「家庭医学」の実践で患者の環境を改善~髙瀬先生インタビューpart2

2017年7月14日

医療法人社団 至髙会たかせクリニック理事長     髙瀬義昌先生インタビュー

髙瀬義昌先生

高齢者・認知症患者を対象とした在宅医療専門クリニック「たかせクリニック」の理事長として、10年以上在宅医療を続ける髙瀬義昌先生。ひと昔前はデメリットが多いと考えられていた在宅医療ですが、なぜ在宅医療を始めようと考えたのでしょう。

インタビュー2回目の今回は、在宅医療を続ける理由や始めたきっかけ、実際どのような医療を行っているのかを伺いました。

第1回インタビュー「生活課題の解決が認知症治療につながる」はこちらから

話し手
医療法人社団 至髙会 たかせクリニック理事長
医療法人社団 至髙会 たかせクリニック理事長
髙瀬義昌先生

髙瀬先生に起きたパラダイムシフト

パラダイムシフトとは、「劇的変化」や「革命」を表す言葉。もともと小児科医であった髙瀬先生に、まさにこのパラダイムシフトが起こりました。

「在宅医療が気になりだした2000年頃、僕は医学交流の影響で病院の経営などについても考えており、透析や内科もやっていました。あるとき、医学界新聞で、信州大学の先輩で優秀な生理学者、伊藤澄信先生の記事を見つけたんです」

その記事は、伊藤先生が「家庭医」としてアメリカで活動されているというものでした。現地にはエイズ患者が多数おり、伊藤先生たちは子供からお年寄りまで診察。ときにはお産も診ているといった内容だったのです。
「『え?この人たち何をやってるの?』と思った。自分の持っている医学モデルとのギャップに、頭を後ろから叩かれたみたいだったんだ」

もうひとつきっかけとなったのは物理学者フリッチョフ・カプラの『The Turning Point』という本。
「そこに“家族療法”と書いてあった。僕の家族が少しADHDっぽくて、それが何故なのか知りたいというのもあり『原家族』とか『家族とは何か』ということがずっと気になってて。だから“家族療法”とか“家庭医学”というのは僕の中で昔からのキーワードなんだ」

そこから髙瀬先生の「家庭医学」への取り組みが始まったのです。

暮らしの環境から整える「家庭医学」

髙瀬先生が考える家庭医学は、アメリカでの取り組みのように「全体的に包括的に診る」というもの。ときにはその患者の家庭問題にも相談に乗り、解決へと導きます。家庭から見直すことが、患者にもよい影響をもたらすという考えです。具体的にはどのようなものなのでしょうか。

「家庭医学・家族療法を勉強していると必ず出てくるのがペンシルベニア大学の小児病院の話。僕も見に行きましたよ。そのときは白血病で入院している子供の家に在宅医療チームが行くところだった。その子の両親は仲が悪い。するとどうなるかみんなわかる? 家の中がきれいじゃなくなるの。そんな環境は肺炎を引き起こして再入院の原因になる。だから、お父さんお母さんにも働きかけ、先に家庭の問題から解決して、再入院となるような原因を無くしてあげる、ということをやっていたんです」

先生にとってはそのアプローチが目からうろこだったそうです。

「チームで家族に介入するにしても、もともとの環境が整っていなければ駄目でしょう? ソーシャルワーカーを中心に、看護師・医師がきちんとチームになっていないと駄目だし。家庭もそうだよね。これがある程度うまく回った時に相互に繋がっていく。
在宅医療チームだけがやるのではなく、両親にも働きかけているのがすごい。こんな取り組みを25年も前から行っているなんて驚きだよね!」

髙瀬先生ならではのワンストップ支援

患者の状態をよくするために必要なのは、病の根治以前に、周囲の状況を整えていくこと。そのような視点で在宅医療を行う中で、ときには家族の病気を発見することもあるといいます。

「ある認知症の患者さんが粗相をしてしまって、汚れた絨毯を患者さんの奥さんと一緒に片づけたんですよ。そうしたら次の日、奥さんから電話がかかってきて『先生大変! 絨毯が盗まれた』と。『いや、盗まれたんじゃなくて昨日一緒に捨てたでしょ。くさい仲になったでしょ!』って」

こういったケースは、在宅診療でなければ医療と繋がることはないでしょう。

「こういう話から認知症の症状が出ていることがわかるんだけど、笑いながら話す中で、またコミュニケーションが深くなるんだよね」

また、患者の家族の方から先生に家庭問題を相談しにくることも。髙瀬先生はそんな相談にも喜んでのっているそうです。

「年金や生活保護といったお金の問題も出てきます。社会福祉協議会がいいのか、税理士か弁護士の後見人がいいのか、信託がいいのか、そういった受け皿を考えてあげることも行っています。こういうのは、僕のネットワークを使ってね。結構早い時期にやっちゃいます」

時間がかかるような問題にも、治療の域を超えて取り組む髙瀬先生。政府が推進する「認知症早期発見・早期診断推進事業(アウトリーチ事業)」を、世間に先駆けて実践してきたドクターなのです。

~編集部より~
“治療”というと、病気自体の治癒を目的とするものを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、「病気によって起こっている問題を解決することで本人や周囲の暮らしを改善する」髙瀬先生の医療は、完治が難しい認知症を患う人々が、まさに求めるものではないでしょうか。

次回は、髙瀬先生の考えるITヘルスケアの有効性や、患者さん、ご家族へのメッセージを紹介していきます。


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