新たなアルツハイマー病治療薬、画期的な効果を確認
3つの効果を確認、2つは「画期的」
富士フイルム株式会社が、7月、軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の患者を対象とした治療薬「T-817MA」に、3つの効果を確認したことを発表しました。そのうち2つは「画期的である」としています。
T-817MAは、富士フイルムグループの富山化学工業が開発したアルツハイマー型認知症治療薬。強力な神経細胞保護効果や神経突起伸展促進効果によって、これまでに病態動物モデルに対して高い治療効果を発揮することが確認されていました。
高い治療効果が望める革新的な薬
アルツハイマー病は、タンパク質の一種であるアミロイドβとタウたんぱく質の蓄積によって脳神経機能が異常を起こしたり死滅するなどし、海馬をはじめとする脳が委縮することで、病が進行します。
今回、T-817MAは米国第II相臨床試験において、3つの臨床効果が確認されました。一つ目は、アルツハイマー病と診断されてから投薬開始までが2.6年以内の「罹病期間が短い」患者群に対して、認知機能低下の進行の大幅な抑制。二つ目は、脳脊髄液中のリン酸化したタウたんぱく質の減少。三つ目は脳内の海馬の萎縮抑制が認められました。このうち、リン酸化タウの減少と海馬の萎縮抑制は画期的な効果です。
一方、マサチューセッツ総合病院神経科副理事のRudolph Tanzi博士が行なった研究では、アルツハイマー病のリスク遺伝子を発現させたミクログリア細胞にT-817MAが作用し、アミロイドβの排除を促進することも明らかになりました。
以上のことから、T-817MAには、アルツハイマー病の主な原因物質であるリン酸化タウやアミロイドβに作用し、アルツハイマー病を改善させる効果があることが示唆されました。富士フイルムは今後、FDA(米国食品医薬品局)などと協議し、第III相臨床試験に向け検討を進めていくとしています。
現在使われているアルツハイマー病の治療薬は、一時的な症状改善にとどまるため、根本的な治療にはなりません。そんな中、高い治療効果が望めるT-817MAには、革新的な薬としてすでに注目が集まっています。
▼外部リンク
富士フイルム株式会社ニュースリリース「T-817MA」の米国第II相臨床試験とミクログリア細胞に対する実験について(PDF)
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