重要です。というのもこれら3つのビタミンB群は、神経にダメージを与えるホモシステインという物質を分解するために必要だからです。ホモシステインは体の中で作られるアミノ酸の1種。血液中のホモシステイン量が増えてくると動脈硬化が進み、脳梗塞や脳出血のリスクが上がることが知られています。脳の血管が詰まったり、出血を起こしたりすればその先や周辺にある神経細胞が障害されますから、認知症になる危険性が高まります。

また、ホモシステインや、ホモシステインが酸素と結合したホモシステイン酸自体も神経細胞を障害する働きを持ち、さらにはアルツハイマー病の原因物質となるアミロイドβたんぱくの蓄積を促すことが報告されています(2)。ホモシステイン自体は体内のサビつきを抑えるグルタチオンや、肝臓の健康や高血圧予防などに役立つタウリンといった健康に有用な物質の材料ですが(1)、栄養不足によって代謝がうまくいかないと、ホモシステインばかりが多くなってしまいます。

私のクリニックでは、認知症予防の検査の一環としてホモシステインの血中濃度を測定していますが、思った以上に高い方が多いようです。

ビタミンB群は血糖調節に重要な役割を果たす

ビタミンB群、中でも糖をうまく体内で利用するためはビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシンなどが必要です。したがって、ビタミンB群が不足すると血糖値が下がりにくくなります。すると余った糖は体内のタンパク質と結合してしまい、老化を早める原因物質になってしまいます。

また、血糖値が高い状態が続くと、神経細胞がエネルギー源となる糖を取り込みにくくなります。糖は細胞のエネルギー源ですから、神経細胞が糖を利用できなくなれば慢性的なエネルギー不足となって脳の機能低下につながります。さらに、血糖が上がれば上がるほどインスリンという血糖を下げるホルモンが膵臓からたくさん分泌されますが、このインスリンを分解する酵素が脳内ではアミロイドβたんぱくの分解も担っています。インスリンが過剰に分泌されると、インスリン分解酵素が不足してアミロイドβたんぱくが分解できなくなり、結果としてアミロイドβたんぱくが脳に溜まりやすくなります。

糖尿病がアルツハイマー病の危険因子であるのはこういったことが主な理由です。

ビタミンB群は生きるために必要なエネルギーを作るために必要

血液中の糖を分解してエネルギーを作るのは細胞の中にあるミトコンドリアという器官。車で言えばエンジンにあたるところです。このミトコンドリアがエネルギーを作る時にもビタミンB群が必要となりますので、もしビタミンB群が不足すると、ミトコンドリアが機能を発揮できず、細胞の活動が低下します。

たとえば、脳の神経細胞であれば、見たり、聞いたり、物事を理解したりすることが障害されます。筋肉の細胞なら、運動が障害されたり、疲れやすくなったりします。

ビタミンB群は神経伝達物質を作るのにも必要

セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、GABA(ギャバ)などの言葉を聞いたことがあるでしょうか。これらは神経伝達物質と言います。

神経伝達物質とは、神経細胞が隣の神経に信号を伝えるために必要な脳内のホルモンです。前述の神経伝達物質はタンパク質の構成要素であるアミノ酸を原料として、ビタミンB群、特に葉酸、ナイアシン、ビタミンB6の助けを借りて合成されます。

したがって、ビタミンB群が体内に少ない場合、これらの神経伝達物質の産生量が減り、脳の働きが低下する可能性が高くなります。中でも、認知症発症のリスクの1つであるうつ病は、セロトニンの分泌量が減少することが主な原因と考えられています。

このように、ビタミンB群は体内で様々な働きをしており、認知症予防の観点からは積極的に摂取したい栄養素です。好みの変化、消化機能の衰え、ダイエットなどを理由にビタミンBを多く含む肉やレバー、卵などを避けているとビタミンB群が不足してくる可能性があります。特にビタミンB12は野菜にほとんど含まれていませんので、厳格に菜食を行なっている方は注意が必要です。

参考文献
1.Boldyrev AA. Molecular mechanisms of homocysteine toxicity. Biochemistry Moscow 74: 589–598, 2009.
2.Hasegawa T, Ukai W, Jo D-G, Xu X, Mattson MP, Nakagawa M, Araki W, Saito T, Yamada T. Homocysteic acid induces intraneuronal accumulation of neurotoxic Aβ42: Implications for the pathogenesis of Alzheimer’s disease. J Neurosci Res 80: 869–876, 2005.

今野先生の他のコラムを読む


このページの
上へ戻る