認知症に新たな治療の可能性、老化を抑え寿命を延ばす効果も

2017年7月26日

異常なタンパク質の蓄積を防ぐタンパク質「EDEM」

認知症先進医療開発センターアルツハイマー病研究部と国立遺伝学研究所および首都大学東京との共同研究によって「EDEM」というタンパク質の量を増加させて異常なタンパク質の蓄積を防ぐことが、認知症を始めとする老年性の神経変性疾患の新たな治療戦略となる可能性が発見されました。

この成果は米国科学誌「Developmental Cell」誌に掲載されました。

神経変性疾患を引き起こす「小胞体ストレス応答」

生物の体を構成するタンパク質のおよそ3分の1は、小胞体で作られています。小胞体にはタンパク質の品質管理を行うシステムがありますが、疾患やウィルス感染、有害物質などの要因で正常に機能しなくなり、異常なタンパク質が小胞体内に蓄積してしまうことがあります。すると小胞体は「小胞体ストレス応答」と呼ばれる反応を示して、タンパク質の合成を減らしたり、異常タンパク質を取り除いて、小胞体自身にかかるストレスを軽減しようとします。

しかし、この強力な防御機能が過剰に活性化すると、細胞機能の低下や細胞死を引き起こすのです。アルツハイマー病やパーキンソン病など、多くの神経変性疾患の患者の脳では、この小胞体ストレス応答の過剰な活性化が認められており、こうした疾患の発症に関連していると考えられています。

EDEMのみを増加させることが鍵

今回の研究では、神経変性疾患のあるショウジョウバエを使って、異常タンパク質の蓄積や運動機能低下、神経細胞死を抑える効果のある遺伝子の探りました。

その結果、「EDEM」というタンパク質の量を増加させると、異常タンパク質が減少する上、副作用を起こすことなく運動機能の低下と神経細胞死を抑えることが発見されました。EDEMは、小胞体内に留められた異常な形のタンパク質を抜き取って分解する「小胞体関連分解(ERAD)」という機能を促進するタンパク質。小胞体関連分解は小胞体ストレス応答のひとつです。

一方で、小胞体ストレス応答を活性化させたり、他の小胞体関連分解に関わるタンパク質を増加させると副作用が見られ、EDEMのみを増加させた場合のような効果は再現できなかったとのことです。

また、EDEMというタンパク質だけを増加させると、ショウジョウバエの脳神経細胞や筋肉細胞の低下が抑えられることも発見。さらに腸の細胞でEDEMタンパク質の量を増加させると、老化に伴う運動能力の低下も抑えられ、寿命を延ばす効果があることがわかりました。

この研究成果によって、神経変性疾患だけではなく老化に関わる疾患の新たな治療法の開発が期待されています。


▼外部リンク
認知症先進医療開発センター ニュースリリース


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