順天堂大学、老人性難聴の進行に関わるメカニズムを解明
老人性難聴にも適用できる可能性
順天堂大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科学、神谷和作准教授、田島勝利大学院生らの研究チームは、老人性難聴の初期に起こる新たなメカニズムを明らかにしました。このメカニズムの解明により、当研究チームが現在開発中の内耳ギャップ結合を標的とした薬剤や遺伝子治療が老人性難聴にも適用できる可能性があります。
研究チームが内耳の「ギャップ結合」という分子の複合体に注目して解析したところ、この分子が老化に伴って崩壊・減少し、老人性難聴の進行に関与する可能性が示されたものです。
研究チームは、2014年に内耳ギャップ結合構造の崩壊による遺伝性難聴の発症メカニズムを解明、2015年にモデル動物の遺伝子治療実験により、ギャップ結合の修復と聴力回復に成功、2016年にはiPS細胞から内耳ギャップ結合を作る基盤技術を開発し、内耳ギャップ結合を標的とした創薬や遺伝子治療の技術開発を進めています。その中で老人性難聴にもこれらの新しい治療法が役立つ可能性があると考え、メカニズムの解析を進めました。
ギャップ結合の異常は遺伝性難聴の原因と共通
研究チームは、老人性難聴の初期の変化が病態進行のメカニズムや治療法を探る鍵となると考えました。そこでまず、モデル動物(マウス)を用い聴力が急激に低下する時期を特定し、その際に内耳に起こる遺伝子やタンパク質の変化を観察しました。研究結果のポイントは次の3点です。
老人性難聴の初期に起こる新たなメカニズムを明らかにした
老化に伴って内耳の「ギャップ結合」という構造体が疎水化・断片化し、タンパク質量が低下していた
ギャップ結合の異常は遺伝性難聴の原因と共通しており、同じ治療法が適用できる可能性
老人性難聴(加齢性難聴)は老化に伴う進行的な聴力障害で、場合によっては40代で補聴器がを必要になる例も少なくありません。最近では、認知症の発症リスクを高める最も大きな要因に中年期以降の聴力低下(老人性難聴)が含まれるとのデータが報告され、老人性難聴への早期予防が認知症予防の最重要項目の一つであると考えられています。
研究はネイチャー系列誌『Experimental & Molecular Medicine』に掲載されました。
(文頭画像はイメージ、文中画像はプレスリリースより)
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