「脈圧」とアルツハイマー型認知症の進行の関係とは?
脈圧とは?
米国カリフォルニア大学らの研究グループが、タウタンパクとアミロイドが脳内の神経に変性をきたすことと、高齢者における認知症の進行について、脈圧とどのような関係があるのか調査研究をおこなった。
血圧には、上の血圧と下の血圧があり、上の血圧を「収縮期血圧」、下の血圧を「拡張期血圧」という。「脈圧」とは、この収縮期血圧と拡張期血圧との差の値で、一般には加齢にともない血管の弾力性が落ちてくると脈圧が高くなり、動脈硬化のリスクも高まるといわれている。
8年間の追跡調査
研究グループはこの脈圧に着目し、認知症を発症していない55歳~91歳の877人について調査をおこなった。参加者には、アルツハイマー病の発症に関わるといわれている脳脊髄液中の「リン酸化タウタンパク」と「アミロイドベータ1-42」の測定、血圧などの健康診断をおこなったのち、2005年~2013年までのおよそ8年間追跡調査がおこなわれた。
脳脊髄液の値と脈圧の推移、80歳以上の高齢者と55歳~79歳までの年齢における比較、脈圧と認知症の進行との関係性をさまざまな因子をふまえて調査。その結果、「リン酸化タウタンパク」が増えている場合の脈圧は平均62.0mmHgとなり、正常である場合の平均57.4mmHgより高い値となった。
脈圧と「リン酸化タウタンパク」「アミロイドベータ」の関係
中でもさらに高齢者においては、「リン酸化タウタンパク」と「アミロイドベータ1-42」の両方が増えていた人の脈圧は平均69.7mmHg、「リン酸化タウタンパク」のみ増えていた人は63.18mmHg、「アミロイドベータ1-42」のみ増えていた人は60.1mmHg、どちらも正常であった人は56.6mmHgであった。これにより、脈圧が高いほど、認知症の進行が速くなるという関係がしめされた。
脈圧が高く血管の老化が始まっている場合、認知症を発症していなくても、その原因となる「リン酸化タウタンパク」「アミロイドベータ1-42」の蓄積がより多くみられるという関係性が認められたこととなる。
ふだん何気なく測る血圧も、高い低いだけではなく、今後は「脈圧」にも注意を向ける必要があるようだ。血管の老化予防に気をつけることは、認知症の予防にもつながるのかもしれない。
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