認知症予防にも期待、室温動作の生体磁場センサ高出力化に成功

2017年6月12日

室温動作のデバイスでは世界初の高感度

東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻の安藤康夫教授のグループが、室温で動作する、高感度かつ高分解能の強磁性トンネル接合(MTJ)生体磁場センサの高出力化に成功しました。室温で動作するデバイスでこのような高感度を達成したのは世界で初めてのことです。この成果は、認知症や脳梗塞の予防、脳の機能解明などに応用できると期待されています。

本研究の成果は、2017年5月22・23日に、Biomagnetic Sendai 2017の本会議およびそのサテライトミーティングにおいて論文発表されました。

装置の小型化、動いていても測定可能に

脳機能や脳疾患の診断には、脳や心臓から発生している微弱な磁場を計測する「SQUID」が使用されていますが、他の磁気を遮断できる6畳ほどの磁気シールド室に入り、液体ヘリウムによって冷やされたセンサの入った大型の装置に長時間、頭部を入れたり、体を固定することが必要です。維持費も高価で、設置できる病院が限られ、利用は限定的。そのため、心臓や脳の精密検査には高額な診察料が必要です。

一方で今回開発された、従来の1,500倍もの出力を得た強磁性トンネル接合(MTJ)生体磁場センサは、室温で動作します。しかも皮膚に接触させて計測ができるため、装置の小型化が可能です。着用できる装置やシート状の装置の開発への可能性がひらけ、動いていても測定できるようになり、従来の脳磁計が抱えていた問題を解決できるのです。

この室温動作・密着型の装置を利用すれば、長時間の測定が必要とされていた、てんかんの診断が容易になります。また、感度が向上したMTJセンサによって、脳梗塞の予防や、アルツハイマー病などの認知症、精神疾患の診断、脳機能の解明などの精度が高まると期待されています。

心筋梗塞部位などの診断精度が格段に向上、安価に

さらに、この高出力化したMTJセンサを、同研究グループがこれまでに開発を終えている低ノイズアンプと組み合わせることで、約15倍の感度向上が期待でき、リアルタイムで心磁計での測定が可能になります。これにより、心臓および脳からの生体磁場信号とMRIイメージング(核磁気共鳴画像法)が簡単に同時測定できるようになる可能性が示されました。

このMRI画像と同時測定が可能なMTJ心磁計が実現すれば、不整脈や狭心症、心筋梗塞部位の診断精度が格段に上がり、安全に手術前の評価ができるようになります。そして、心筋梗塞のリスクがある年代に対する健康診断が、圧倒的に安価になる可能性が期待されます。

本研究の成果は、高齢化社会を迎えるにあたり、誰もが気軽に日頃から脳や心臓をチェックできる医療環境実現への大きな一歩となるでしょう。

研究成果の詳細は、外部リンクをご参照ください。

(画像はプレスリリースより)

▼外部リンク
東北大学プレスリリース 


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