肺非結核性抗酸菌症を含む感染症および呼吸器疾患に関する調査
【長引く咳や痰に要注意】中高年女性に増加する「肺NTM症」
インスメッド®合同会社(東京都千代田区)は、肺非結核性抗酸菌症を含む感染症および呼吸器疾患に関する一般の意識や行動を把握することを目的に、現在、もしくは過去に咳、もしくは痰の症状のある30代から70代の男女1,092名を対象に2023年12月7日(木)~2023年12月10日(日)の期間、オンライン形式のアンケートを実施しました。
その結果、近年、日本において罹患者数/死亡者数が増加傾向にあり、肺結核のそれらをしのぐといわれる肺NTM症について、「知っている」が9.3%、「聞いたことがあるが、詳しくは知らない」が22.3%と、認知率が大変低いことがわかりました。また、その感染源の要因と考えられている「水(水道水など)」が35.3%となっており、約3割の人にしか認識されていないことがわかりました。
調査結果のまとめ
●感染症・呼吸器疾患の中でも非常に低い「肺NTM症」の認知率1割(9.3%)
●感染症の“感染源”としてあまり認識されていない要因:「水(水道水など)」(35.3%)
●感染症予防のために意識して行っていることの7位:「水回りの掃除」(27.2%)
●咳や痰の症状があるのに医療機関を未受診の方に聞いたその理由の8割(79.9%)
が「病院に行くほどではないと思っている」
【調査概要】
調査期間:2023年12月7日(木)~2023年12月10日(日)
調査手法:インターネット調査
対象地域:47都道府県
調査目的:肺NTM症を含む感染症および呼吸器疾患に対する意識、症状があることで発生する困りごと、現状の治療への満足度などに関する実態把握および啓発のため
調査対象者:現在および過去に咳もしくは痰の症状のある(あった)30-70代
(男女546名ずつ、計1,092名)
※図の構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計が必ずしも100%にならない場合があります。
肺NTM症とは?
肺NTM症とは非結核性抗酸菌(Nontuberculous Mycobacteria、以下「NTM」)という細菌が肺に感染することにより発症する感染症です(※1)。2014年に日本で実施された調査において、人口10万人あたりの罹患率は2007年の全国調査と比較して約2.6倍増加し、現在では肺結核をしのぐ罹患者数となっています(※2,3)。また特に日本を含むアジアでは、肺NTM症の人口比が、米国や欧州と比較して多いとされています(※4,5)。
肺NTM症の主な症状として、咳嗽(がいそう)、喀痰(かくたん)、血痰(けったん)、倦怠感、体重減少などが挙げられますが、症状の強さや病気の経過は患者さんによって様々です。厚生労働省の人口動態調査(2022年)では、国内で肺NTM症による死亡者数が年間1,158人であったことが報告されており(※6)、罹患者数、死亡者数ともに増加の一途をたどっている深刻な疾患です。
人から人へ感染しない
肺NTM症と肺結核との大きな違いは、人から人へ感染しないといわれていることです。NTMは、水などの自然環境や、台所や風呂場などの水回りの生活環境に常在菌として生息しており、それらを吸い込むことで感染します。しかし、今回行った調査では、その感染源の要因と考えられている「水(水道水など)」(35.3%)が、約3割の人にしか認識されていないことがわかりました。
初期は無症状のことも多い
肺NTM症の初期は無症状のことも多く、長引く咳や疲れやすいなどの症状が繰り返し起こるようになり、病気が進んでくると、咳や痰の症状が強くなり、血痰や喀血、体重減少などがみられることもあります。
中高年のやせ型の女性に多い
肺NTM症を長年研究し、治療に携わっている慶應義塾大学医学部感染症学教室の長谷川直樹教授は、「はっきりとした原因はわかっていませんが、中高年のやせ型の女性に多いといわれています。肺NTM症と診断された人の割合(人口10万対)(※7)をみると、男性よりも女性の方が高く、40歳以降に急激に増加がみられます。そのほか免疫を抑える治療をしていたり、免疫が低下する病気の人では肺NTM症に感染しやすいといわれています」と話します。
健康診断でみつかることも多い
初期の肺NTM症は、無症状のことが多いため、健康診断やほかの病気の検査がきっかけとなって、偶然にみつかることが多く、無症状の場合は、そのまま放置してしまう人も少なくありません。肺NTM症の疑いがあるといわれたら、早めに呼吸器専門医を受診し、どのような状態なのか、しっかりと診断してもらうことが大切です。
調査では、咳や痰の症状があっても、「病院に行くほどではないと思っている」人が圧倒的に多い(79.9%)ことがわかりました。
感染していても症状が出ない場合がある
「感染した人すべてに自覚症状が出たり、肺の構造破壊が起こったりするわけではありません。抗体が陽性と診断されても画像検査では異常はみられず、喀痰検査で痰から全く菌が検出されない、症状も何もない方がたくさんいます。NTMは自然環境や生活環境のどこにでもいる菌なので、感染する人はいますが、今のところ、感染した人がどのくらいの割合で発症するのかはわかっていません」(長谷川教授)
日常の生活環境を見直す
肺NTM症の原因となるNTMは、わたしたちの身の回りに広く生息しています。その菌を含んだ水しぶきを吸い込み、菌が繰り返し肺の中に入ってくることで感染が起こります。そのため、日常生活を送るうえで、NTMをなるべく吸い込まないようにすることが重要になります。「NTMは消毒薬にも強いという性質があり、生活環境から排除することは難しい菌です。しかし浴室や台所などでは、日頃からなるべく清潔にすることを心掛け、排水溝だけでなく、シャワーヘッドやホースのぬめりを取り除き、よく乾燥させる、また掃除の際はマスクを着用することも重要です」(長谷川教授)
(※出典元)
1 佐々木結花 編. 結核・非結核性抗酸菌症を日常診療で診る. 羊土社; 2017.
2 Namkoong H, et al. Emerg Infect Dis. 2016;22(6): 1116-1117.
3日本医療研究開発機構. プレスリリース:呼吸器感染症を引き起こす肺非結核性抗酸菌症の国内患者数が7年前より2.6倍に増加―肺結核に
匹敵する罹患率―. https://www.amed.go.jp/news/release_20160607-02.html (last accessed 2022.02.25)
4 Adapted with permission of the American Thoracic Society. Copyright © 2020 American Thoracic Society.
5 Adjemian J, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2012; 185(8): 881-886.
* The American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine is an official journal of the American Thoracic Society
6 政府統計の総合窓口e-Stat. 人口動態調査 / 人口動態統計 確定数 死亡(2022年).
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450011&tstat=000001028897&cycle=7&year=20220&month=0&tclass1=000001053058&tclass2=000001053061&tclass3=000001053065&stat_infid=000040098339&result_back=1&tclass4val=0 (last accessed 2024.3.21)
7 Izumi K, et al. Ann Am Thorac Soc. 2019; 16(3): 341-347.)
調査結果の詳細は、下記外部リンクよりご覧ください。
(画像はプレスリリースより)
▼外部リンク
―毎年5月9日は「呼吸の日」― 長引く咳や痰(たん)に要注意!中高年女性に増加する「肺NTM症」
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