花王、認知機能評価指標として血中D-アミノ酸の有用性を発見
血中のキラルアミノ酸を迅速・高感度に解析する技術を開発
花王株式会社(東京都中央区)の解析科学研究所・生物科学研究所は、血中のキラルアミノ酸(D体とL体に識別されたアミノ酸)を迅速・高感度に一斉解析する技術「Chiral tandem LC-MS/MS systems(キラルタンデム液体クロマトグラフ質量分析システム)」を開発し、東京都健康長寿医療センターとの共同研究を経て、キラルアミノ酸の存在比が認知機能の評価指標として有用であることを見出しました。
長年、ヒトを含む哺乳類にはL-アミノ酸しか存在しないと考えられてきましたが、近年D-アミノ酸も極微量ながら存在することがわかってきました。さらに、D-アミノ酸は、さまざまな疾病や老化などと関連することも報告され、世界的に注目を集めつつあります。
独自技術でキラルアミノ酸を精度よく分離・定量
通常、キラルアミノ酸を精度よく分離・定量するためには、その成分の種類(分子種)とキラル(L体とD体)を多段階で分離する方法が使われます。しかし、この方法では各々に適した原理で分離する装置が複数台必要で、操作も複雑となり、解析に長時間を要します。
そこで花王は、2種(分子種とキラル)の分離原理を同時に達成できる解析技術について検討。機序が異なる2種のカラムを直列に接続するシンプルな構成で、誘導体化した全キラルアミノ酸を迅速かつ高感度に一斉分析する独自技術を開発しました。この技術では、20分程度で血中キラルアミノ酸を包括的に解析できることから、大規模ヒト試験への応用が可能になりました。
認知機能が低下すると血中アミノ酸のD体存在比が上昇
続いて花王は、東京都健康長寿医療センターの横断コホート研究(お達者検診:65歳以上の高齢女性対象)に参画。健常者・軽度認知障害(MCI)の疑いのある方・認知症の疑いのある方305名における血中キラルアミノ酸の一斉解析を行ない、認知機能との関連を調べました。
その結果、認知機能低下気味の方(MCI・認知症の疑いのある方)では、血中アミノ酸のD体存在比が上昇していることを確認。特に血中D-プロリンおよびD-セリンの存在比が認知機能の評価指標として有用であることを見出しました。
研究成果は、1月21日(日本時間)に英国科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載されました。またその一部は、「日本化学会 第100回春季年会(2020年3月22~25日・千葉県)」で発表される予定です。
(文頭画像はイメージです。文中画像はプレスリリースより)
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認知機能の評価指標として血中D-アミノ酸が有用であることを発見
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