今野先生コラム「食事で認知症予防」第2回:ココナッツオイルと中鎖脂肪酸と認知症

2017年7月13日

ブレインケアクリニック院長 今野先生コラム「食事で認知症予防」

今野裕之先生

認知症予防の中でも特に関心が寄せられている「食事」。多くのメディアで様々な食材や栄養素が取り上げられる中、どんなものをどのように摂ったらよいのか、戸惑っている方も多いのではないでしょうか。

そこで、認知症予防のプログラムを提供するブレインクリニックの院長であり、栄養についても詳しい今野裕之先生が、栄養・食事についてシリーズで解説。皆さんに正しい情報をお伝えします。


この記事の執筆
今野裕之先生
ブレインケアクリニック 院長
今野裕之先生
この記事の目次
  1. ココナッツオイルが広まったきっかけ
  2. なぜココナッツオイルがアルツハイマー病に効くのか
  3. ココナッツオイルを使う際の注意点
  4. 実際の料理で使う時のコツ

ココナッツオイルが広まったきっかけ

「認知症予防にココナッツオイルがいい!」、このような情報をどこかで目にしている方も多いかもしれません。

私がココナッツオイルを知ったのは、およそ4年前のこと。当時は手に入れることが困難だったココナッツオイルが、近所のスーパーで売られているのを見ると、ココナッツオイルがこれほど市民権を得たことについて隔世の感が否めません。

認知症に対するココナッツオイルの効果が広まるきっかけになったのは、米国の小児科医、メアリー・T・ニューポート医師が著した「アルツハイマー病が劇的に改善した! 米国医師が見つけたココナツオイル驚異の効能(SBクリエイティブ)」という本でした。著者のニューポート医師のご主人は若年性アルツハイマー病にかかってしまい、その中でなんとか症状の進行を食い止めようとして見つけたのが中鎖脂肪酸という成分で、調べてみるとそれはココナッツオイルの約60%を占める主成分。著者がさっそくココナッツオイルを入手し、ご主人に飲んでもらったところ、驚くような変化が現れたというのがこの本の要旨です。

ちなみにココナッツオイル使用前のご主人のMMSE(ミニメンタルステート検査。認知症のスクリーニングとして広く使われている)は14点。この検査では21点以下で認知症の疑いありとされ、実際に健康な人が21点以下を取ることはまずあり得ません。10点以下だと相当認知機能が低下していると評価されます。したがって14点という点数は比較的進行した認知症の状態であったと言えるでしょう。ところが、ココナッツオイルを使い出して約2ヶ月後には点数が20点まで回復したのです。

当時の私も含めた医師の常識では、このような検査においてアルツハイマー病の患者さんの点数が6点もあがるということはまず考えられませんでしたので、この本の内容は非常に大きなインパクトを持っていました。実はこの本を監修したのが当時所属していた大学院の教授であった白澤卓二先生でしたので、私も先生の元でココナッツオイルの成分について研究を行ない、その効果を実際に検証してきました。

今回はそのような経験も交えてココナッツオイルの効果や使い方のコツについてお伝えしたいと思います。

なぜココナッツオイルがアルツハイマー病に効くのか

ココナッツオイルがアルツハイマー病に対して効果を表すのは、前述の中鎖脂肪酸という成分によるものと考えられています。中鎖脂肪酸は、肉の油やバターなどの油と比べると、エネルギーになりやすいのが特徴です。

さらに、この中鎖脂肪酸は分解されると“一部が”「ケトン体」という物質に変化します。このケトン体がアルツハイマー病においては非常に重要な役割を果たします。

通常、脳はブドウ糖をエネルギー源として活動しています。しかし、アルツハイマー病になるとブドウ糖をうまく使うことができなくなってしまいます。つまり、車で言えばガス欠の状態。ガソリンがなければ車は走れないのと同様に、脳もまたエネルギーがなければ働くことができません。

しかし、ハイブリッド車がガソリンと電気を使って走れるのと同様に、脳もブドウ糖だけではなくケトン体を使って活動することができるのです。アルツハイマー病ではブドウ糖は使えませんがケトン体を使うことはできるので、中鎖脂肪酸の摂取により体内でケトン体が作られれば、脳のエネルギー不足が解消され、認知機能が改善するというわけです。神経細胞の死滅がそれほど進んでいない段階までであれば、ケトン体補充による認知機能改善効果が期待できます。

