九州大、歯周病菌のアルツハイマー病誘発に関与する原因酵素を特定

2017年7月11日

歯周病罹患者のアルツハイマー病予防・治療に光

九州大学大学院歯学研究院の武洲准教授と中西博教授らの研究グループは、歯周病原因菌(Pg菌)によるアルツハイマー病の原因酵素がリソソーム酵素カテプシンBであることを初めて明らかにしました。

噛むことを含めた歯とアルツハイマー病の関係は以前から指摘されていました。昨今では虫歯菌や歯周病菌が認知症や脳出血、心筋梗塞のリスクを高めることが分かっており、Pg菌LPSがアルツハイマー病患者の脳内に検出されていましたが、その詳細は不明でした。

研究グループは中年マウスにPg菌LPSを投与し、学習・記憶能力低下などアルツハイマー病の症状を確認しました。驚いたことに、若齢のマウスではこのようなアルツハイマー病の症状はみられなかったとのことです。さらに、遺伝子欠損マウスを用いることにより、その原因酵素がカテプシンBであることを突き止めました。

(図版説明)Pg菌LPSによるカテプシンBを介したミクログリアにおけるIL-1の産生分泌ならびにニューロンにおけるA産生(カテプシンBが歯周病から脳への炎症シグナル伝達に関与する様子)

新薬開発や治療の確立に期待

したがって、このカテプシンBを抑える薬や治療が開発されれば、歯周病によるアルツハイマー病の発症と症状の悪化を阻む可能性があり、大いに期待が持てます。この点について本研究の研究者は次のように述べています。

研究者からひとこと:リソソーム酵素カテプシンBが歯周病から脳への炎症シグナル伝達に関与することを明らかにしました。また、中高年者では特に歯周病がアルツハイマー病の悪化因子となることが示されました。カテプシンB阻害剤を期待するより、まずは口腔ケアが重要です。

アルツハイマー病は一旦発症すると治療は極めて困難で、根本的な治療薬は未だ開発されておらず、今回の研究成果によりアルツハイマー病の発症や進行を遅らせるための歯科治療からのアプローチが確立され、将来的な新薬開発・治療の推進に期待が膨らむところです。

(図版説明)アルツハイマー病が発症するまでの認知機能、海馬の体積ならびにA蓄積の変化(左)、ならびに歯周病に伴うカテプシンBを介した炎症シグナルの増大と認知症の悪化(右)

本研究成果は、2017 年 6 月 10 日(オランダ現地時間)に Elsevier 社の国際学術誌『Brain,Behavior, Immunity』にオンライン掲載されました。詳しい内容は外部リンクよりプレスリリースを参照下さい。

▼外部リンク
歯周病菌のアルツハイマー様病態誘発に関与する原因酵素を特定


このページの
上へ戻る