ココナッツオイルを使う際の注意点

では、どの程度中鎖脂肪酸を摂取すれば良いのかというと、先行研究(2)では1日に1回、20gを使用しています。ココナッツオイルでいうと、約大さじ2杯の量になります。結構多いと思われるかもしれませんが、ケトン体を体内で作るためには、一度にある程度の量の中鎖脂肪酸を取らないといけないのです。

前に“一部が”と書いたのもそのためで、ちょこちょこ少しずつ摂っていてもケトン体はなかなか作られません。「ケトン体を作りたいなら大さじ2杯を1度に摂る」を覚えておきましょう。

また、糖質と一緒に摂取するとケトン体は作られにくくなります。アルツハイマー病の方がケトン体を作る目的でココナッツオイルを使用する場合は、普段から甘いものや炭水化物を控え、起床後の空腹時にお茶やコーヒーなどに混ぜて飲むと良いでしょう。ちなみに私はそのまま飲んでしまうこともあります。

ただし、最初からたくさんとると便がゆるくなったり、胃が熱くなったりするような感覚を経験する方がいます。特に空腹時はこのような変化を感じやすいので、1〜2週間ほどかけて胃腸の様子を見ながら少しずつ増やしてください。

ココナッツオイルは油なので、太ることを気にされる方もいるでしょう。コレステロールが高いので油っぽいものは控えましょうと指導されている方も多いと思います。基本的に中鎖脂肪酸のみであれば、摂取することによってむしろエネルギー消費が上がる(1)、体重が減る、内臓脂肪が減る(3)といった報告がありますので基本的には安心して良いと考えています。

しかし、ココナッツオイルの場合に注意しなければいけないのは、中鎖脂肪酸以外にもいわゆる身体に蓄積しやすい油も含まれているということです。これは他の油にも言えることなのですが、ココナッツオイルも摂りすぎればカロリーオーバーとなり、結果として体重増加やコレステロールの増加などにつながる可能性があります。したがって、ココナッツオイルを普段の食事に足したら、他の油は使うのをやめるようにしてください。

実際の料理で使う時のコツ

ココナッツオイルには独特の甘い香りがあります。個人的には好きなのですが、この香りが苦手だという人には、香りがないものも売られていますのでそういったものを利用すると良いでしょう。また、ココナッツオイルは25度以下で固まると言う性質があります。夏は普通の液体だったのに、寒くなったら白くカチコチに固まってしまってびっくりするかもしれませんが、そのような場合は湯煎して温めると液体に戻ります。決して電子レンジは使用しないようにしてください。また、液体の状態であっても冷たい飲み物に入れると固まってきます。

ココナッツオイルは他の油と同様、揚げ物や炒め物にも使えますが、熱し過ぎると体に良くない物質ができてしまいます。特に揚げ物は控えめにしましょう。

今野先生メッセージ

今回はココナッツオイルがアルツハイマー病の症状を改善するメカニズムと、実際の使い方についてまとめてみました。認知症に良いとされる油はココナッツオイル以外にもオメガ3脂肪酸、オリーブオイルなどがあります。

別の機会にまたまとめてみたいと思っていますのでお楽しみに。

今野先生の他のコラムを読む

参考文献
1.Alexandrou E, Herzberg GR, White MD. High-level medium-chain triglyceride feeding and energy expenditure in normal-weight women. Can J Physiol Pharmacol 85: 507–513, 2007.
2.Henderson ST, Vogel JL, Barr LJ, Garvin F, Jones JJ, Costantini LC. Study of the ketogenic agent AC-1202 in mild to moderate Alzheimer’s disease: a randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter trial. Nutr Metab (Lond) 6: 31, 2009.
3.Kasai M, Nosaka N, Maki H, Negishi S. Effect of dietary medium-and long-chain triacylglycerols (MLCT) on accumulation of body fat in healthy humans. Asia Pacific journal of Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition 2003;12 (2): 151-160.


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